著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニア、イタリアです。

掲載誌:Antibiotics

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

プロポリスは、ミツバチが植物から集めた樹脂状の分泌物に蜜ろうや唾液を混ぜて作る物質です。巣の隙間をふさぐほか、病原体などから巣を守る役割を持ちます。原料が巣の周りの植物に由来するため、産地によって成分や抗菌作用が異なることが知られています。この品質のばらつきが、医療などへの応用を進めるうえで課題になっています。

これまでに、異なる産地のプロポリスを混ぜると成分の差がならされ、活性も最も強い抽出物と同程度に保たれるか、場合によっては高まるという報告があります。研究チームはこの考え方を検証するため、ルーマニア各地のプロポリス抽出物を組み合わせ、成分と抗酸化・抗菌の働きがどう変わるかを詳しく調べました。また、保存による変化も確かめました。

何をどのように調べたか

研究には、2024年6〜7月にルーマニアの異なる地域で得られた5種類のプロポリス抽出物を使いました。いずれも80%エタノールで抽出したもので、論文ではA、H、C1、C2、Sと呼ばれています。これらを室温の暗所で約2年間保存した後、改めて分析しました。

5種類の単独抽出物に加え、2種類ずつを同量で混ぜた10通りの組み合わせと、5種類すべてを同量で混ぜた混合物を用意しました。合計16試料です。成分については、植物由来の抗酸化成分として知られるポリフェノール類(フェノール化合物)の総量と、その一群であるフラボノイドの量を測りました。さらに、20種類の個別成分を機器分析で定量しました。抗酸化の働きは、原理の異なる4種類の試験で評価しました。

抗菌性は、実験室で標準的に使われる16種類の微生物で調べました。内訳はグラム陽性菌6種、グラム陰性菌8種、酵母2種で、薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の株も含まれます。試料の周りに菌が育たない範囲の大きさと、菌の増殖を抑えるのに必要な最小濃度(最小発育阻止濃度、MIC)を測りました。MICは値が小さいほど少量で効くことを意味します。混合したときの相互作用は、単独の場合から予想される程度を上回る「相乗」、足し合わせ程度の「相加」、混ぜても上乗せが見られない「無関係」、打ち消し合う「拮抗」に分類しました。

主な結果

ポリフェノール類の総量は、抽出物1グラムあたり88.8ミリグラム相当(C2)から149.8ミリグラム相当(A)まで幅がありました。2024年の測定と比べると、2年間の保存で総量は減っていました。減少幅は、Aの0.13%からC2の29.18%までと抽出物によって大きく異なりました。一方、総量の少ないC2を多い抽出物と混ぜると、混合物の値はC2単独より高くなりました。ただし、C1とSの組み合わせのように、混合物の値がどちらの単独抽出物よりも低くなった例もありました。

抗酸化の働きは試験法によって順位が入れ替わり、すべての試験で常に最も高い試料はありませんでした。その中で、AとSの組み合わせは、試験の一つ(ORAC法)で全試料中最も高い値を示しました。

抗菌性は、抽出物の種類と相手の微生物の組み合わせによって大きく異なりました。単独の抽出物ではC1が比較的強く、特にグラム陽性菌と酵母の一種カンジダ・アルビカンスに対して低いMICを示しました。例えば黄色ブドウ球菌の標準株に対するMICは0.04 mg/mLで、MRSAに対しても0.19 mg/mLでした。一方、Sや、Sを含む一部の組み合わせは、いくつかのグラム陰性菌に対して比較的強い働きを示しました。

混合の効果が目立った例として、AとSの組み合わせがあります。この組み合わせは緑膿菌に対するMICが0.19 mg/mLで、A単独(1.3 mg/mL)やS単独(0.78 mg/mL)より低く、研究で最も強い相乗効果と判定されました。しかし全体では、組み合わせが単独抽出物より常に低いMICを示すわけではありませんでした。肺炎桿菌に対するC1とC2の組み合わせ(8.33 mg/mL)は、全試料中で最も高いMICでした。相互作用の大半は「無関係」に分類され、相乗や相加の例がある一方、拮抗も合計9件見られました。

同じ組み合わせでも、ある微生物に対しては相乗的に働く一方、別の微生物に対しては相加にとどまったり、混ぜたことによる上乗せが見られない「無関係」となったり、打ち消し合う「拮抗」となったりすることがありました。なお、ここでの「無関係」は混合による相互作用の分類であり、その微生物に抗菌作用がないという意味ではありません。好ましい相互作用は細菌で多く、酵母では少なかったと報告されています。また、混ぜる抽出物の数を増やしても、好ましい相互作用が増えるとは限りませんでした。統計解析では成分と生物活性の間に関連が示されました。ただし著者らは、これを因果関係の証明ではなく、抗菌性の違いに関わる可能性のある成分の候補を示したものと位置づけています。

研究が示すこと

この研究は、産地の異なるプロポリス抽出物を混ぜても、成分や働きが単純に強まるわけではないことを示しました。混合による変化は、どの抽出物を組み合わせるか、どの微生物を相手にするかによって選択的に現れます。

著者らは、より多くの産地のプロポリスを混ぜれば効果の高い製剤になるとは限らないと述べています。品質のそろったプロポリス製剤を作るには、個々の抽出物の成分を把握し、相性を確かめたうえで組み合わせを選ぶことが大切だ、というのが研究チームの結論です。

原著論文の著者・所属:Alexandru Ioan Giurgiu(Department of Apiculture and Sericulture, Faculty of Animal Science and Biotechnology, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Gianluca Albanese(Department of Agriculture, Environmental and Food Sciences, University of Molise, Via De Sanctis snc, 86100 Campobasso, Italy)、Adriana Cristina Urcan(Department of Microbiology and Immunology, Faculty of Animal Science and Biotechnology, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Victorița Bonta(Department of Apiculture and Sericulture, Faculty of Animal Science and Biotechnology, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Antonio De Cristofaro(Department of Agriculture, Environmental and Food Sciences, University of Molise, Via De Sanctis snc, 86100 Campobasso, Italy)、Massimo Iorizzo(Department of Agriculture, Environmental and Food Sciences, University of Molise, Via De Sanctis snc, 86100 Campobasso, Italy)、Otilia Bobiș(Department of Apiculture and Sericulture, Faculty of Animal Science and Biotechnology, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)、Daniel Severus Dezmirean(Department of Apiculture and Sericulture, Faculty of Animal Science and Biotechnology, University of Agricultural Sciences and Veterinary Medicine Cluj-Napoca, 400372 Cluj-Napoca, Romania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alexandru Ioan Giurgiu, Gianluca Albanese, Adriana Cristina Urcan, et al. Antioxidant and Antimicrobial Potential of Romanian Propolis Extract Combinations: Linking Chemical Composition with Biological Activity. Antibiotics 2026-10-01. DOI: 10.3390/antibiotics15100972. 原著ライセンス:CC BY.