著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Applied and Environmental Microbiology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ワインの発酵は、ブドウ果汁の中で入れ替わりながら働く多様な微生物の集団によって進みます。中心となるのはパン酵母としても知られる酵母サッカロミセス・セレビシエですが、それ以外のさまざまな酵母(非サッカロミセス酵母)や細菌も、発酵中に香りや成分のもとになる物質づくりに関わります。こうした微生物の顔ぶれは、ブドウ畑の環境や地理的な特徴を反映している可能性があると考えられています。

ブドウに付着する微生物が場所ごとにどう異なるかへの関心は高まっていますが、著者らによれば、市販の酵母(スターター)を加えて発酵させる「接種発酵」の場合に、そうした場所ごとの微生物の特徴が発酵中も残るのかについては、まだ知見が限られていました。研究チームは、この点を明らかにすることを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、イタリアを代表する赤ワイン用品種ネッビオーロ(学名ヴィティス・ヴィニフェラ)のブドウを複数のブドウ畑から集め、同じ条件にそろえた接種発酵を行いました。その発酵の過程で、カビや酵母を含む真菌の集団と、細菌の集団がどのように構成され、時間とともにどう変化するかを調べています。

あわせて、ワインの化学的な成分と、香りに関わる揮発性成分の全体像(ボラティローム)のデータも取得し、微生物の動きと組み合わせて分析しました。

主な結果

抄録によると、真菌と細菌の集団は、発酵の進行に伴ってそれぞれ特徴的な時間変化を示し、さらに産地に関連したパターンが見られました。これに伴って、化学成分や香り成分のプロファイルにも違いが認められたと報告されています。

著者らは、市販のスターター酵母が優勢になる標準化された接種発酵であっても、ブドウ畑の地理に関連した真菌と細菌の集団パターンが発酵全体を通じて検出可能なまま残っていたとしています。そして、こうした残り続ける微生物の特徴は、微生物の移り変わり方(遷移)の違い、化学組成やワインの香り成分の違いと関連していたと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、市販の酵母を加えて発酵を管理する一般的なワインづくりの条件のもとでも、産地に関連した微生物の「刻印」が検出できる形で残りうるという考え方を支える結果を示しました。報告されているのは微生物の特徴とワインの成分の違いとの関連であり、ブドウ畑ごとの微生物が、商業的なワインづくりの中でもワインの個性と結びついている可能性を示しています。

原著論文の著者・所属:Francesca Cristetti(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Paola Di Gianvito(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Vasileios Englezos(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin; Interdepartmental Centre for Grapevines and Wine Sciences, University of Turin)、Gabriele Serafino(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Ciro Orecchio(Department of Chemistry, University of Turin)、Marco Vincenti(Department of Chemistry, University of Turin)、Ilario Ferrocino(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Susana Río Segade(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Simone Giacosa(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin; Interdepartmental Centre for Grapevines and Wine Sciences, University of Turin)、Irene Franciosa(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin)、Luca Rolle(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin; Interdepartmental Centre for Grapevines and Wine Sciences, University of Turin)、Luca Cocolin(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin; Interdepartmental Centre for Grapevines and Wine Sciences, University of Turin)、Kalliopi Rantsiou(Department of Agricultural, Forest and Food Sciences, University of Turin; Interdepartmental Centre for Grapevines and Wine Sciences, University of Turin)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Francesca Cristetti, Paola Di Gianvito, Vasileios Englezos, et al. Region-associated microbial signatures persist during inoculated fermentation of Nebbiolo grapes. Applied and Environmental Microbiology 2026-09-09. DOI: 10.1128/aem.01510-26. 原著ライセンス:CC BY.