著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:Molecules (Basel, Switzerland)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の目的

クッキーは手軽で日持ちのする人気の菓子ですが、脂肪や砂糖を比較的多く含みます。一方で、脂肪は味や食感、見た目を大きく左右するため、減らすと品質が変わりやすいという課題があります。

亜麻仁(アマの種子)から油を搾った後に残る「搾りかす」は、現在は主に家畜の飼料に使われています。ただし、たんぱく質や食物繊維のほか、ポリフェノールと総称される植物由来の成分も含んでいます。研究チームは、マーガリンの一部をマルトデキストリン(でんぷんを分解して作る糖質素材)に置き換えたクッキーにこの搾りかすを加え、ポリフェノール類の量、抗酸化能、物理的性質、官能評価(人が食べて評価する試験)にどのような影響が出るかを調べました。

段階的に配合を決めた方法

研究は三段階で進められました。第一段階では、マーガリンの5〜25%をマルトデキストリンに置き換え、硬さ、体積、色、食べた人の評価を比べました。対照のクッキーの総合評価は7.3点でした。10%置き換えたものは置き換え試料の中で最も高い7.1点を得て、物理的性質と官能評価のバランスが最も良いと判断されました。25%置き換えたものは主に味の評価が低く、5.9点にとどまりました。この結果から、以降の実験では置き換え率を10%としました。

第二段階では、マルトデキストリンの原料として、果肉の白いジャガイモのでんぷんと、果肉が紫色のジャガイモのでんぷんを比べました。どちらを使っても、食感、色、評価の全体的な品質は対照と大きく変わりませんでした。総合評価は対照8.7点、紫色由来8.4点、白色由来8.1点です。そこで両方の種類を残し、第三段階で亜麻仁の搾りかすを小麦粉の一部の代わりに10%、20%、30%加えて比較しました。

主な結果

搾りかすを加えると、ポリフェノールの量は対照より明らかに増えました。試薬の反応に基づく代表的な測定法では、30%配合のクッキーで乾物100グラム当たりカテキン換算約416〜424ミリグラムとなり、対照の13倍を超えました。ただし、この方法はポリフェノール以外の成分にも反応することがあります。そのため研究チームは別の測定法も併用しており、こちらでも同じ試料で約165ミリグラムと、増加が確認されました。フラボノイドと呼ばれる成分群も、30%配合で対照の約3.5倍になりました。

抗酸化能は、活性の高い分子をどれだけ打ち消せるかを試験管内で測る二つの方法(ABTS法とDPPH法)で評価されました。どちらの方法でも、搾りかすの配合量が増えるにつれて値が高まりました。最も高かった試料は対照のおよそ4.6倍と4.9倍で、抗酸化能とポリフェノール量の間には強い相関が見られました。

紫色のジャガイモ由来のマルトデキストリンを使ったクッキーは、白色由来のものよりポリフェノール量が多い傾向があり、特に搾りかすの配合が少ない段階で差が目立ちました。著者らはジャガイモ由来の成分が関わった可能性を挙げています。一方で、マルトデキストリン自体の成分は測定していないため、これは仮説にとどまると述べています。個々のフェノール酸の分析では、焼成の過程で増える成分と減る成分があり、最終的な組成は原料からの持ち込みだけでは説明できないことも示されました。

品質面では、搾りかすを加えるとクッキーが硬くなる傾向がありました。20%配合の一部の試料では、焼いた当日の硬さが対照の3倍を超えました。研究チームは、搾りかすが水を多く吸い、小麦粉のたんぱく質と水を奪い合うことが一因と考えています。

研究が示すこと

この研究は、油を搾った後に残る亜麻仁の副産物を、脂肪を一部減らしたクッキーに使うと、ポリフェノール類の量と試験管内で測った抗酸化能が高まることを示しました。一方で、硬さなど食感への影響も伴うことが報告されています。食品加工の残りものを菓子の原料として活かす際に、成分面と品質面の両方でどのような変化が起きるかを具体的に示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Kruczek M(Department of Carbohydrate Technology and Cereal Processing, Faculty of Food Technology, University of Agriculture in Krakow, 122 Balicka Street, 30-149 Krakow, Poland.)、Gumul D(Department of Carbohydrate Technology and Cereal Processing, Faculty of Food Technology, University of Agriculture in Krakow, 122 Balicka Street, 30-149 Krakow, Poland.)、Oracz J(Institute of Food Technology and Analysis, Faculty of Biotechnology and Food Sciences, Lodz University of Technology, Bohdana Stefanowskiego 2/22, 90-537 Lodz, Poland.)、Marriott-Rybka N(Department of Carbohydrate Technology and Cereal Processing, Faculty of Food Technology, University of Agriculture in Krakow, 122 Balicka Street, 30-149 Krakow, Poland.)、Kusz A(Department of Carbohydrate Technology and Cereal Processing, Faculty of Food Technology, University of Agriculture in Krakow, 122 Balicka Street, 30-149 Krakow, Poland.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kruczek M, Gumul D, Oracz J, et al. Effect of Flaxseed Press Cake (<i>Linum usitatissimum</i> L.) Incorporation on the Polyphenol Content, Antioxidant Potential, and Quality of Partially Fat-Replaced Cookies. Molecules (Basel, Switzerland) 2026-10-19. DOI: 10.3390/molecules31203752. 原著ライセンス:CC BY.