著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。

掲載誌:World Journal of Advanced Research and Reviews

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

コーヒーは世界で最も広く飲まれている飲み物の一つで、主成分のカフェインは集中力を高め、疲労感を和らげる中枢神経の刺激物質として知られています。一方で、不安や不眠、動悸、コレステロールの上昇などとの関連も指摘されてきました。このため、コーヒーと健康の関係はすっきりと結論が出ていません。

著者らは、こうした相反する報告を整理するため、既存の科学文献を検討するレビュー論文をまとめました。目的は、体に役立つ「適度な摂取」と害につながる「過剰な摂取」の境目を理解し、この飲み物が人の健康に与える実際の影響を見極めることです。論文は、効果が守る方向に働くか、危険を高める方向に働くかは摂取量によって変わる可能性があるという見方を示しています。

何を調べたか

論文は、妊娠期、子ども時代、成人期といった人生の段階ごとに、コーヒーとカフェインの影響を扱った研究を紹介しています。取り上げた領域は、心の健康、片頭痛、心臓や血管の病気、コレステロール、心房細動と脳卒中、糖尿病、骨、がん、神経が徐々に障害される病気(神経変性疾患)、そしてカフェインへの依存です。

著者らはまず、コーヒーに約1,000種類の化合物が含まれると紹介しています。代表的なものは、カフェイン、ポリフェノールの一種であるクロロゲン酸、そして油に溶ける成分であるカフェストールとカーウェオールです。後の二つはジテルペンと呼ばれる成分のグループに属します。

主な報告内容

妊娠中については、カフェインは胎盤を通過しやすく、胎児と胎盤にはカフェインを分解する酵素が備わっていないと論文は説明しています。妊娠中のカフェイン摂取と初期の出血や流産との関連を示す疫学研究が紹介されています。論文はまた、世界保健機関(WHO)の推奨として1日300mg未満という目安を挙げたうえで、その量でも妊娠喪失などのリスクが残るとする新しい報告にも触れています。

子どもについては、睡眠を妨げるという報告が多い一方、研究はまだ限られており、因果関係ははっきりしないとされています。12歳未満の摂取量については、1日85mgを超えないこと、あるいは体重1kgあたり1日2.5mgまでに抑えることを提案する文献が紹介されています。

心臓や血管については、1日200mgを超えるカフェインで血圧が6mmHg上がるという報告がある一方で、コーヒー摂取量と病気のリスクに逆の関連、つまり飲む人ほどリスクが低いという関連を示す研究もあります。著者らは、現時点の証拠ではリスクの増加は示されておらず、むしろ守る方向に働く可能性があるとまとめています。

コレステロールについては、カフェストールとカーウェオールが血中の総コレステロールやLDL(いわゆる悪玉)コレステロールを上げる原因とされています。煮出してろ過しない淹れ方ではこれらの成分が多く、紙フィルターを通す淹れ方では非常に少ないと報告されています。このため論文は、ろ過したコーヒーが適した飲み方だと述べています。

糖尿病については、研究結果が一致していないことを示しつつ、データは決定的ではないとしています。そのうえで、適度な摂取が糖尿病の人に禁忌となるわけではなく、健康な人で発症リスクを高めるわけでもないと著者らは結論づけています。

がんについては、関係はがんの種類によって異なるとされています。論文は、肝臓がんなどではリスクの低下と結びつけた研究を紹介しています。一方、65℃を超える熱い状態で飲むと食道がんのリスクが高まるという報告にも触れており、全体として多くのがんに対して保護的、または少なくとも中立的な役割に見えるとしています。神経変性疾患では、パーキンソン病などに対して保護的な作用を示す研究が紹介されています。

気をつけるべき点として、片頭痛ではカフェインが治療に役立つ面と、頻繁にとると悪化の要因になる面の両方が報告されています。骨については、カフェインがカルシウムの吸収を妨げ排出を増やすとされていますが、骨粗しょう症との関連はなお議論が続いています。依存については、1日1gを超える摂取で重い影響が出得るとされています。また、摂取をやめた際の離脱症状(頭痛、眠気、集中力の低下など)は通常12〜24時間以内に現れ、24〜48時間で最も強くなり、約7日続くと紹介されています。

この研究が伝えること

このレビューは、コーヒーが一方的に「体に良い」とも「悪い」とも言い切れないことを示しています。著者らによれば、影響の現れ方は、飲む量、淹れ方、飲む人の年齢や体の状態によって変わります。妊娠中や子どもでは慎重さが求められる一方、成人の適度な摂取については多くの領域で害よりも利点を示す報告が目立つ、というのが論文から読み取れる全体像です。

原著論文の著者・所属:Gilberto Mercado Mercado(Department of Chemical and Biological Sciences , Universidad Autónoma de Ciudad Juárez , Chihuahua , Juárez City , México; Universidad Vizcaya de las Américas , campus Ciudad Juárez ,)、Karla Leonor Navarrete Cueto

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Gilberto Mercado Mercado, Karla Leonor Navarrete Cueto. Does coffee really have health benefits?. World Journal of Advanced Research and Reviews 2026-07-28. DOI: 10.30574/wjarr.2026.31.1.1971. 原著ライセンス:CC BY.