著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Jurnal Kesehatan Saelmakers PERDANA (JKSP)

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

2型糖尿病は世界で患者数が増え続けている病気です。論文によると、世界の糖尿病の有病率は1990年の7%から2022年には14%に上がりました。インドネシアでも、2023年の調査で15歳以上の有病率は11.7%となり、2018年の10.9%から上昇しています。

著者らは、砂糖で甘味をつけた飲料(清涼飲料や加糖の茶飲料など)を多く飲むことが肥満の要因となり、肥満が2型糖尿病の主な決定要因の一つであると説明しています。インドネシアは東南アジアで3番目に砂糖入り飲料の消費が多く、1人あたり年間約20リットルとされます。インドネシア政府は2024年の政令で、糖分・塩分・脂肪の多い食品や包装された甘味飲料への物品税の導入などを定めました。

一方で、こうした課税を将来の2型糖尿病の減少と明確に結びつけて検討した研究は、インドネシアではまだ少ないといいます。そこで研究チームは、すでに同様の政策を取り入れた国や地域の研究を集め、砂糖入り飲料への課税が糖の摂取量と2型糖尿病の将来予測に与える影響について、科学的な根拠をまとめることを目指しました。

どのように調べたか

研究チームは、PubMed、Scopus、ScienceDirectという学術文献データベースを使い、2015年から2025年に英語で発表された論文を探しました。対象は、肥満や2型糖尿病のリスクがある一般の人々について、砂糖入り飲料への課税を扱い、公衆衛生の観点から糖尿病予防を論じた研究です。データに裏付けられていない意見記事や、方法が不明確な研究は除外しました。

論文の選び方には、系統的レビューで広く使われる報告手順(PRISMA 2020)に沿った流れを用いました。重複を取り除き、題名と要旨で絞り込み、さらに内容を確認しています。最初に見つかった329本のうち、最終的に7本が分析の対象となりました。対象地域は南アフリカ(2本)、香港、メキシコ、米国、ブラジル、ドイツです。

7本の多くは、実際に課税した後の長期データを追ったものではありません。各国の既存データをもとに、数理モデルを使って将来の患者数や死亡数を推計した研究です。ほかに、社会経済的な立場の違う集団ごとに政策の影響を比べる費用対効果分析や、住民に「どこまで払ってよいと思うか」を尋ねる調査を組み合わせた研究も含まれています。

主な結果

著者らによると、7本の研究はそろって、砂糖入り飲料への課税が2型糖尿病の負担を減らす方向に働くと報告していました。税率が20%以上の場合は、10%の場合より健康への効果が大きく示される傾向がありました。よく報告されていた成果は、2型糖尿病の新規患者の減少、早すぎる死の予防、医療費の節約です。仕組みとしては、価格が上がることで消費が減り、長期的な健康リスクが下がると説明されています。

個別の推計の例も紹介されています。南アフリカでは、20%の課税で2型糖尿病の新規患者を約16万人防げるとする推計がありました。メキシコでは、砂糖入り飲料の消費が10%減ると約18万9300人の発症を防げるとされました。米国では、飲料の量に応じて課税する方式で約26万9000人の発症を防げるとの結果でした。ドイツでは、2040年までに2型糖尿病の有病率が0.95ポイント下がり、患者数が約64万人少なくなる(相対的に約6%の減少)と推計されています。

課税の仕組みについて、著者らは米国の研究をもとに、量や糖の含有量に応じた課税の方が販売価格に比例する課税より効果的だとしています。こうした方式は、メーカーが糖分を減らした製品へ改良するきっかけにもなるといいます。また南アフリカの研究では、課税がむしろ低所得層を守る方向に働くことが示されていました。低所得層は糖尿病で深刻な医療費負担に陥りやすいためです。著者らは、これが「課税は貧しい人ほど負担が重い」という一般的な主張に疑問を投げかける結果だと述べています。

この研究が示すこと

著者らは、砂糖入り飲料への課税を、2型糖尿病の負担を抑える根拠ある公衆衛生策と位置づけ、インドネシアでも有力な手段になり得ると結論づけています。ただし効果は、課税の設計、業界の抵抗、税収を使った貧困層への配慮などに左右されるといいます。そのため、栄養教育、分かりやすい食品表示、広告の規制、健康的な代替品の提供といった施策と組み合わせることが重要だとしています。

同時に著者らは、根拠の多くがモデルによる予測であり、長期の実データにもとづく検証ではない点を注意しています。ほかの国の価格反応のデータを使っていることや、似たカロリーの別の商品に乗り換える影響があまり考慮されていないことも挙げています。インドネシアに当てはめる際は、消費の傾向や市場、文化の違いを踏まえて慎重に判断する必要があるとしています。このレビューは、各国のモデル研究が一貫して課税の効果を示していることと、その確かさを実際の政策で確かめる段階はまだこれからであることの両方を示しています。

原著論文の著者・所属:Wulandari Putri, Tegar(Universitas Padjadjaran, Indonesia)、Az-Zahra, Firyal(Universitas Padjadjaran, Indonesia)、Nur Azzahra, Zulkhaida(Universitas Padjadjaran, Indonesia)、Kurniawan, Titis(Universitas Padjadjaran, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wulandari Putri, Tegar, Az-Zahra, Firyal, Nur Azzahra, Zulkhaida, Kurniawan, Titis The Impact of Sugar-Sweetened Beverage Tax on Projected Prevalence of Type 2 Diabetes Mellitus: A Literature Review. Jurnal Kesehatan Saelmakers PERDANA (JKSP) 2026-09-29. DOI: 10.32524/jksp.v9i3.2266. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。