著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。

掲載誌:Climatic Change

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

2023年にドバイで開かれた国連気候変動会議COP28では、食料や農業が主要な議題となりました。研究チームは、この会議をめぐるニュースで、食料生産や畜産、食生活と気候変動の関係がどれほど取り上げられ、誰の発言やどのような主張が紹介されたかを調べました。

何を、どのように調べたか

対象は、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、英国、米国の主要なオンラインニュースです。畜産物の生産・輸出における重要性や、メディアの国際的な影響力などを踏まえて5か国を選び、ニュース利用調査をもとに各国で利用の多い10媒体を起点として対象媒体を選定しました。

研究チームは、COPや国連を表す語と、食料・農業・肉などを表す語を組み合わせて記事を検索しました。重複や無関係な記事を除いた137本のうち、検索語の登場が1、2回にとどまる記事を除外し、計3回以上登場する62本を詳しく分析しました。著者の1人が記事を読み、引用された人物・組織の種類や、食料分野の排出削減を求める主張、畜産や肉食を擁護する主張などを、共通の基準に沿って分類・集計しました。

主な報告結果

調査対象のCOP28関連記事全体のうち、食料・農業・肉に少なくとも1回触れた記事は14%でした。検索語が3回以上登場し、研究チームが詳しい分析の対象とした記事は62本で、COP関連記事全体の6%でした。食が主要な議題となった会議でも、これらの問題をある程度掘り下げた報道は限られていたと著者らは報告しています。

畜産や食生活と気候変動の関係について引用された発言を見ると、対策を求める環境NGOが19回、国際機関が18回、畜産業などを擁護する業界団体が14回でした。研究チームは、変化を求める側と畜産業を擁護する側の双方が報道に登場していたとしています。一方、農業・食品企業の代表者や、業界のために働く専門のロビイスト、広報担当者の直接の引用は、ほとんど見られませんでした。

対策を求める主張では、食料に関わる温室効果ガス排出への対応や、農業の方法を変える必要性が目立ちました。食生活を排出の要因として取り上げた記事は62本中15本、24%で、そのうち12本は米国と英国の記事でした。畜産や肉食を擁護する側では、環境や気候に役立つ、食料の安定供給に重要である、たんぱく質源として人に有益である、という主張が多く見られました。これらは記事中で紹介された主張の分類であり、その効果をこの研究が検証したものではありません。

この報告が示すこと

著者らは、食料が交渉の主要議題になっても、そのことが十分な報道量に直結するわけではないと捉えています。また、引用回数で見る限り、資金力や会議への参加規模が大きい業界側だけが報道の語り方を支配していたわけではない、と述べています。

ただし、詳しく分析した記事は62本と少なく、研究は報道の傾向を探る探索的なものです。主張や発言が登場したかどうかを数えた一方、記事全体がどの立場を強調したか、肯定的・否定的に扱ったかは質的に評価していません。この報告は、食と気候変動について、どの声や論点がニュースに登場したかを示すものとして読む必要があります。

原著論文の著者・所属:James Painter(Reuters Institute for the Study of Journalism, University of Oxford, 13 Norham Gardens, Oxford, OX2 6PS, UK; School of Geography and Environment, University of Oxford, S Parks Rd, Oxford, OX1 3QY, UK)、Silje Kristiansen(Reuters Institute for the Study of Journalism, University of Oxford, 13 Norham Gardens, Oxford, OX2 6PS, UK; School of Geography and Environment, University of Oxford, S Parks Rd, Oxford, OX1 3QY, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):James Painter, Silje Kristiansen. Food and climate change in the media: a case study of the international coverage of the Dubai COP in 2023. Climatic Change 2026-10-01. DOI: 10.1007/s10584-026-04308-z. 原著ライセンス:CC BY.