著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:International Journal For Multidisciplinary Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:暮らしに結びついた植物と気候の変化
気候は植物の分布や成長、花が咲き実がなる時期などの季節的なふるまいを左右します。著者らは、気温や降水のわずかな変化でも植物に大きな影響が及びうると述べ、なかでも地域の人々が食料や伝統的な利用のために頼ってきた「民族植物」への影響に注目しました。民族植物とは、特定の地域や民族が食用、薬用、生活用具、儀礼などに伝統的に用いてきた植物を指します。
研究の舞台は、インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のアッパー・シアン県です。面積はおよそ6590平方キロメートルとされています。この県のカルコ村には、アディ族の下位集団であるカルコの人々が暮らしています。論文によれば、カルコの人々は周囲の自然と強い生態的なつながりを持ち、生活の糧を自然資源に直接頼っています。著者らはこの村を事例に、民族植物に気候変動とかかわる変化がどのように表れているかを調べました。
何を調べたか
研究チームは2025年に現地調査を行い、カルコ村で利用されている民族植物を整理しました。それぞれの植物について、現地での呼び名、一般名、学名、科名とあわせて、植物のふるまいに見られる変化を一覧にまとめています。
対象となった24項目には、ハトムギの仲間、サトウヤシの一種、エゴマの仲間、ミョウガの仲間、ショウガ、ブラックカルダモン、ドクダミ、ヒョウタンの仲間、サンショウの仲間などが含まれます。著者らは、植物の消失や新たな出現といったふるまいの変化を、気候変動を示す指標の一つと位置づけています。
主な結果:減少が目立ち、一部では増加や新たな出現も
論文の一覧では、多くの植物について「減少した」「減少しつつある」と記録されています。ハトムギの仲間は生産性の低下、エゴマの仲間は消えつつあるとされました。ミョウガの仲間、在来のカルダモンの一種、野生のカラシナ、ドクダミ、サンショウの仲間、ヒョウタンの仲間、キバナオランダセンニチなども減少に分類されています。
一方で、すべての植物が減っているわけではありません。ショウガとブラックカルダモンは生産性が高まったとされ、包装用の葉として使われる植物やナス属の一種は増加と記録されました。つる性植物のミカニア・ミクランサ(現地名イン)は、新たに現れた植物として挙げられています。
著者らは結論で、開花、成長、結実、発芽の変化や、特定の植物の出現と消失が気候変動の生態的な指標になると述べています。さらに、気温や降水の不規則化、長引く乾燥期が、こうした植物の生育環境を変えうると論じています。
研究が伝えること
著者らは、民族植物が手に入りにくくなれば、植物そのものだけでなく、それにまつわる伝統的な知識の受け継ぎにも影響が及ぶ可能性を指摘しています。そのうえで、植物の多様性、季節的な変化、地域での利用法、住民の受け止め方を体系的に記録することが、気候変動の影響をとらえる基礎資料になると述べました。
論文は、生育地の保全、伝統的な生態の知恵の強化、地域住民の参加、環境への負担が小さい採取方法の普及が、この地域の植物の知識を守るうえで重要だとしています。著者らにとって、気候変動は生態系だけの問題ではありません。植物資源に頼って暮らすカルコの人々にとっては、社会や文化にかかわる問題でもあります。そのため、この地域の保全や気候への備えには、科学的な知見と地域の伝統的な知識を組み合わせるべきだと論文は結んでいます。
原著論文の著者・所属:Mumny Panor(Gandhi University , Department of Geography , Doimukh , India)、Nishamani Kar(Professor, Rajiv Gandhi University, Department of Geography, Doimukh, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mumny Panor, Nishamani Kar Impact of Climate Change on Ethnobotanical Plants of the Karkos: A Case Study of Karko Village, Upper Siang District. International Journal For Multidisciplinary Research 2026-10-01. DOI: 10.36948/ijfmr.2026.v08i05.88900. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。