著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:PLoS ONE

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

農業技術の伝えられ方を調べる

研究チームは、途上国のニュースメディアが「菌草(Juncao)技術」をどのような話題や感情表現と結び付けて紹介しているかを調べました。菌草技術とは、樹木の代わりに草本植物を培地として、食用・薬用のキノコを育てる技術です。研究の焦点は栽培効果そのものではなく、技術の普及や受け入れに関わる報道の描き方にあります。

分析対象は、技術の主な受け入れ先であるアフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの計13か国で、2019~2025年に公表された英語のニュース97本です。文章を話題ごとに分類する手法と、単語に対応する感情の種類・強さを記した辞書を使い、報道のテーマと感情表現の特徴を分析しました。

実用面への関心と、信頼・期待を示す言葉

著者らは、報道から五つの主要テーマを見いだしました。農家への研修や栽培、生態環境や地域の暮らしの改善、畜産を通じた持続可能な開発目標への貢献など、実用面に関わる三つのテーマが、分析対象の65.9%を占めたと報告しています。技術の仕組みだけでなく、地域の課題にどう役立つかが前面に出ていました。

感情表現では、信頼、期待、喜びなどの肯定的なカテゴリーが目立ちました。特に信頼は、出現頻度と文単位で評価した平均的な強さの両方で最も高く、期待がそれに続きました。著者らは、国際協力の報道が信頼を、収入や生産に関する報道が経済的な利益への期待を形づくっていると解釈しています。

否定的な言葉は、技術よりも社会の課題に向けられる

恐れ、怒り、悲しみ、嫌悪に分類される言葉は、主として菌草技術への不安ではなく、貧困、食料不安、土地不足、環境の悪化を表す文脈に現れました。著者らは、報道がまず困難な状況を示し、その解決策として菌草技術を位置付ける「問題と解決」の構成を取っていると説明しています。

対象記事の多くは政府系・公的機関に近い媒体などによるもので、著者らは、英語以外の言語による視点や地域住民の声が十分に反映されていない可能性にも触れています。この研究が示したのは報道の特徴であり、農家の採用行動への効果を直接測ったものではありません。農業技術は性能だけでなく、地域の暮らしの課題や信頼・期待と結び付けて伝えられている、というのが論文の中心的な意味です。

原著論文の著者・所属:Ling Huang(International College, Fujian Agriculture and Forestry University)、Yunqing Zhang(International College, Fujian Agriculture and Forestry University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ling Huang, Yunqing Zhang. Media framing of agricultural technology adoption in developing countries: Evidence from Juncao technology news coverage. PLoS ONE 2026-09-01. DOI: 10.1371/journal.pone.0343652. 原著ライセンス:CC BY.