しょうゆのようなうま味の強い発酵調味料をなめると、じんわりとしたコクを感じます。あの独特のうま味を支える成分の一つが「ピログルタミン酸」です。発酵調味料に含まれるうま味成分の仲間で、成分表にもその含有量が収録されています。この成分そのものには国の摂取基準は設けられていませんが、含有量の多い食品を並べてみると、ある偏りがくっきり浮かび上がります。
ピログルタミン酸が多い食品の上位5件を見ると、1〜3位はすべて魚醤油が占め、4位タイに漬物が2品並びます。つまり上位はすべて「発酵・塩蔵」でうま味を凝縮させた調味料や保存食ばかりということです。うま味の濃さを支える成分の正体を知ると、次に何が見えてくるのか。数字を追ってみます。
1〜3位は魚醤油、そろって塩分が突出
第1位はいかなごしょうゆで、ピログルタミン酸は100gあたり0.4g。同時にナトリウムは8300mgと非常に多く含まれています。小さじ1杯でも相応の塩分を含む計算になり、ひとさじ加えるだけでうま味と一緒に塩分もしっかり摂ることになります。第2位のいしり(いしる)は0.3gで、ナトリウムは8600mgとさらに多め。第3位のしょっつるは0.2gですが、ナトリウムは9600mgと3種の中でも最も高い数値です。3種とも脂質はほぼゼロで、うま味の主張が際立つ一方、ナトリウムの多さも共通しています。魚醤油は少量を料理に垂らして使うことが多い調味料ですが、大さじで使えばそれだけ塩分量も増えるという単純な事実は、意外と見落とされがちです。
ちなみにいかなごしょうゆにはヨウ素が100gあたり150µg含まれ、これは女性(30〜49歳)の推奨量140µg/日の107%にあたります。ただしこれは推奨量に対する割合であり、耐容上限量に対するものではありません。ヨウ素には上限量が設定されていますが、いかなごしょうゆを大量に使う機会は少ないため、通常の使用量であれば心配する数値ではなさそうです。
4位タイは漬物、同じ数値でも中身は別物
4位タイの2品は、ピログルタミン酸がどちらも0.1gと同程度ですが、中身は対照的です。しろうり漬物(奈良漬)は1切れ約20gが目安量で、モリブデンを100gあたり81µg含みます。これは女性(30〜49歳)の推奨量25µg/日の324%にあたる数値です。モリブデンには耐容上限量が設定されている栄養素ですが、奈良漬を1切れ程度食べる分には過度に心配する量ではありません。一方のたかな漬は1人分約30gが目安量で、ビタミンKを100gあたり300µg含み、これは女性(30〜49歳)の目安量150µg/日の2倍にあたります。同じ「4位タイ」でも、片方はミネラルの多さ、もう片方はビタミンの多さで特徴づけられるわけで、順位が並んでいるからといって栄養的な優劣がついているわけではありません。
うま味を選ぶことは、塩分を選ぶことでもある
上位5食品を並べてみると、ピログルタミン酸の多さは発酵や塩蔵によってうま味を凝縮させた食品の目印のようなものだと分かります。特に1〜3位の魚醤油は、うま味が濃いぶんナトリウムも8000mg台後半から9600mgという高い数値で並んでおり、この成分の多さと塩分の多さがセットになっている構図が見えてきます。だからといって魚醤油や漬物を避ける必要はなく、うま味の濃い調味料を少量だけ使い、料理全体の塩分をそこで足し引きするという使い方が現実的です。うま味の強さに惹かれて選ぶ調味料が、同時に塩分の多い調味料でもあるという事実を知っておくと、次にラベルの食塩相当量を見る目も変わってきそうです。
※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。