著者の所属・活動拠点の国は、フィンランドです。
掲載誌:Journal of Agricultural and Food Chemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
植物油の主成分はトリアシルグリセロール(TG)と呼ばれる中性脂肪です。TGは、グリセロールという骨格に脂肪酸が3つ結合した分子です。どの脂肪酸の組み合わせからなるTGが含まれているかという分子種のレベルでは、植物油は比較的よく調べられてきました。
一方、同じ組み合わせの脂肪酸でも、骨格のどの位置に結合しているかによって分子の形は異なります。結合位置が異なる「位置異性体」や、右手と左手のように鏡に映した関係にある「鏡像異性体」がその例です。研究チームによると、こうした立体的な構成の詳細や、それが植物の種類によってどう違うかは、まだほとんど解明されていませんでした。本研究は、この点を明らかにすることを目指しています。
どのように調べたか
著者らは、超臨界流体クロマトグラフィー質量分析(SFC-MS)という手法を用いました。これは、気体と液体の中間的な性質をもつ「超臨界流体」を使って混合物の成分を分け、その成分を質量分析で検出する方法です。分離には、鏡像異性体を見分けられるキラルカラム(CHIRALPAK IG-U)を2本使用し、アセトニトリルとメタノールを補助溶媒として加えました。
研究チームはまず、TGの標準物質を用いて、3つの脂肪酸の並びが左右非対称な8種類のTG分子種について、分離の様子や鏡像異性体の溶け出し方を調べました。この評価を経たうえで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の両方を含む非対称なTG分子種5種類を対象に、12種類の植物油で位置異性体と鏡像異性体を分けて調べました。
主な結果
論文によると、これらのTG分子種の立体的な構成は、植物の種類によって大きく異なっていました。グリセロール骨格のどの位置にどの脂肪酸が結合するかは偶然に任せたランダムなものではなく、一定の偏りをもつパターンがみられました。また、その分布には植物の種による違いがあることも示されました。
研究の意味
著者らは、この成果が植物がTGを合成する過程でみられるキラリティー(鏡像の関係にある形の区別)を理解する手がかりになると述べています。さらに、目的に応じた食品の配合や製品開発を支える情報になるとしています。植物油の脂肪は、含まれる脂肪酸の種類だけでなく、分子の中での並び方にも植物ごとの個性があるという点が、この研究から伝わります。
原著論文の著者・所属:Marika Kalpio(University of Turku , , ,)、Dilakshi Naotunna Palliya Guruge(University of Turku , , ,)、Mikael Fabritius(University of Turku , , ,)、Qizhu Zhao(University of Turku , , ,)、Baoru Yang(University of Turku , , ,)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marika Kalpio, Dilakshi Naotunna Palliya Guruge, Mikael Fabritius, et al. Stereospecific Characterization of Triacylglycerols in Vegetable Oils by Chiral Supercritical Fluid Chromatography and Mass Spectrometry. Journal of Agricultural and Food Chemistry 2026-10-24. DOI: 10.1021/acs.jafc.6c07006. 原著ライセンス:CC BY.