日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

栄養成分が同じでも、加工方法で違いは生まれるか

研究チームは、チョコレートの栄養成分をほぼ変えずに、加工方法によって食後の体の反応が変わるかを調べました。着目したのは、原料を混ぜて練りながら、熱や圧力をかけて押し出す「押出加工」です。原料の一部にこの加工を施したチョコレートと、施していないチョコレートを比較し、血糖、インスリン、中性脂肪の変化や、空腹感・満腹感を調べました。

同じ参加者が2種類を食べて比較

試験には20〜60歳の健康な男性18人が参加しました。全員が1週間を超える間隔を空けて、2種類のチョコレートを別の日に食べました。食べる順番は無作為に決め、参加者と試験を行う側の双方に、どちらのチョコレートかを知らせない方法を用いました。

参加者は12時間の絶食後にチョコレート76グラムを食べ、食べる前から食後180分まで採血を受けました。研究チームは、血糖、血糖の調節に関わるホルモンであるインスリン、血液中の脂質の一種である中性脂肪を測定しました。また、唾液や胃液を模した液体を使い、チョコレートから糖が溶け出す速さも調べました。

食後の一部の指標に差が見られた

研究チームの報告では、押出加工したチョコレートを食べた場合、加工していない場合より、食後30分のインスリンと、食後30分・45分の中性脂肪が統計的に有意に低くなりました。食前からの上昇を時間に沿って積み上げた指標でも、インスリンは食後30〜120分までの各評価で有意に低い値を示しました。

血糖は食後45分に加工したチョコレートのほうが低い傾向を示しましたが、上昇を時間に沿って積み上げた指標では、血糖と中性脂肪に有意な差はありませんでした。食欲に関する回答はおおむね同様でしたが、食後120分の満腹感は加工したチョコレートのほうが高くなりました。

液体中での実験では、砂糖に当たるショ糖と、その分解で生じたブドウ糖を合わせて評価した溶出量が、加工したチョコレートで5分後と15分後に有意に少なくなりました。30分後には有意な差は見られませんでした。乳糖も加工したほうで低い値を示しましたが、有意な差には達しませんでした。

成分量だけでなく、溶け出し方にも着目

著者らは、押出加工によって糖が溶け出す速さが変わり、それが食後の体の反応に関わった可能性を示しています。ただし、体内でどの段階の消化・吸収が変化したかを直接確かめたわけではなく、長期的な影響も分かっていません。今回の研究は、健康な男性での短時間の比較から、食品の栄養成分量だけでなく、加工による成分の溶け出し方も食後の反応に関わり得ることを示したものです。

著者:Yasuyoshi Kinta(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Hiroko Maruki‐Uchida(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Masahiro Umehara(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Ryoichi Ito(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Ryotaro Shiga(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Yuki Yasumoto(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、S Mori(Research Institute Morinaga & Co. Ltd. Yokohama Kanagawa Japan)、Takashi Koikeda(Shiba Palace Clinic Tokyo Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yasuyoshi Kinta, Hiroko Maruki‐Uchida, Masahiro Umehara, et al. Chocolate Processed by Extrusion Cooking Affects Glucose and Lipid Metabolism in Humans: A Randomized, Double‐Blind, Crossover Trial. Food Science & Nutrition 2026-09-30. DOI: 10.1002/fsn3.72409. 原著ライセンス:CC BY.