著者の所属・活動拠点の国は、スペイン、チリ、ポルトガル、パラグアイ、韓国、エクアドルです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

思春期は成長に伴って栄養の必要量が高まる時期で、たんぱく質の摂取は体の発達に関わるとされています。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は必須アミノ酸の構成などが異なりますが、どちらから摂るかが若者の体力とどう関係するかは、これまで十分に調べられていませんでした。

また、たんぱく質の摂取源が違う人どうしでは総エネルギー摂取量も異なることがあり、単純に比較すると結果の解釈が難しくなります。そこで研究チームは、総エネルギー摂取量を一定に保ったまま、一方のたんぱく質を同じエネルギー量の他方に置き換えた場合を統計的に想定する「等カロリー置換モデル」を用い、植物性と動物性のたんぱく質の置き換えが思春期の若者の体力と関連するかを調べました。

調べた方法

対象は、スペイン・ムルシア州のバジェ・デ・リコテ地域で行われている調査研究(EHDLA研究)に参加した12〜17歳の若者で、分析には790人(女子55.1%、年齢の中央値14.0歳)のデータが使われました。ある一時点のデータを分析する横断研究です。

食事は、過去1年間に45品目の食品をどのくらいの頻度で食べたかを答える食物摂取頻度調査票で把握されました。回答された頻度に標準的な1回量と食品成分の値を掛け合わせ、動物性・植物性それぞれのたんぱく質摂取量を推定しています。著者らは、これらの値は個人の実際の量を量ったものではなく、習慣的な摂取の推定値であると説明しています。

体力は、持久力をみる20mシャトルラン、握力、立ち幅跳び、敏しょう性をみる4×10mシャトルラン、柔軟性をみる長座体前屈で測定し、これらをまとめた総合体力得点も算出されました。分析では、総エネルギーの5%分を動物性から植物性たんぱく質に置き換えたと想定した場合の体力との関連を推定し、年齢、性別、家庭の経済状況、睡眠時間、身体活動、座って過ごす時間、BMI、総エネルギー摂取量などの影響を考慮しています。

主な結果

参加者の推定では、総エネルギーのうち植物性たんぱく質が4.3%、動物性たんぱく質が12.7%を占めていました。

中心となる分析では、総エネルギーの5%分を動物性から植物性たんぱく質に置き換えると想定しても、総合体力を含むいずれの体力指標とも統計的に意味のある関連は見られませんでした。身体活動量の多少やたんぱく質摂取が十分かどうかで分けた追加分析でも、同様に関連は認められませんでした。

一方、食品群ごとの探索的な分析では、いくつかの関連が報告されました。卵由来のたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換える想定は、立ち幅跳びの記録の低さや4×10mシャトルランのタイムの遅さと関連し、脂の多い魚の置き換えもシャトルランのタイムの遅さと関連していました。逆方向では、根菜類由来のたんぱく質を動物性たんぱく質に置き換える想定が総合体力の低さと、穀類由来のたんぱく質を置き換える想定がシャトルランのタイムの速さと関連していました。

ただし、論文によると、多数の比較を同時に行ったことを考慮する補正を加えると、これらの食品群レベルの関連はいずれも統計的に意味のある水準には残りませんでした。乳製品、鶏肉、赤身肉、加工肉、白身魚、魚介類、豆類、ナッツ類、野菜についての置き換えでは、補正前から関連は見られていません。

この研究が示すこと

著者らは、総エネルギー摂取量を同じに保った条件では、たんぱく質が植物性か動物性かという違いだけでは、思春期の若者の体力との明確な関連は見られなかったと結論づけています。そのうえで、食品ごとにばらつきのある関連が見られたことから、たんぱく質の由来だけでなく、どの食品から摂るかという食品全体の構成にも目を向ける意義があるとしています。

なお、この研究は一時点の観察データに基づくもので、置き換えの効果は統計上の想定にとどまります。著者らは、結果は因果関係を示すものではなく、食事の推定も自己申告による誤差を含みうると述べています。

原著論文の著者・所属:Jacinto Muñoz-Pardeza(Department of Health Research, Icen Cognis; Faculty of Health Sciences, Universidad Tecnológica Atlántico Mediterráneo–UTAMED; Navarrabiomed, Hospital Universitario de Navarra, Universidad Pública de Navarra (UPNA), IdiSNA)、Patricia Álvarez-Rodríguez(Navarrabiomed, Hospital Universitario de Navarra, Universidad Pública de Navarra (UPNA), IdiSNA)、Rodrigo Yáñez-Sepúlveda(Faculty Education and Social Sciences, Universidad Andrés Bello)、Camila Miño(European Institute of Higher Studies, IEES)、Fiorella Quiroz-Cárdenas(Vicerrectoría de Investigación y Postgrado, Universidad de Los Lagos)、Doris Quiroz-Cárdenas(Universidad Autónoma del Paraguay)、Lucille Ridgell(Faculty of Health Sciences, Universidad Autónoma de Chile)、Dong Keon Yon(Center for Digital Health, Medical Science Research Institute, Kyung Hee University College of Medicine)、Miguel López-Moreno(Faculty of Health Sciences, Institute of Health and Sport Sciences, Universidad Francisco de Vitoria)、José Francisco López-Gil(Department of Sport Sciences, Faculty of Sport and Health Sciences, Fit Generation Research Institute; School of Medicine, Universidad Espíritu Santo)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jacinto Muñoz-Pardeza, Patricia Álvarez-Rodríguez, Rodrigo Yáñez-Sepúlveda, et al. Isocaloric substitution of plant-based for animal-based protein and physical fitness in adolescents: a cross-sectional study from the EHDLA study. Frontiers in Nutrition 2026-10-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1961324. 原著ライセンス:CC BY.