この研究は、レバノン、フランス、ヨルダンの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

年齢とともに筋肉の量や力、体を動かす能力が落ちていく状態はサルコペニアと呼ばれます。サルコペニアは骨折や虚弱のリスクの高まりと結びつき、生活機能の低下や障害、さらには死亡リスクの上昇にもつながるとされています。筋肉を保つにはたんぱく質を十分にとることが大切だと考えられています。しかし、肉や乳製品などの動物性たんぱく質と、豆類や穀類などの植物性たんぱく質が、それぞれどの程度筋肉と関係するのかについては、これまでの研究結果が一致していませんでした。

研究チームが注目したのは、レバノンの高齢者です。この集団は、他の集団と比べて豆類や穀類など植物性の食品から比較的多くのたんぱく質をとっているとされています。著者らは、たんぱく質の摂取源、特に動物性と植物性の割合が、骨格筋量の少なさとどのように関連しているのかを調べることを目的としました。

どのように調べたか

研究は、ある一時点での状態を調べる横断研究として行われました。2025年6月から10月にかけて、ベイルートの病院とその関連の高齢者ケア施設で、60歳を超える高齢者162人が参加しました。参加者は筋肉量の状態にかかわらず募集され、参加後に筋肉量の判定が行われています。

骨格筋量は、生体電気インピーダンス法で測定しました。これは体に微弱な電流を流して体の組成を推定する方法です。骨格筋量を身長の2乗で割って「骨格筋量指数」を求め、男性では7.26 kg/m²、女性では5.45 kg/m²を下回る場合を「骨格筋量が少ない」と分類しました。著者らは、この分類がサルコペニアの完全な診断ではないと明記しています。筋力や身体機能も含めて判定したものではなく、あくまで骨格筋量の少なさを判定したものです。

食事については、食物摂取頻度調査票を研究用に作成しました。調査票にはレバノンでよく食べられる80品目が含まれ、過去3か月の普段の食事を尋ねました。そこから、2種類のたんぱく質について1日あたりの摂取量を推定しています。動物性たんぱく質は肉・鶏肉・魚・卵・乳製品に由来するもの、植物性たんぱく質は豆類・ナッツ・穀類・種子に由来するものです。あわせて握力も測定しました。さらに、SPPBと呼ばれる身体機能テストも行いました。これは立位のバランス、歩行速度、椅子からの立ち上がりを組み合わせたテストです。

主な結果

参加者のうち49.4%が、骨格筋量が少ないと分類されました。骨格筋量が少ない人は、そうでない人と比べて握力やSPPBの得点が低い傾向にありました。また、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のどちらの摂取量も少ない傾向にありました。平均摂取量を骨格筋量が少ない人と正常な人で比べると、動物性たんぱく質は1日あたり約29グラム対約33グラム、植物性たんぱく質は約28グラム対約31グラムでした。

分析では、性別、喫煙、運動習慣、糖尿病、心血管疾患、高血圧などの影響を考慮しました。その結果、次の4つがいずれも、骨格筋量が少ないと分類される可能性の低さと統計的に関連していました。握力が強いこと、SPPBの得点が高いこと、動物性たんぱく質の摂取量が多いこと、植物性たんぱく質の摂取量が多いことです。関連の強さは、動物性たんぱく質のほうが植物性たんぱく質よりもやや強いものでした。

なお著者らは、筋肉量が少ない人で握力や身体機能が低いことは、こうした状態の特徴として予想される違いだと述べています。そのうえで、むしろたんぱく質の摂取源との関連に重点を置いて結果を解釈しています。

研究が示すこと

この研究は、レバノンの高齢者における関連を報告しました。動物性と植物性のどちらのたんぱく質も、摂取量が多いほど骨格筋量が少ないと分類される可能性が低いというものです。著者らは、筋肉の健康を考える際には、たんぱく質の摂取源だけに目を向けるのではなく、摂取量と種類の両方を考慮すべきだとしています。

一方で、この研究は一時点の調査です。そのため、たんぱく質を多くとることが筋肉量を保つ原因になったとは結論づけられません。著者らは、逆向きの関係もありうると指摘しています。たとえば、筋肉が保たれている人ほど、たんぱく質の多い食事を用意して食べやすいといった可能性です。今回の成果は、植物性たんぱく質の比重が比較的大きいとされる集団において、動物性・植物性たんぱく質と高齢者の筋肉量との関連を示したものといえます。

著者:Cynthia El Hajj(Department of Nutrition and Food Science, School of Arts and Sciences, Lebanese American University, Beirut 1102, Lebanon)、Stéphane Walrand(Unité de Nutrition Humaine (UNH), INRAE, CHU Clermont-Ferrand, Université Clermont Auvergne, F-63000 Clermont–Ferrand, France)、Mariana Charbel Helou(Department of Medicine, School of Medicine, Lebanese American University, Beirut 1102 2801, Lebanon)、Souheil R. Hallit(Applied Science Research Center, Applied Science Private University, Amman 11937, Jordan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cynthia El Hajj, Stéphane Walrand, Mariana Charbel Helou, et al. Association Between Animal-to-Plant Protein Intake and Low Skeletal Muscle Mass Among Lebanese Older Adults. Nutrients 2026-10-12. DOI: 10.3390/nu18203333. 原著ライセンス:CC BY.