この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Miracle Get Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
貧血は、血液中のヘモグロビン(赤血球に含まれ酸素を運ぶたんぱく質)が十分でない状態を指します。著者らは、思春期の女子が貧血になりやすい背景として、成長にともなって鉄の必要量が増えること、月経によって定期的に鉄が失われること、そして食事や鉄剤の摂取が十分でない場合があることを挙げています。論文によれば、インドネシアでは2023年の全国保健調査で貧血の割合が全体で16.2%、15〜24歳では15.5%と報告され、女性(18.0%)が男性(14.4%)より高い水準にありました。政府は中等教育段階の女子生徒に鉄剤(TTD)を配る事業を行っていますが、著者らは、配られることと実際に飲み続けられることは別の問題だと指摘しています。
そこでこの研究は、食事のパターン、身体活動、鉄剤の服用継続(アドヒアランス)が貧血とどう関連するかを調べ、年齢や栄養状態などほかの条件の影響を調整したうえで、貧血ともっとも強く結びつく要因を特定することを目的としました。著者らは、職業高校の女子生徒という対象について、またこれら複数の行動要因を同時に検討した研究が限られている点を、取り組むべき空白として挙げています。
何を、どのように調べたか
調査は2025年11月から12月に、インドネシア・西ジャワ州カラワンのSMK Sehati Karawang(職業高校)で行われました。在籍する女子生徒600人を母集団とし、学年ごとに人数比に応じて割り当てたうえで各層から無作為に選ぶ方法で、63人が参加しました。データ収集は、構造化された質問票、身長・体重の計測、そして指先などから採る毛細血管血によるヘモグロビン測定の三つを組み合わせて行われました。ヘモグロビンは訓練を受けた保健従事者がデジタル測定器で測り、思春期女子に対するWHOの基準値をもとに判定しています。鉄剤の服用継続は、定められた観察期間中に推奨量に対してどれだけ服用したかの割合から判断されました。
この研究は横断研究、つまりある一時点の状態をまとめて観察する設計です。解析ではまずカイ二乗検定(条件によってはフィッシャーの正確検定)で各要因と貧血の関係を調べ、次に多重ロジスティック回帰を用いて、ほかの要因の影響を取り除いたうえでの関連の強さを調整オッズ比(AOR)として推定しました。オッズ比は、ある条件のもとで貧血が起きやすい度合いを比較した数値で、1より大きければそちらのほうが起きやすいことを示します。有意水準は5%、推定には95%信頼区間が添えられています。研究は倫理委員会の承認を受け、18歳未満の参加者については保護者の同意と本人の賛意を得る手続きがとられました。
報告された主な結果
63人のうち貧血と判定されたのは18人、28.6%でした。参加者の多くは15〜16歳で、栄養状態は76.2%が正常の範囲にあり、栄養に関する知識も61.9%が良好とされました。一方で、食事のパターンが良くない生徒は39.7%、鉄剤を継続して飲めていない生徒は44.4%を占めていました。著者らは、栄養状態が正常で知識も十分な生徒が多数であるにもかかわらず貧血が生じていたことから、行動面の要因、とくに食事と鉄剤の服用継続の重要性が浮かび上がると述べています。
ほかの要因を調整しない段階の解析では、食事のパターンが良くない生徒のオッズ比は4.92(95%信頼区間1.60〜15.15、p=0.009)、鉄剤を継続していない生徒では3.63(1.21〜10.86、p=0.030)と、いずれも貧血との統計的に有意な関連が示されました。身体活動、栄養状態、月経期間が7日を超えること、栄養知識については、5%水準では有意になりませんでした。
ほかの要因を調整した多変量解析では、食事のパターンが良くないことが貧血ともっとも強く関連する要因として残り(AOR=3.40、95%信頼区間1.20〜9.62、p=0.021)、次に鉄剤を継続していないこと(AOR=2.90、1.04〜8.10、p=0.041)が続きました。身体活動の少なさ、栄養状態の異常、月経期間が7日を超えること、栄養知識の不足は、調整後には貧血と独立した関連を示しませんでした。著者らは、これらが貧血に無関係だと示されたわけではなく、この研究の規模と対象の範囲では独立した関連を検出できなかったということだと説明しています。また横断研究であるため、得られたのは関連であって因果関係の証拠ではないと明記しています。
著者らはみずから挙げた限界として、一時点の観察では前後関係を判断できないこと、食事や身体活動などが質問票による自己申告であるため思い出しや報告の偏りを受けうること、単一の職業高校で標本が比較的小さいため結果を他の集団に一般化しにくいこと、そしてヘモグロビンの値だけでは鉄欠乏そのものを確定できず、血清フェリチンなどの指標があればより包括的な評価になることを述べています。
この研究が伝えること
この研究で貧血と結びついていたのは、栄養知識の有無ではなく、実際の食事の内容と鉄剤を飲み続けられているかという行動でした。著者らは、知識があっても実践には社会的・現実的な壁があり得ると述べ、学校での貧血対策について、鉄剤を配るだけで終わらせず、食事の質の改善と、服用を支える教育・声かけ・見守りの仕組みを組み合わせる必要があると論じています。同時に、横断研究から言えるのは関連であり、著者ら自身が、時間的な前後関係や仕組みを明らかにするには複数の学校を対象とした縦断的な研究と鉄の状態を測る指標が必要だと指摘しています。
著者:Ade Krisna Ginting(Universitas Sehati Indonesia, Indonesia)、Andrafikar(Poltekkes Kemenkes Padang, Indonesia)、Rina Puspita(Politeknik Bina Trada Semarang, Indonesia)、Resti Ariani(Politeknik Bina Trada Semarang, Indonesia)、Endah Sri Rahayu(Poltekkes Kemenkes jayapura, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ade Krisna Ginting, Andrafikar, Rina Puspita, et al. Factors Associated with Anemia in Adolescent Girls: An Analysis of the Role of Diet, Physical Activity and Adherence to Iron Supplements at Sehati Vocational School, Karawang. Miracle Get Journal 2026-09-11. DOI: 10.69855/mgj.v3i3.773. 原著ライセンス:CC BY.