著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Industrial Crops and Products

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

オニバス(Euryale ferox、中国名「芡実(チェンシー)」)は、薬用と栄養の両面で価値を持つ植物資源です。研究チームは、オニバス由来の食物繊維が、同じオニバス由来のデンプンにどのような影響を与えるかを調べました。

調べた食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」の二つの成分を含みます。著者らは、これらの食物繊維がデンプンの構造、流れや変形のしやすさ、熱に対する振る舞い、消化のされやすさに与える影響を検討しました。

デンプンの構造と粘りへの影響

デンプンの分子の並び方は、赤外線の吸収を測る分析(FTIR)とX線回折で調べました。FTIRは分子どうしの近い範囲での整い方を、X線回折はより広い範囲にわたる結晶の構造を捉える方法です。論文によると、食物繊維を加えるとデンプン分子の近い範囲での秩序が高まりました。一方で、結晶構造はほとんど変わりませんでした。

著者らはこの結果から、水素結合などの物理的な結びつきがデンプンと食物繊維の相互作用に関わっている可能性を考えています。こうした結びつきは、結晶の骨組みを大きく崩さずに働いているとみられます。ただし、分子レベルでの直接的な確認はまだ必要だとしています。

流れや変形のしやすさを調べるレオロジー分析も行われました。その結果、水溶性と不溶性のどちらの食物繊維も、デンプンの糊の見かけの粘度を下げました。また、糊の弾性と粘性の度合いを示す指標(粘弾性率)も低下しました。

熱特性と消化性への影響

食物繊維はデンプンの熱に対する振る舞いも変えました。デンプンが水と熱で膨らんで糊状になる現象を「糊化」といいます。論文では、この糊化が起こる温度が、加えた食物繊維の濃度に応じて変化する傾向を示したと報告されています。

著者らが特に重要な結果として挙げているのは消化性です。デンプンは消化の速さによって、すばやく消化される「易消化性デンプン」、ゆっくり消化される「遅消化性デンプン」、消化されにくい「難消化性(レジスタント)デンプン」に分けられます。食物繊維を加えると易消化性デンプンの割合が減りました。その一方で、遅消化性デンプンと難消化性デンプンの割合は増えました。研究チームはこれを、デンプンが消化されにくくなったことを示す結果と解釈しています。

研究が示すこと

この研究は、オニバスの食物繊維を同じ植物のデンプンに加えると、デンプンの粘りや熱特性、消化のされ方が変わることを示しました。著者らは、この知見がオニバスを使った機能性食品の開発や付加価値の高い利用の基礎になると述べています。そうした食品の方向性として、血糖値を上げにくい性質を持つ可能性を挙げています。

原著論文の著者・所属:Qinghua Yue(College of Food Science and Technology, Henan Key Laboratory of Grain Science and Technology, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Xunda Wang(College of Food Science and Technology, Henan Key Laboratory of Grain Science and Technology, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Meng Yuan(College of Food Science and Technology, Henan Key Laboratory of Grain Science and Technology, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)、Jiangtao Lin(College of Food Science and Technology, Henan Key Laboratory of Grain Science and Technology, Henan University of Technology, Zhengzhou 450001, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qinghua Yue, Xunda Wang, Meng Yuan, et al. Effects of Euryale ferox dietary fiber on the rheological, thermal, and digestive properties of its starch. Industrial Crops and Products 2026-07-28. DOI: 10.1016/j.indcrop.2026.123974. 原著ライセンス:CC BY.