著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Food Science and Human Wellness
ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
小麦ふすま(表皮部分)は食物繊維が豊富な素材として知られていますが、パンやケーキなどの生地に混ぜると食感がざらついたり、膨らみが悪くなったりして、製品の品質を損ねてしまうことがしばしば課題になります。そこで近年注目されているのが、ふすまを非常に細かく砕く「微粉化(マイクロナイゼーション)」という加工です。粒子を小さくすることで、食物繊維としての働きを保ちながら、食感への悪影響を減らせるのではないかと期待されています。今回紹介する研究は、この微粉化した小麦ふすまを中華まんのような「蒸しスポンジケーキ」に加えたとき、生地の性質や食感、デンプンの消化されやすさにどのような変化が起きるかを調べたものです。
研究では、粒子の大きさが異なる小麦ふすま(粗い粒子:84〜1110マイクロメートル、超微粉:19マイクロメートル)を用意し、それぞれを10%、20%、30%という異なる割合で蒸しスポンジケーキの生地に加えて比較しました。評価の対象は、生地の粘りや流動性といった物性(レオロジー)、焼き上がり後の硬さや弾力などの食感(テクスチャー)、内部の気泡やデンプンがつくる網目構造、そしてデンプンがどれだけ消化されやすいか(消化性)です。
その結果、粗い粒子のふすまを使った場合は、10%を超える添加量になると、見た目や食感、官能評価(人が食べて感じる評価)といった品質が目立って損なわれる傾向が示されました。つまり、粗いふすまは10%程度が品質を保てる上限の目安とされています。一方で、超微粉化したふすま(19マイクロメートル)では事情が異なり、添加量を10%から30%まで増やしても、硬さや弾力、総合的な好ましさ、内部の気泡構造、そしてデンプンの網目構造の状態は大きく損なわれなかったと報告されています。
さらに注目されるのは、デンプンの消化性に関する結果です。超微粉ふすまを30%加えたケーキでは、何も加えていない対照品でのデンプン消化率90.1%に対し、81.6%まで低下したとされています。加えて、消化されにくい「レジスタントスターチ」と呼ばれる成分の含有量が85.9%増加したことも示されました。これらの結果から、研究では、グルテンの形成(生地のコシ・弾力を生む仕組み)をあまり必要としない食品が、高濃度の微粉化食物繊維を運ぶ「担い手」として適している可能性が示唆されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、蒸しスポンジケーキという特定の食品を対象に、特定の条件下でふすまの粒子径と添加量を変えて品質や消化性への影響を比較したものです。デンプン消化率の低下やレジスタントスターチの増加が報告されていますが、これはあくまで実験条件下での結果であり、健康効果や栄養面での効能を直接保証するものではありません。また、ここで扱われているのは蒸しスポンジケーキという一種類の食品であり、他の食品にそのまま当てはまるかどうかは、この要旨からは判断できません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意してお読みください。
まとめ
今回紹介した研究では、小麦ふすまを超微粉化することで、粗い粒子のふすまでは難しかった高い添加量(30%)でも蒸しスポンジケーキの食感や構造を大きく損なわずに済む可能性が示されました。同時に、デンプンの消化率低下やレジスタントスターチ増加も報告されており、食物繊維を効果的に取り入れる食品づくりのヒントとなる基礎的な知見といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):小麦ふすまの微粉化:食物繊維強化蒸しスポンジケーキの品質とデンプン消化性への影響(フード・サイエンス・アンド・ヒューマン・ウェルネス・2026年04月)
原著論文の著者・所属:Yang Li(Institute of Food Science and Technology, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture, Beijing 100193, China)、Haoran Wang(College of Food Science and Engineering, Beijing University of Agriculture, Beijing 102206, China)、Bei Fan(Institute of Food Science and Technology, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture, Beijing 100193, China)、Yonghu Zhang(Shandong Yuhuang Cereals Oil and Food Co., Ltd., Linyi 276699, China)、Fengzhong Wang(Institute of Food Science and Technology, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture, Beijing 100193, China)、Lili Wang(Institute of Food Science and Technology, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Ministry of Agriculture, Beijing 100193, China)