小麦を製粉すると出る「ふすま(表皮部分)」には食物繊維が豊富に含まれていますが、食感や加工のしにくさから、麺やパンなどの小麦粉食品にはあまり活用されてきませんでした。今回、中国・鄭州にある河南工業大学食品科学技術学院などの研究グループが、小麦ふすまから食物繊維を取り出し、それを麺づくりに使った場合にドウ(生地)やデンプン、グルテンの性質、そして麺そのものの品質にどのような変化が起こるのかを調べました。

研究の方法:ふすまから3種類の食物繊維を調製

研究チームは、酸処理と酵素処理を組み合わせた方法で小麦ふすま(WB)から、総食物繊維(TDF)、水溶性食物繊維(SDF)、不溶性食物繊維(IDF)の3種類を調製しました。そのうえで、これらがデンプンやグルテンの構造・特性、そして麺の品質にどう影響するかを比較検討しています。

わかったこと:性質の違いと、麺の食感・血糖指数への影響

まず、水を保持する力(保水性)、油を保持する力(保油性)、水を吸って膨らむ力(膨潤性)は、TDF>SDF>IDF>WBの順に高いことが示されました。電子顕微鏡による観察では、SDF(水溶性食物繊維)はゆるい網目状の微細構造を持つことが確認され、また、タンパク質の構造がβターンからβシートへ、そしてスルフヒドリル基からジスルフィド結合へと変化することを促進する働きが見られました。

食物繊維を0〜15%の範囲で添加すると、デンプンが糊化し始める温度(T0)、糊化のピーク温度(Tp)、糊化が終わる温度(Tc)はいずれも有意に上昇し、一方で粘度特性と糊化エンタルピー(糊化に必要な熱量)は有意に低下しました(p<0.05)。糊化エンタルピーが最も低かったのはIDF(不溶性食物繊維)で、最小値は2.67 J/gでした。

麺そのものへの影響としては、WB(小麦ふすま)とTDF(総食物繊維)を添加すると、麺の硬さや咀嚼性(噛みごたえ)、調理損失(茹でる際に失われる成分の量)が有意に増加し、逆に引張強度(伸びにくさに関わる強度)と吸水能力は低下しました。ただし、TDFはWBと比べてこれらの変化がより穏やかであることが示されています。さらに、通常の小麦麺と比較して、食物繊維を加えた麺はレジスタントスターチ(消化されにくいデンプン)の含有量が増加し、推定血糖指数(eGI)が低下することが示され、特に15%のTDFを添加した麺は「低GI食品」に分類される水準に達したと報告されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、小麦ふすま由来の食物繊維の調製方法や添加量によって、デンプンやグルテンの構造、麺の食感・調理特性・血糖指数への影響が異なることを示したものです。研究チームは、小麦食物繊維が低GI食品の開発に使える高品質な原料になりうると述べています。ただし、これは特定の条件下で行われた一つの研究であり、今回の結果がすべての小麦粉食品や調理条件にそのまま当てはまるとは限りません。また、麺の硬さや調理損失の増加といった食感面での変化も報告されており、食物繊維の種類や添加量によって長所と短所のバランスが異なる点にも留意が必要です。

まとめ

今回の研究では、小麦ふすまから調製した食物繊維(TDF・SDF・IDF)が、デンプンの糊化特性やグルテンの構造、そして麺の食感や消化されやすさに影響を与えることが示されました。特に15%のTDF添加麺では、レジスタントスターチの増加と推定血糖指数の低下により低GI食品の基準を満たすとされており、食物繊維を活用した麺づくりの可能性を示す知見といえます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:小麦食物繊維がドウ原料および対応する麺の特性に与える影響(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・サイエンス&テクノロジー・2026年08月)