著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
フレイルとは、加齢に伴って体の予備力が低下し、転倒や入院、生活機能の低下などが起こりやすくなった状態を指します。研究チームによると、地域で暮らす高齢者の約1〜2割、入院患者では半数以上にみられるとされ、予防のために変えられる要因を見つけることが重視されています。その中でも、栄養は中心的な要因の一つと考えられています。
ただし、24時間の食事内容の聞き取りや詳しい食物摂取頻度調査は、虚弱な高齢者にとって負担が大きく、専門スタッフも必要です。そこで著者らは、食べている食品群の種類の数で表す「食事多様性スコア」に注目しました。イタリアの高齢者外来の患者を対象に、4つの質問だけで求めるこの簡便なスコアとフレイルの重さとの関連を調べました。あわせて、その関連が栄養状態によってどの程度統計的に説明されるかも検討しました。
何をどのように調べたか
研究は、ある時点の状態を調べる横断研究です。対象は、2018年1月から2024年2月までに高齢者外来で総合的な評価を受けた65歳以上の患者です。登録者1070人のうち、食事に関する4項目とフレイル評価がそろった317人を分析しました。年齢の中央値は82歳で、約74%が女性でした。
食事多様性スコアは、看護師または栄養士が聞き取りました。過去1週間に「乳製品・牛乳」「豆類・卵」「肉・魚・鶏肉」「果物・野菜」の4つの食品群をそれぞれ食べたかどうかを尋ね、食べた群の数を0〜4点で数えます。フレイルの重さは、認知機能や健康状態、生活の自立度、気分など9つの領域を評価するエドモントン・フレイル尺度(0〜17点、高いほど重い)で測りました。栄養状態は、高齢者向けの栄養評価票であるミニ栄養評価(MNA、0〜30点、低いほど栄養状態が悪い)で評価しました。
分析では、年齢・性別・体格指数(BMI)の影響を統計的に調整したうえで、スコアとフレイルの関連を調べました。さらに、栄養状態がこの関連の「橋渡し」となっているかを統計的に検討する媒介分析も行いました。
主な結果
食べている食品群が多い人ほど、フレイルは軽い傾向にありました。重度のフレイルに当たる人の割合は、食品群が2つ以下の群で38.0%、3つの群で29.7%、4つすべての群で15.1%と、段階的に低くなっていました。年齢・性別・BMIを調整した分析では、食品群が1つ増えるごとにフレイル尺度の点数が約0.6点低いという関連がみられました。一方で著者らは、このモデルで説明できるフレイルのばらつきはごく一部にすぎないと述べています。食事の多様性は、フレイルに関わる多くの要因のうち、控えめな関連を持つ一つとして捉えるべきだとしています。
媒介分析では、食事の多様性とフレイルの関連の86.2%が、MNAで測った栄養状態によって統計的に説明されました。栄養状態を考慮すると、多様性とフレイルの直接の関連は統計的に有意ではなくなりました。
食品群別にみると、4群すべてが良好な栄養状態と関連していました。調整後もフレイルの軽さと関連していたのは「豆類・卵」だけで、この群は日常生活の機能の良さとも関連していました。ただし、豆類と卵は一つの群としてまとめて尋ねたため、どちらがどれだけ寄与しているかは区別できません。「果物・野菜」には炎症や栄養の血液指標との関連がみられましたが、多重比較の補正後は有意ではなく、探索的な結果とされています。
性別に分けた分析では、女性で有意な関連がみられました。男性でも同じ方向の傾向がありましたが、有意ではありませんでした。著者らは、男性の人数が少なかったことが主な理由と考えています。性別によって関連の強さが異なるという統計的な証拠は得られませんでした。
この研究が示すこと
この研究は、4つの「はい・いいえ」の質問で求める簡便なスコアでも、高齢者外来の患者においてフレイルや栄養状態と関係する食事の情報をとらえられる可能性を示しました。著者らは、このスコアを、より詳しい栄養評価が必要な患者を見つけるための実用的な手がかりと位置づけています。
一方で、一時点の調査であるため因果関係は分かりません。フレイルが進んだ結果として、食欲の低下や飲み込み・歯の問題などで食べる食品群が減っている可能性もあります。また、栄養評価とフレイル尺度には内容が重なる部分があり、栄養状態による説明の割合が大きめに出た可能性もあります。著者らは、食事の多様性を高めればフレイルが軽くなるかどうかを判断するには、時間を追って調べる研究や介入研究が必要だとしています。
原著論文の著者・所属:Simone Perna(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences, Division of Human Nutrition, University of Milan, 27100 Milan, Italy)、Gaetan Claude Barrile(Endocrinology and Nutrition Unit, Azienda di Servizi alla Persona “Istituto Santa Margherita”, University of Pavia, 27100 Pavia, Italy)、Giuseppe Mazzola(Endocrinology and Nutrition Unit, Azienda di Servizi alla Persona “Istituto Santa Margherita”, University of Pavia, 27100 Pavia, Italy)、Mariangela Rondanelli(Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, University of Pavia, 27100 Pavia, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Simone Perna, Gaetan Claude Barrile, Giuseppe Mazzola, et al. Dietary Food-Group Diversity Is Associated with Lower Frailty Severity in Older Adults Undergoing Geriatric Outpatient Assessment. Foods 2026-07-28. DOI: 10.3390/foods15152638. 原著ライセンス:CC BY.