著者の所属・活動拠点の国は、スロバキアです。

掲載誌:Colloids and Interfaces

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

高齢になると、噛む力や好みの変化などから必要な栄養や食物繊維を十分にとりにくくなります。論文は、食物繊維の多い食品が「硬い」「パサつく」「べたつく」といった食感のために高齢者に避けられがちな点を指摘し、食べやすい食感の高繊維食品を作ることが摂取を後押しすると述べています。

そこで研究チームは、食物繊維として使われる2種類の多糖類、アラビノガラクタン(カラマツ由来)とβ-グルカン(ヒラタケ由来)に注目しました。これらにとろみ付けに使われるメチルセルロースを組み合わせ、さらに甘味料を加えて、高齢者向けの「スプーンで食べられる」安定したゲルの配合を探ることを目的としました。ゲルは噛まずに舌と上あごで押しつぶして食べられるため、食べやすい食品形態の候補になると著者らは考えています。

何を調べたか

研究チームは、多糖類とメチルセルロースの比率を変えたゲルを多数作り、甘味料として砂糖(ショ糖)と、パラチノースという糖を加えた場合の変化を調べました。パラチノースは、血糖値を上げにくいこと、口の中で発酵しにくく歯にやさしいこと、消化しやすいことを理由に選ばれています。

調べた性質は、ゲルの粘り気(粘度)、硬さやまとまりやすさなどの食感、凍結と解凍を繰り返したときに水が分離してしまう「離水」の程度、ゲル中の水の状態などです。配合の目安として、スプーンで扱える程度の形を保つ粘度(約6000ミリパスカル秒)が設定されました。著者らは、この値はあくまで配合上の目標であり、飲み込みにくさに対する臨床的な基準ではないと説明しています。

さらに、選ばれた配合にリンゴ味またはバニラ味を付け、60歳から75歳以上の65人に、見た目、香り、味、後味、全体の好ましさなどを評価してもらいました。

主な結果

アラビノガラクタンやβ-グルカンをメチルセルロースと組み合わせると、それぞれ単独の場合より粘度が大きく高まり、論文は相乗効果の可能性を示すとしています(相乗効果そのものの定量は行っていません)。粘度を保つためのメチルセルロースの効果は、アラビノガラクタンよりβ-グルカンのゲルで顕著でした。

甘味料の影響ははっきり分かれました。砂糖を10%加えると粘度が大きく下がり、たとえばβ-グルカン系のゲルでは370ミリパスカル秒まで低下しました。一方、パラチノースは比較的ゲルの構造を保ちやすく、アラビノガラクタンとメチルセルロースを2対2で混ぜたゲルに10%加えた配合は、粘度が4940ミリパスカル秒と目標の範囲に収まりました。粘度測定から、アラビノガラクタン系では2対2、β-グルカン系では3対1.6の比率が適した配合として選ばれています。

保存時の安定性にも違いが見られました。どちらのゲルも室温で2か月間は水の分離が見られませんでしたが、凍結と解凍を繰り返すと、アラビノガラクタン系のゲルではほとんど離水が起きなかったのに対し、β-グルカン系のゲルでは約35〜43%の離水が起きました。このため著者らは、アラビノガラクタン系は冷凍保存される製品に、β-グルカン系は凍らせない条件で保存する製品に向くとしています。また、パラチノースを加えると凍りにくい水の割合が増えましたが、それが凍結解凍への強さに必ずしもつながらなかったことも報告されています。

食味の評価では、香りの種類にかかわらず、アラビノガラクタン系のゲルがβ-グルカン系より全体に高い点数を得ました。ただし、すべての配合で統計的に意味のある差があったわけではありません。最も好まれたのはリンゴ味のアラビノガラクタン系ゲルで、9段階で評価したすべての項目で最高点でした。

この研究が示すこと

この研究は、食物繊維となる多糖類にメチルセルロースとパラチノースを組み合わせることで、高齢者向けのスプーンで食べられるゲルの試作品を作れることを示しました。同じ食物繊維のゲルでも、多糖類の種類によって凍結への強さや好まれ方が異なり、甘味料の選び方が食感を大きく左右することが、配合を考えるうえでの手がかりとして示されています。

原著論文の著者・所属:Miroslav Veverka(Certex, a.s., 812 37 Bratislava, Slovakia)、Melina Korčok(Institute of Food Sciences, Faculty of Biotechnology and Food Sciences, Slovak University of Agriculture in Nitra, 949 76 Nitra, Slovakia)、Peter Zajác(Institute of Food Sciences, Faculty of Biotechnology and Food Sciences, Slovak University of Agriculture in Nitra, 949 76 Nitra, Slovakia)、Peter Hlaváč(Institute of Electrical Engineering, Automation, Informatics and Physics, Faculty of Economics and Management, Slovak University of Agriculture in Nitra, 949 76 Nitra, Slovakia)、Tibor Dubaj(Faculty of Chemical and Food Technology, Slovak University of Technology, 812 37 Bratislava, Slovakia)、Vladimir Vietoris(Institute of Food Sciences, Faculty of Biotechnology and Food Sciences, Slovak University of Agriculture in Nitra, 949 76 Nitra, Slovakia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Miroslav Veverka, Melina Korčok, Peter Zajác, et al. Formulations of Beta-Glucan and Arabinogalactan Edible Gels for Elderly. Colloids and Interfaces 2026-07-28. DOI: 10.3390/colloids10040056. 原著ライセンス:CC BY.