著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Industri Inovatif Jurnal Teknik Industri

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:基準より長い工程時間の原因を探る

パーム油産業はインドネシア経済を支える重要な分野です。その下流工程の一つに「分別(フラクショネーション)」があります。分別とは、パーム油を液体成分と固体成分に分け、オレインやステアリンといった製品を作る工程です。この工程は油の投入、加熱、均一化、結晶化、保持、ろ過などの段階を経ます。そのため、どこかが基準どおりに進まないと、時間やエネルギーの無駄が生じやすくなります。

著者らが対象としたスラバヤの企業PT XYZでは、分別工程に標準の所要時間が定められています。しかし実際の所要時間はその基準を超えており、待ち時間の発生やエネルギー消費の増加につながっていました。研究チームはこの工程の流れを可視化して主な無駄を特定することを目指しました。そのうえで、所要時間とエネルギー消費を減らし、経済的にも見合う改善策を示すことを目的としました。

調べた方法:工程の流れを図にし、費用と効果を比べる

研究は事例研究として行われました。対象は、分別工程のうち結晶化装置(クリスタライザー)を使う乾式分別です。著者らは現場を直接観察し、オペレーターや監督者に聞き取りを行い、工程の所要時間を測りました。あわせて、会社の生産記録から過去の所要時間、エネルギー消費、運用コストの資料も集めました。

分析の中心は「バリューストリームマッピング」です。これは、原料が製品になるまでの流れを図に描き、価値を生む作業と生まない作業を見分ける手法です。さらに、「なぜ」を5回繰り返して無駄の根本原因を掘り下げる方法も用いました。改善案の効果は三つの視点で評価しています。一つ目は、工程全体の時間のうち価値を生む作業が占める割合で、工程サイクル効率と呼ばれます。二つ目は、設備の稼働状況、速度、品質を掛け合わせた設備の総合効率です。三つ目は、投資に対する利益や回収期間を比べる費用便益分析です。

主な結果:油の温度を保つ配管の追加で待ち時間とエネルギーが減少

約2か月の観察で、分別工程の所要時間は平均21.38時間でした。これは会社の基準より1.38時間長い値です。工程を作業の種類ごとに分けると、総時間約1,305分のうち、加工などの作業が59.87%、待機が17.66%、搬送が13.14%、検査が9.32%を占めていました。主な無駄は「待ち」でした。待ちが発生していたのは、バッファータンクや結晶化装置への油の投入、予備加熱、製品の貯蔵タンクへの移送です。その背景には、油の温度が適切に保たれていないことがありました。

根本原因の分析から、著者らは最大の要因を特定しました。予備加熱の配管に予備の経路(バイパス)がないため、バッファータンクから結晶化装置へ油を移す間に温度を設定値に保てなかったという点です。そこで研究チームは、予備加熱の配管にバイパスを追加する改善案をまとめました。油を循環させることで、温度を基準どおりに保つ狙いです。

論文の報告によると、改善後は工程サイクル効率が73.35%から76.41%に上がりました。設備の総合効率は46.02%から46.91%に上がっています。60稼働日で終えられる工程の回数も、31回から33回に増えました。観察期間の比較では、蒸気の使用量が81,680kg、電力が31,009kWh減っています。これによる費用の節約は合計約1億9,400万ルピアと報告されています。

改善に必要な投資は、鋼管、逆止弁、継手、施工費を合わせて約868万ルピアでした。経済性の評価では、投資収益率が2,138.07%、回収期間が約16.43日、費用便益比が22.38となりました。費用便益比が1を上回れば、実施する価値があると判断されます。著者らはこの結果から、改善案は導入に十分見合うと結論づけています。

研究が示す意味

この研究は、一つの工場の結晶化装置を対象にした事例分析です。工程の流れを可視化して原因をたどった結果、配管の追加という少額の投資で、待ち時間とエネルギー消費を減らせることが報告されました。著者らは、補助的な設備へのわずかな改善でも、工程の効率、設備の稼働、運用コストに大きな効果をもたらしうるとまとめています。

原著論文の著者・所属:Muh. Rafli Akbar(Teknik Industri, Institut Teknologi Adhi Tama Surabaya)、Evi Yuliawati(Teknik Industri, Institut Teknologi Adhi Tama Surabaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Muh. Rafli Akbar, Evi Yuliawati ANALISIS EFISIENSI PROSES FRAKSINASI MINYAK KELAPA SAWIT MENGGUNAKAN METODE VALUE STREAM MAPPING DAN COST BENEFIT ANALYSIS. Industri Inovatif Jurnal Teknik Industri 2026-10-12. DOI: 10.36040/industri.v16i2.20417. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。