著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

感覚頼みの値付けを数字で確かめる

小規模な飲食店では、販売価格を勘や慣習で決めることが多く、一皿あたりの原価をはっきり計算していないことがよくあります。研究チームは、インドネシア・北スマトラ州のメダン国立大学第1ゲート前で営業する鶏肉料理の屋台「アヤム・プニェット・チンディ」を対象に、一人前あたりの原価を計算しました。

論文によると、この屋台では市場の鶏肉価格が1日で1キログラムあたり4万ルピアから5万ルピアへ変わることもある一方、メニューの価格はほぼ一定です。店主は販売数を一人前単位で数えておらず、使った米の量から売上を推測しているため、1日の売上も「暇な日で約100万ルピア、忙しい日で約300万ルピア」と大まかにしか分かりません。そのため、材料費が上がったときに1万ルピアの価格で利益が出ているのかを判断しにくい状況でした。

著者らはこの問題に、管理会計の「変動原価計算」という方法を使いました。これは、作る量に応じて増減する費用(材料費など)だけを製品の原価として扱い、量に関係なくかかる固定費は一つ一つの商品に割り振らない考え方です。販売価格から一人前あたりの変動費を引いた額は「貢献利益」と呼ばれ、固定費を回収して利益を生むために使える部分を表します。研究の目的は、一人前の原価と貢献利益を求め、鶏肉価格の変化がそれらにどう影響するかを調べることでした。

店主への聞き取りから一人前の費用を計算

研究は一つの店舗を詳しく調べる記述的・質的な事例研究として行われました。2026年9月20日に店主へ半構造化インタビュー(あらかじめ用意した質問を軸に、話の流れに応じて掘り下げる聞き取り)を行い、材料の量と価格、家賃、営業時間、販売価格、1日の売上などを尋ねました。

計算では、聞き取りで金額を把握できた鶏肉、テンペ(大豆の発酵食品)、調味料を変動費としました。屋台では1日に鶏肉15キログラムを仕入れ、1キログラムを13切れに分けるため、1日に195切れを用意しています。論文は「鶏肉1切れ=一人前」と仮定し、1日の変動費を195で割って一人前あたりの費用を求めました。屋台の場所代は一度300万ルピアを払えば終身使える契約で、電気も使っていないため、場所代は日々の費用ではなく初期投資とみなし、一人前の原価には含めていません。

一人前の変動費は約3,700〜4,900ルピア

鶏肉価格は1キログラムあたり4万〜5万5000ルピアの幅で動き、1日の鶏肉代は60万〜82万5000ルピアになります。これにテンペ代約3万ルピアと調味料代約10万ルピアを加えると、一人前あたりの変動費は3,744〜4,897ルピアと報告されました。そのうち鶏肉が3,077〜4,231ルピアと大半を占め、テンペと調味料はそれぞれ約154ルピアと約513ルピアでした。

販売価格1万ルピアのアヤム・プニェットでは、一人前あたりの貢献利益は5,103〜6,256ルピアで、販売価格の51.0〜62.6%にあたります。ただし著者らは、米、油、小麦粉、クルプック(揚げせんべい)、野菜、包装の費用は聞き取りで金額が得られず計算に入っていないため、実際の貢献利益はこれより小さいと注意しています。

最大のリスクとされたのは鶏肉価格の変動です。鶏肉が1キログラムあたり1,000ルピア上がるごとに、一人前の原価は約77ルピア増えると試算されました。著者らは、この程度の変化は見落とされやすいものの、1か月積み重なると大きな額になると指摘しています。

売れ残りの影響も示されました。暇な日の売上約100万ルピアは、平均単価を1万ルピアとするとおよそ100食分にあたります。195切れ分の材料を仕入れたまま約100食しか売れなければ、売れた一食あたりの実質的な費用は7,300〜9,550ルピアに上がり、ほかの費用を引く前の残りは4万5000〜27万ルピアにとどまって、損失のおそれがあるとされました。なお、この屋台には価格の異なる他のメニューもあり、1万ルピアは全体を近似するための仮の値として使われています。

簡単な記録が値付けの判断材料になる

著者らは、変動原価計算は「毎日の材料費」「作った数」「売れた数」という簡単な記録だけで使えるため、小規模な飲食店に向いていると結論づけました。鶏肉が値上がりしたときにすぐ原価を計算し直せば、利益が減ったと感じる前に価格を見直すかどうかを判断できます。一方で、一人前の原価は、実際に売れた数を記録しなければ意味を持たないことも強調しています。

この研究は、一人の店主への一度の聞き取りに基づき、記録ではなく店主の記憶や見積もりを使っています。「1切れ=一人前」の仮定もすべてのメニューに当てはまるわけではなく、一部の費用は含まれていません。そのため著者らは、結果を一般化はできない初期的な見取り図として位置づけています。それでも、身近な屋台の数字を通じて、材料価格の小さな変動や売れ残りが一食あたりの採算にどう響くかを具体的に示した事例といえます。

原著論文の著者・所属:Rahmi, Agustia(Universitas Negeri Medan)、Caisar, Kanaia(Universitas Negeri Medan)、Sipahutar, Putri Paskah Patricia(Universitas Negeri Medan)、Lubis, Putri Kemala Dewi(Universitas Negeri Medan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rahmi, Agustia, Caisar, Kanaia, Sipahutar, Putri Paskah Patricia, et al. PENERAPAN VARIABLE COSTING DALAM MENGHITUNG HARGA POKOK PER PORSI PADA UMKM KULINER: STUDI KASUS AYAM PENYET CINDY. Pendas Jurnal Ilmiah Pendidikan Dasar 2026-10-09. DOI: 10.23969/jp.v11i04.69954. 原著ライセンス:CC BY.