著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Escalate Economics and Business Journal

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは零細・小・中規模事業者(MSME)が経済の大きな担い手です。一方で、多くの事業者は収入と支出を簡単に書き留める程度にとどまり、記録をまったく付けていない例もあると指摘されています。事業と家計のお金が混ざったままになっていることも多く、一定期間にどれだけもうかったのかを把握しにくいという課題があります。

こうした事業者でも会計の原則に沿った報告書を作れるよう、インドネシア会計士協会は小規模事業者向けの簡素な会計基準「SAK EMKM」を定めています。この基準で求められる財務報告書は、事業が持つ財産と負債の状況を示す「財政状態計算書」、期間中の収入と費用から利益を示す「損益計算書」、各数字の内容を補足する「財務諸表注記」の3種類です。

著者らは、南スマトラ州パレンバン市で南カリマンタン地方の郷土料理である焼き魚と焼き鶏を提供する飲食店を対象としました。この店で簡単な会計記録を導入し、SAK EMKMに沿った財務報告書を作れるかどうかを調べています。著者らは、伝統的な飲食業の運営実態に合わせた簡易会計の適用を検討した点に、この研究の新しさがあると述べています。

対象の店と調べ方

対象の店は2022年2月に開業し、WhatsAppやFacebookでの宣伝を通じて成長してきました。ただし、日々の売上をそのまま翌日の食材購入に回す運営を続けており、記録は仕入れと売上の伝票程度でした。取引を勘定科目ごとに分ける整理も行われておらず、店の財務状況や収入が変動する理由をつかみにくい状態でした。

研究は、数値の統計分析ではなく、状況を詳しく記述して整理する「記述的質的研究」の手法で進められました。店の事業主2名への聞き取り、店の様子の観察、売上伝票・仕入れ伝票・支払証明・経費記録などの資料収集を組み合わせ、2025年1月から12月までの1年分の取引を対象にしています。

作業では、まず取引の証拠を集め、現金、食材の在庫、売上、営業費用、固定資産、資本といった勘定科目に分類しました。続いて仕訳帳と総勘定元帳への記帳、試算表と決算の調整を順に行い、それを基に3種類の財務報告書を作成しました。

主な結果

研究チームによると、店はもともと日々の現金の出入りを記録するだけで、科目の分類がないため基準に沿った報告書を作れない状態でした。簡単な会計記録を取り入れた結果、SAK EMKMに沿った3種類の財務報告書を作成できたと報告しています。

論文が示した2025年の損益計算書では、売上は11億9885万1000ルピア、費用の合計は9億7880万2962ルピア、純利益は2億2004万8038ルピアでした。費用の内訳は、製造費用が約7億5473万ルピア、営業費用が約2億1677万ルピアで、残りは設備と車両の減価償却費です。著者らは、費用の中で特に大きいのは食材費と従業員の給与だと述べています。食材費が大きくなる理由は、品質を保つために新鮮な食材を毎日仕入れているためとされています。

2025年12月末時点の財政状態計算書では、資産合計は2億4935万7038ルピアで、その大部分は現金でした。借入などの負債はなく、資産はすべて店主の出資とその年の利益から私的な引き出しを差し引いた自己資本でまかなわれていると報告されています。

著者らは、報告書の作成によって店の財務情報が体系的で分かりやすくなったと述べています。店主も事業と個人のお金を分ける利点を理解し始め、売上・費用・純利益を以前より正確に分析しやすくなったといいます。

この研究が示すこと

この研究は、伝統的な飲食業を営む一つの小さな店でも、簡単な記録の積み重ねから基準に沿った財務報告書を作れることを、具体的な事例として示しています。著者らは、SAK EMKMは大規模な事業向けのものではなく、零細事業者にも適用できると述べています。一方で、分析は対象期間の資料と取引に限られており、デジタルの記帳システムや財務指標を使った分析は扱っていないことも明記しています。整理された数字は、店主が自分の事業の状態を把握し、判断するための土台になり得るというのが、この研究から伝わる主なメッセージです。

原著論文の著者・所属:Adinda Saputri(Sriwijaya State Polytechnic)、Neneng Miskiyah(Sriwijaya State Polytechnic)、Rizal Afif Abdullah Napitupulu(Sriwijaya State Polytechnic)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adinda Saputri, Neneng Miskiyah, Rizal Afif Abdullah Napitupulu Preparation of Financial Statements Based on SAK EMKM for the Banjar-Style Grilled Fish and Chicken MSME in Palembang. Escalate Economics and Business Journal 2026-09-21. DOI: 10.61536/escalate.v4i02.626. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。