この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を目的とした研究か

わさびソースなどの調味料では、容器が膨らんだり中身からガスが出たりする不具合が起こることがあります。原著の著者らは、これを微生物がガスを出すことによる品質不良としてとらえ、調味料業界にとって差し迫った課題だと述べています。ガスの発生は製品の品質を大きく損ない、食品安全上の問題につながる可能性もあるためです。

そこで研究チームは、賞味期限内にガスが発生したわさびソースで品質にどのような変化が起きるのかを調べ、その原因となるガス産生菌を分離・同定し、さらにその増殖を抑える有効な方法を示すことを目的として研究を行いました。

分離された菌と、その性質

著者らは酸素のない状態(嫌気条件)でガスを出す腐敗微生物を取り出し、これをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)のQJL3という菌株であると同定しました。ガスを出す原因が特定の菌株にまでしぼり込まれたことになります。

報告によれば、この菌株は高い塩分濃度とある程度の熱に耐える一方、強い酸性の条件には弱いという性質を持っていました。具体的には、4℃と55℃で10分間処理したあとも生き残ることができ、pH3.8という低い(酸性の強い)条件でも生育しました。ただし塩分濃度が14%になると増殖は完全に抑えられたと述べられています。

増殖を抑える条件についての報告

続いて著者らは、この菌の増殖を抑える条件を調べました。培養に用いた液体培地(酵母エキス・ペプトン・ブドウ糖・アデニンを含む培地)では、塩分濃度が8%に達すると、B. licheniformis QJL3の増殖を効果的に抑えられたと報告しています。

また、食品の保存料として使われるソルビン酸カリウムについては、増殖を抑えるのに必要な最小の濃度(最小阻害濃度)が0.2mg/mLであったとしています。これらはいずれも培地を用いた実験で得られた値として示されたものです。

この報告が示すこと

原著は、これらの結果がわさびソースの製造者にとって、的をしぼった微生物管理の手立てを講じるうえで有用な手がかりになり、製品の安定性の向上と食品安全の確保につながる知見だと述べています。ガス発生という目に見える不具合の背後にいる菌を特定し、その菌が何に強く何に弱いかを整理したこと自体が、対策を考える出発点になるという位置づけです。

著者:Xiao Liu(Linyi University Linyi China)、Hong Li(China National Accreditation Service for Conformity Assessment Beijing China)、Qin-Guo Xu(Shandong Executive Chef Food Co., Ltd Linyi China)、Weiwei Wu(China National Accreditation Service for Conformity Assessment Beijing China)、Qingdian Han(Linyi University Linyi China)、Yun‐Guo Liu(Linyi University Linyi China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiao Liu, Hong Li, Qin-Guo Xu, et al. Isolation and Identification of Gas‐Producing Spoilage Bacteria in Wasabi Sauce and Effective Methods for Controlling Their Growth. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.71750. 原著ライセンス:CC BY.