著者の所属・活動拠点の国は、ニュージーランドです。

掲載誌:JGH Open

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

炎症性腸疾患(IBD)は、消化管に慢性的な炎症が続く病気の総称で、主にクローン病と潰瘍性大腸炎が含まれます。患者数は世界的に増えており、論文によると、ニュージーランドのカンタベリー地方では約150人に1人がIBDを抱え、世界でも有病率が特に高い地域の一つとされています。

IBDの発症や経過には食事が関わると考えられています。ただし、栄養素は一品ずつではなく、毎日の食事全体の組み合わせとして働きます。そのため、個々の食品ではなく「どのような食べ方をしているか」という食事パターンを調べることが重要だと著者らは述べています。一方で、ニュージーランドのIBD患者の食事パターンや食品の選び方については、データが限られていました。

そこで研究チームは、ニュージーランドのIBDの成人がどのような食事パターンをとり、どのような食品を選んでいるかを明らかにすることを主な目的としました。あわせて、食事パターンと、本人が評価した病気の活動度や健康関連の生活の質(QOL)との関連も調べました。

調査の方法

研究チームは2025年7月から9月にかけて、ニュージーランドに住むIBDの成人を対象にオンライン調査を行いました。参加者は患者団体のソーシャルメディアやニュースレターを通じて募集されました。回答した224人のうち、不完全な回答を除く205人を分析しています。内訳はクローン病が107人、潰瘍性大腸炎または分類不能型IBDが98人でした。参加者の87%は女性でした。

食事は、ニュージーランドで開発・検証された食物摂取頻度調査票を使って、過去3か月に109品目をどのくらいの頻度と量で食べたかを尋ねました。病気の活動度はクローン病と潰瘍性大腸炎それぞれの簡易指標で、生活の質は症状・日常機能・病気への不安・全体的な健康感の4項目で本人が評価しました。いずれも自己申告に基づくデータです。

食事パターンの特定には、主成分分析という統計手法が使われました。これは、一緒に食べられやすい食品のまとまりをデータから見つけ出す方法です。さらに、症状を悪化させる、または和らげると感じる食品や飲み物を自由記述で尋ね、多く挙がったものを集計しました。

主な結果

分析の結果、参加者の食事は6つのパターンに分かれました。主なものは、脂肪や糖分の多い食品が中心の「西洋型」、菜食型、魚を中心とするペスカタリアン型です。ほかに、それらに近い「準」菜食型や「準」ペスカタリアン型、低炭水化物型も見られました。

クローン病の人では、服薬、併存疾患、体格指数を考慮しても、西洋型の食事パターンは中程度の病気の活動度と関連していました。このパターンの人が中程度の活動度に当てはまるオッズ(起こりやすさの比)は約4.6倍でした。反対に、菜食型と準菜食型のパターンの人では、中程度の活動度に当てはまるオッズが約3分の1でした。

潰瘍性大腸炎・分類不能型の人では、西洋型(約3.5倍)と準ペスカタリアン型(約3.5倍)のパターンが、病気が活動期にあることと関連していました。ペスカタリアン型、菜食型、低炭水化物型では、病気の活動度との関連は見られませんでした。

生活の質については、病型と体格指数を考慮したうえで、西洋型と準ペスカタリアン型のパターンが、より低い生活の質と関連していました。菜食型と低炭水化物型では関連は認められませんでした。

症状を悪化させると挙げられた食品で多かったのは、緑の葉物野菜、タマネギやニンニクなどのネギ類、乳製品でした。飲み物ではアルコールが最も多く挙げられました。症状を和らげるものとしては、マッシュポテトが最も多く、次いで米などが挙がりました。飲み物ではハーブティーと水がよく挙げられました。

研究が示すこと

この研究は、ニュージーランドのIBD患者の食事パターンが一様ではないことを示しました。また、西洋型の食べ方が病気の活動度の高さや生活の質の低さと関連し、菜食的な食べ方はクローン病で活動度の低さと関連していたことを報告しています。多くの患者が、自分の症状に影響する食品や飲み物を意識していることも分かりました。

ただし、この調査はある一時点の状況を調べたもので、食事が病状を変えたという因果関係を示すものではありません。データはすべて自己申告で、参加者の大半が女性であり、人数も比較的少ないことを著者らは限界として挙げています。著者らは、こうした知見が臨床医や栄養士による栄養教育や個別の食事計画づくりに役立つ可能性があるとしています。そのうえで、特定の食べ方に偏ることで栄養不足が生じないよう、専門家による定期的な確認が望ましいとも述べています。

原著論文の著者・所属:Peter Vivian Acire(Department of Paediatrics and Child Health University of Otago Christchurch Christchurch New Zealand)、Angharad Vernon‐Roberts(Department of Paediatrics and Child Health University of Otago Christchurch Christchurch New Zealand)、Andrew S. Day(Department of Paediatrics and Child Health University of Otago Christchurch Christchurch New Zealand)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Peter Vivian Acire, Angharad Vernon‐Roberts, Andrew S. Day. Dietary Patterns and Food Choices of Adults With Inflammatory Bowel Disease in New Zealand. JGH Open 2026-08-01. DOI: 10.1002/jgh3.70457. 原著ライセンス:CC BY.