著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:Life Sciences Medicine and Biomedicine

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

メタボリックシンドロームは、腹部肥満、血中脂質の異常、高血圧、血糖の異常などが重なった状態で、心血管疾患や2型糖尿病のリスクを高めるとされています。マレーシアでは2023年の全国調査で成人の35.9%が該当すると報告されており、公衆衛生上の課題になっています。

食事と健康の研究では、個々の栄養素だけでなく、食品の組み合わせ全体を「食事パターン」として捉える方法が広がっています。著者らによると、マレーシアの成人を対象としたこれまでの研究では、食品同士の相関だけから食事パターンを導く手法が主に使われてきました。そこで研究チームは、健康指標と関係しそうな栄養素の指標をあらかじめ設定し、それをよく説明する食品の組み合わせを探す「縮小ランク回帰」という統計手法を用いました。45歳以上のマレーシア人を対象に、この手法で導いた食事パターンとメタボリックシンドロームおよびその構成要素との関連を調べることが目的です。著者らは、この年代のマレーシア人を対象に同様の分析を行った研究は、知る限りこれまでなかったとしています。

調べた方法

研究は、骨の健康を調べるために2016年から2018年に集められたデータを改めて分析した横断研究です。対象は、セランゴール州のプチョン、スルダン、カジャンの3都市で、選挙人名簿から層別無作為抽出された45歳以上の230人(男性89人、女性141人)でした。民族構成は中国系59%、マレー系22%、インド系19%です。

食事は、126品目について普段の摂取頻度と量を尋ねる質問票で調べ、13の食品群にまとめました。縮小ランク回帰では、食事のエネルギー密度(食品の重さ当たりのエネルギー量)、食物繊維、脂肪からのエネルギー、遊離糖の割合という、これまでメタボリックシンドロームとの関連が指摘されてきた4つの指標を説明する食事パターンを求めました。メタボリックシンドロームは国際的な共同基準に従い、腹囲、中性脂肪、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)、血圧、空腹時血糖の5項目のうち3項目以上が基準に該当する場合と定義されました。分析では年齢、性別、民族、喫煙の影響を考慮しました。

主な結果

参加者の31%がメタボリックシンドロームに該当しました。縮小ランク回帰で得られた第1の食事パターンは、4つの指標のばらつきの58%を説明し、脂肪・食物繊維・糖の割合が高く、エネルギー密度が低いという特徴を持っていました。このパターンには豆類と調味料が最も大きく寄与し、甘味飲料、果物、乳製品なども中程度に関わる一方、穀類はこのパターンと逆向きの関係にありました。著者らは、伝統的な植物性食品と糖分の多い食品が混在したパターンだと説明しています。

女性では、このパターンへの当てはまりが強いほど腹囲が大きい傾向があり、この関連は年齢などを考慮した後も見られました。体格指数(BMI)が高い傾向も報告されています。また、パターンへの当てはまりが最も強い3分の1の女性は、最も弱い3分の1の女性に比べて、空腹時血糖が高い状態に該当するオッズ(起こりやすさの指標)が約3.2倍高く、HDLコレステロールが低い状態に該当するオッズは約0.27倍と低くなっていました。男性ではこうした有意な関連は見られず、メタボリックシンドロームそのものとの有意な関連も示されませんでした。

研究が示すこと

この研究では、同じ一つの食事パターンが、女性において血糖の高さや腹部の肥満というリスク側の指標と、HDLコレステロールが低くなりにくいという好ましい側の指標の両方と関連していました。著者らは、豆類や果物のように食物繊維の多い食品と、甘味飲料のように糖分の多い食品が同じパターンに含まれていることが、こうした相反する関連の背景にある可能性を論じています。

なお、これはある時点のデータを分析した横断研究であり、示されたのは食事パターンと健康指標の関連で、因果関係を確かめたものではありません。それでも、食品の組み合わせ全体を見ることで、単純に「良い」「悪い」と分けられない食事の姿と、性別による違いが浮かび上がることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Mona Yehia Hobbi(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Geeta Appannah(Division of Nutrition, Dietetics and Food Science, School of Health Sciences, IMU University, 57000 Kuala Lumpur, Malaysia)、Subashini Chellappah Thambiah(Department of Pathology, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Swan Sim Yeap(Puchong Specialist Centre, 47100 Puchong, Selangor, Malaysia)、Intan Nureslyna Samsudin(Department of Pathology, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Salmiah Md-Said(Department of Community Health, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Nurzalinda Zalbahar(Department of Nutrition, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Siti Yazmin Zahari-Sham(Department of Pathology, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)、Fen Lee Hew(Puchong Specialist Centre, 47100 Puchong, Selangor, Malaysia)、Subapriya Suppiah(Department of Radiology, Faculty of Medicine and Health Sciences, Universiti Putra Malaysia, 43400 Serdang, Selangor, Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mona Yehia Hobbi, Geeta Appannah, Subashini Chellappah Thambiah, et al. Dietary patterns derived from reduced rank regression and their associations with metabolic syndrome in middle-aged and older adults: A cross-sectional study in Selangor, Malaysia. Life Sciences Medicine and Biomedicine 2026-07-31. DOI: 10.28916/lsmb.10.1.2026.244. 原著ライセンス:CC BY.