著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:PERSPECTIVES IN MEDICAL RESEARCH

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

糖尿病や高血圧、心血管疾患、がんなど、感染によらず長い経過をたどる病気は「非感染性疾患(NCD)」と呼ばれます。著者らによると、インドではこうした病気が死亡の6割以上を占め、特に都市部で増えています。その背景の一つとして、論文は伝統的な雑穀などの穀物から、精白米や精製小麦への食生活の移り変わりを挙げています。

ミレットは、ソルガム、トウジンビエ、シコクビエ、アワなどの総称です。かつてはインド各地で主食として食べられていました。論文は先行研究をもとに、ミレットが精製穀物より食物繊維やミネラルを多く含むこと、血糖値の上がり方が比較的緩やかであることを紹介しています。インド政府はミレットの普及を進めてきましたが、都市部での消費は依然として少ないままです。

そこで研究チームは、都市に住む成人がミレットの健康上の利点やNCD予防との関わりをどの程度知っているか、ミレットを食べることをどう捉えているか、日常的に食べる妨げになっているのは何かを調べました。

調査の方法

調査地は、テランガーナ州のガンディー医科大学が地域医療の実習に使っている都市部の地区です。2026年1〜2月に、18歳以上の住民110人を対象とする横断研究を行いました。横断研究とは、ある一時点の状態を調べる方法です。世帯名簿から一定の間隔で世帯を選び、各世帯で1人に対面で聞き取りをしました。

質問票は「はい・いいえ」で答える22項目からなります。内容は、ミレットの栄養や健康上の利点への認知、ミレットに対する態度、現在の食習慣、食べる上での障壁、そしてミレットとNCD予防の関わりについての知識です。回答は集計され、頻度と割合で示されました。また、調査時点で何らかのNCDの治療を受けていると答えた人を「NCDあり」としました。

主な結果

参加者の平均年齢は約40歳で、56.4%が女性でした。何らかのNCDの治療を受けていると答えた人は28.2%(31人)でした。

ミレットへの認知は全体として高い結果でした。「ミレットは栄養のある穀物だ」と知っていた人は76.4%、「糖尿病の管理に役立つ」は72.7%、「米より食物繊維が多い」は70.0%でした。一方、血圧の管理に役立つこと(57.3%)や、コレステロールを下げること(55.5%)を知っていた人はやや少数でした。ミレットとNCD予防の関わりについての知識は、「良好」が51.9%、「中程度」が36.2%、「不十分」が11.9%でした。

態度については、参加者全員が「ミレットは健康に良い」と答えました。ところが、ミレット料理の味を好むと答えた人は35.5%にとどまりました。それでも、80%は日常の食事にミレットを取り入れる意思があると答えています。

障壁として多く挙がったのは、調理に時間がかかる・手間がかかる(56.4%)、米を食べる習慣など食文化や慣れ(53.6%)、調理法やレシピを知らない(51.8%)、米や小麦に比べて高い(50.0%)でした。家族が味や食感を好まない(44.5%)、地元の市場で手に入りにくい(41.8%)という回答もありました。

研究が示すこと

著者らは、都市の成人の多くがミレットを健康に良い食品と認識し、取り入れる意欲も持っている一方で、調理の手間、食習慣、価格、家族の好みといった現実的な障壁が日常的な摂取を妨げていると結論づけています。知識と実際の食生活の間にはずれがある、というのが論文の主なメッセージです。

研究チームは、調理実演を含む栄養教育や、手軽なミレット食品の開発、入手しやすさや価格を改善する施策が、このずれを埋める助けになり得ると述べています。なお、この研究は1地区での一時点の聞き取り調査です。実際の摂取量は測っておらず、認知と摂取の因果関係を示すものではないことも、著者ら自身が限界として挙げています。

原著論文の著者・所属:Srilekha Mallannagari(Junior resident , MD Community Medicine ,)、A Rajitha(Assistant professor, Community medicine , Gandhi Medical College , Secunderabad , Telangana , India)、Vyshnavi Bujagowni(Junior resident , MD Community Medicine ,)、Tulasi Bai(Junior resident , MD Community Medicine ,)、Sriram Chowhan Lavudi

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Srilekha Mallannagari, A Rajitha, Vyshnavi Bujagowni, et al. Awareness, Attitudes, and Barriers toward Millet Consumption and Its Role in Prevention and Control of Noncommunicable Diseases among Urban Adults in Hyderabad, India. PERSPECTIVES IN MEDICAL RESEARCH 2026-08-04. DOI: 10.47799/pimr.1402.26.10. 原著ライセンス:CC BY.