著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Pengabdian Masyarakat - PIMAS
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
インドネシアでは2025年1月から、国家栄養庁(BGN)の調整のもとで無償栄養給食プログラム(MBG)が始まりました。論文によると、学齢期の子ども、寄宿制宗教学校の生徒、乳幼児、妊婦などを対象に8,290万人への提供を目標とし、2026年の予算は223兆ルピアに達するとされています。背景には、低下傾向にあるとはいえ依然として高い子どもの発育阻害(スタンティング)の割合があります。
現行の仕組みでは、栄養充足サービス単位(SPPG)と呼ばれる給食調理拠点が食事を作り、業者を通じて学校へ届けます。著者らは報道や関係機関の報告を引用し、この中央集権的な運営に深刻な問題が生じていると指摘しています。2025年末までに2万件を超える食中毒事例と2人の死亡が報告されたこと、配送の慢性的な遅れ、栄養基準を下回る食事、栄養状態の良い都市部に偏った配分、そして本来の役割と関係のない機関や関係者が絡む汚職の疑いなどです。
こうした状況を受け、この論文は、給食の運営を学校単位に移す分散型モデルを設計し、提案することを目的としています。
どのように検討したか
研究チームは質的な手法を用い、実際の導入を想定してモデルを組み立てる「想定事例研究」という形で検討しました。まず、現行のSPPG方式と提案する学校単位方式を、流通段階の数、第三者の関与、利害の衝突が起きる可能性、費用対効果、食品汚染のリスクといった観点で比較しました。
あわせて、過去10年に発表された国内外の学術誌論文30本と、政府機関や国際機関の公式資料を体系的に調べました。そのうえで、敷地約1,000平方メートル、半径5キロ以内に地元の仕入れ先があり、児童数100〜300人、清潔な水を確保できる農村部などの小学校1校を想定し、日々の運営手順を具体的に描いた試案を作成しています。
参考にした海外の例として、ブラジルの学校給食制度(地元の家族農家からの調達を義務づけている)、日本の学校給食、インドの給食制度、地元の農業と学校給食を結びつける国際的な取り組みなどが挙げられています。
提案されたモデルの中身
モデルは三つの柱からなります。第一に、すべてのSPPGを6か月かけて段階的に廃止することです。最初の2か月で新設を停止して既存契約を独立した評価チームが審査し、次の2か月で食品安全基準を満たさない契約を打ち切り、使える調理施設は学校の協力厨房に転用します。最後の2か月で全SPPGを閉鎖するという工程が示されています。
第二に、資金を国家栄養庁から学校の口座へ仲介者なしで直接送ることです。学校の準備が整わない場合は、確認済みの保護者口座へ送る案も示されています。第三に、軍、警察、地方政府、省庁、地方行政の各部局、地域の町内組織などを、資金管理や配送、監督から外すことです。ただし、町内会長による申請時の住民確認だけは例外として認めています。
学校での運営は次のように描かれています。前日に学校委員会と保護者代表が国の栄養基準に沿って献立を作り、実際に出席する児童数をもとに量を決めます。当日は早朝から当番の保護者3〜5人以上が校内の厨房で調理し、児童は自分の食器を持参して、温かいうちに盛り付けられた食事を教員や保護者と一緒に食べます。片付けの後、保護者が当日の報告をオンラインで提出します。
食材は地元の農家や商人5〜10者以上を登録し、週ごとや月ごとに順番で仕入れる輪番制にして、独占や価格の水増しを防ぐとしています。監視は、学校委員会による週1回以上の抜き打ち点検と、保護者による毎日の立ち会いの二重体制とし、月次報告を国家栄養庁へ送るとともに学校の掲示板にも張り出します。
論文は、現行方式で食中毒の原因として挙げられた点、たとえば4日前の食材購入、提供の最大12時間前からの調理、長時間の保存や温度管理のない輸送などに対し、提案モデルでは当日か前日の仕入れ、校内での調理、保存や長距離配送をなくすことで対応すると整理しています。
研究が示すこと
著者らは、このモデルによって汚染リスクを大きく減らせる可能性があるほか、SPPGの運営費や業者の上乗せをなくすことで現状より30〜40%の予算効率化が見込めるとしています。さらに、構造的な汚職の機会を減らし、地元経済を支え、学校・教員・保護者・児童が給食を自分たちのものと感じられるようになることも期待されると述べています。ただし、これらは実施結果ではなく、設計と文献に基づいて著者らが想定した効果です。
そのため論文は、農村部などの20〜30校で少なくとも6か月の試験導入を行い、モデルの有効性を確かめることを主な提言としています。あわせて、法制度の整備、住民登録と連動したオンライン申請の仕組み、学校向けの栄養・衛生・会計の研修も提言しています。
この研究は、大規模な給食事業で起きた問題を、調理と配送の距離、資金の流れ、監視する人の位置という仕組みの面から捉え直し、受益者に近い場所へ運営を移すという具体的な代案を示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Cahyo Wibowo(Universitas Mpu Tantular)、Muhammad Muryanto(Universitas Muhammadiyah Purwokerto)、Saeful Rofi Romadhon(Universitas Muhammadiyah Brebes)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cahyo Wibowo, Muhammad Muryanto, Saeful Rofi Romadhon Model Desentralisasi Program Makan Bergizi Gratis (MBG) Berbasis Sekolah: Memangkas Rantai Pasok dan Mencegah Penyelewengan. Jurnal Pengabdian Masyarakat - PIMAS 2026-08-03. DOI: 10.35960/pimas.v5i3.2671. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。