著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Journal of Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられがちな部分をクッキーに生かす
アーティチョークは世界で広く栽培・消費される野菜です。論文によれば、加工の過程で得られる原料の約80〜85%は副産物となります。こうした食品副産物は通常そのまま食用にはされず、廃棄物として扱われることが多いとされています。主な副産物の一つが、つぼみを包む「苞(ほう)」と呼ばれる部分です。苞も食べる部分と同じく、抗酸化作用をもつ成分を豊富に含むことが知られています。
一方、クッキーは油脂と小麦粉を主な材料とする身近な焼き菓子です。著者らは、これまでアーティチョークの苞をパンやクッキーなどに加える研究はあったものの、油脂と小麦粉の両方の代わりとして同時に使った例は見当たらないと指摘しています。そこで研究チームは、乾燥させて粉末にした苞を油脂と小麦粉の一部に置き換えたクッキーを作り、品質や栄養成分がどう変わるかを調べ、最も望ましい配合を探りました。
どのように調べたか
研究チームは、アーティチョークの苞を50℃で乾燥させてから細かく粉砕し、クッキー生地に加えました。油脂(マーガリン)の置き換え率と小麦粉の置き換え率を、それぞれ0%から30%の範囲で組み合わせた13通りの試作を行っています。配合の組み合わせを効率よく決め、結果から最適な条件を統計的に予測する「応答曲面法」という手法を用いました。
焼き上がったクッキーについては、水分量、焼成中に失われた重さ、焼いたときの広がり具合、硬さや割れやすさ、表面の色、フェノール化合物(ポリフェノール類を含む、植物に多く見られる成分の総称)の総量、抗酸化活性(試験管内の化学的な測定法で調べた、ラジカルを消去する能力)を測定しました。さらに63人のパネリストが、色、食感、風味、総合的な好ましさを9段階で評価しました。
主な結果
論文によると、苞の置き換え率が高くなるほどクッキーの水分量は増え、苞を使わない対照の9.40%から、油脂と小麦粉をともに30%置き換えたものでは13.09%になりました。著者らは、繊維を多く含む苞が水を保持しやすいためと説明しています。反対に、焼成中に失われる重さや、焼いたときの横への広がり具合は小さくなり、クッキーは硬く、割れやすくなりました。硬さは対照の29.03ニュートンから、両方30%置き換えでは45.01ニュートンに上がっています。色は全体に暗くなりました。
フェノール化合物の総量は、対照の1グラムあたり0.22ミリグラム(没食子酸換算)から、両方30%置き換えでは1.27ミリグラムに増えました。抗酸化活性も同様の傾向を示し、1グラムあたり0.58から5.03マイクロモル(トロロックス換算)に上がったと報告されています。
官能評価では、色の評価は置き換え率が高いほど上がりました。一方、食感は油脂と小麦粉をそれぞれ15%置き換えたものが最も高く(7.49点)、30%まで増やすと評価が下がりました(両方30%で6.52点)。15%ずつ置き換えたクッキーは、風味と総合的な好ましさでも対照を上回ったとされています。
これらの結果をもとに最適化した結果、最も望ましい配合は油脂の置き換え率14.26%、小麦粉の置き換え率23.74%と算出されました。この配合で行った5回の確認実験では、予測値と実測値の間に統計的に有意な差は見られませんでした。最適配合のクッキーは対照と比べて、灰分(ミネラル分の目安)が100グラムあたり0.82グラムから1.88グラムに増え、食物繊維量も有意に増えて100グラムあたり10.14グラムでした。たんぱく質量には有意な差がありませんでした。
研究が示すこと
著者らは、最適配合のクッキーの食物繊維量が、EUの規則で「高食物繊維」と表示できる基準(100グラムあたり6グラム以上)を満たしていると述べています。また、官能評価でも最適配合のクッキーは対照より受け入れられやすかったと報告しています。
この研究は、廃棄されがちなアーティチョークの苞が、クッキーの油脂と小麦粉の一部を同時に置き換える材料として使えることを示しました。著者らは、食感や色などの性質は変化するものの、食品副産物を有効に活用しながら焼き菓子の栄養面の特徴を高める一つの方法になりうると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Ceyda Dadalı(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering Ege University İzmir Türkiye)、Yağmur Özcan(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering Ege University İzmir Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ceyda Dadalı, Yağmur Özcan. Valorization of Artichoke Bracts as a Simultaneous Fat and Wheat Flour Substitute in Cookies. Journal of Food Science 2026-08-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71357. 原著ライセンス:CC BY.