著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。
掲載誌:Toxicology reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC
研究の背景と目的
一般に、汚染された水を灌漑に使うと、微量元素が食物連鎖を通じて移り、人の健康に悪影響を及ぼすおそれがあると指摘されています。研究チームはこうした問題意識のもと、南アフリカ・リンポポ州レファラレのモコロ川水系で、水、堆積物、土壌、野菜に含まれる微量元素の濃度を調べ、食事を通じた摂取による健康リスクを評価しました。
何をどのように調べたか
著者らは、モコロ川水系から水、川底の堆積物、土壌、野菜の試料を採取しました。試料は前処理と分解を行ったうえで、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)と誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)という、ごく微量の元素まで測定できる分析法で濃度を定量しました。
分析の正確さを確かめるため、天然水、トマトの葉、土壌について成分量があらかじめ分かっている標準物質も分析しました。論文によると、標準物質の値がどれだけ正しく再現されたかを示す回収率は許容範囲内でした。
さらに研究チームは、大人と子どもそれぞれについて健康リスクを評価しました。がん以外の健康影響の目安としてTHQとHI(複数の元素の影響を合算した指標)を、がんのリスクの目安として生涯にわたる発がんリスクの増加分を表すILCRを用いています。
主な結果
論文が報告した微量元素の濃度範囲は、水で1リットルあたり0.00120〜13.5マイクログラム、堆積物で1グラムあたり0.0169〜157マイクログラム、土壌で1グラムあたり0.0890〜94.1マイクログラム、野菜で1グラムあたり0.00420〜54.7マイクログラムでした。
特にニッケル、鉛、クロム、カドミウムで高い濃度が見られ、国際的に定められた基準値をしばしば上回っていたと著者らは報告しています。
健康リスクの評価では、THQとHIの値が大人と子どものいずれでも1を超えました。研究チームは、これを食事を通じた摂取によって、がん以外の健康リスクが生じる可能性を示すものとしています。また、ILCRは特にクロムと鉛で高い値を示し、推定されるリスクは一貫して大人より子どもで高くなっていました。
研究が示すこと
著者らは、この結果が農業システムにおける微量元素の蓄積のリスクと、それが人の健康に及ぼしうる影響を浮き彫りにしているとしています。そのうえで、汚染を抑えて摂取リスクを減らすため、継続的な監視と適切な管理策を提言しています。
原著論文の著者・所属:Dikotla PR(Department of Chemical Sciences, Faculty of Science, University of Johannesburg, P.O. Box 524, Auckland Park, Johannesburg, 2006, South Africa.)、Ambushe AA(Department of Chemical Sciences, Faculty of Science, University of Johannesburg, P.O. Box 524, Auckland Park, Johannesburg, 2006, South Africa.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dikotla PR, Ambushe AA. Human health risk assessment of selected trace elements in water-soil-vegetables system in Lephalale, Limpopo province, South Africa. Toxicology reports 2026-10-15. DOI: 10.1016/j.toxrep.2026.102357. 原著ライセンス:CC BY.