著者の所属・活動拠点の国は、南アフリカです。
掲載誌:Tropical Animal Health and Production
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
動物福祉、つまり飼育される動物の健康と心の状態の良さについての考え方は、過去50年ほどで大きく広がりました。以前は体の健康が中心でしたが、現在は心の健康や自然な行動ができるかどうかも含めて考えられています。家畜の福祉をめぐっては、消費者が生産現場から遠ざかって知識が不足しがちなことも、人々の受け止め方に影響するとされています。
ダチョウは公式には家禽(ニワトリなどと同じ鳥類の家畜)に分類されています。著者らは、この分類のせいで、高密度飼育やケージ飼いといった一般的な養鶏のイメージと結び付けられ、実際の飼い方とは違う印象を持たれるおそれがあると指摘しています。
そこで研究チームは、世界でも大規模なダチョウ産業を持つ南アフリカで、一般の消費者と産業関係者がダチョウ産業をどう見ているかを調べました。調査の柱は、生産方法についての知識、ダチョウの福祉への認識、購買行動、飼育方法に関する希望の四つです。著者らは、ダチョウ産業は他の畜産業より多くの人にとってなじみが薄く、その知識の程度が福祉に対する意見に影響するのではないかという仮説を立てていました。
どのように調べたか
研究チームは2018年9月から2019年9月にかけて、アフリカーンス語と英語の質問票を全国に配布しました。オンラインのほかに紙の質問票も使い、ダチョウ飼育が盛んな西ケープ州の地域では農家の会合でも回答を募りました。
質問票は、動物福祉評価の枠組みで使われる「適切な給餌」「適切な飼育環境」「良好な健康」「適切な行動」の四原則を土台に作られました。回答は「まったく当てはまらない」から「とても当てはまる」のような5段階で記録されています。
回答者は302人で、内訳は消費者175人、獣医師や加工業者などの関連する関係者96人、ダチョウ農家31人でした。研究チームは、多くの質問への回答をまとめて少数の傾向に整理する「主成分分析」という統計手法を使い、さらに回答者の属性によって傾向に違いがあるかを比べました。
主な結果
回答者全体では、ダチョウの飼育方法についての知識は、自己評価で「限られている」から「平均的」程度にとどまりました。5段階の平均点は2.41〜2.85でした。一方、餌・水・飼育環境・健康といった基本的な必要を満たすことの重要性は4.11〜4.71と高く評価されました。ストレスや痛みを抑えることも重視され、自然な行動ができることや自由に動けることも比較的重要だと考えられていました。
飼育管理では、飼育係の技能、病気やけがをした個体の隔離、こまめな目視確認、予防医療などが重要視されました。また、ダチョウ生産のための正式な福祉基準を設けることも、比較的重要だと評価されています。
購買行動では、回答者は福祉に配慮した製品をそうでない製品より好む傾向を示しました(平均3.92)。ただし、そのために割高な代金を払う意思はやや低くなりました(平均3.61)。論文は、福祉を大切だと考える気持ちが、必ずしも購買に結び付くとは限らないという「態度と行動のずれ」がここに表れていると述べています。
主成分分析では、回答の傾向が三つにまとめられました。「ダチョウの福祉で何を優先するか」「ダチョウの生産と管理についての知識」「ダチョウ飼育における健康と倫理への配慮」です。このうち知識の傾向は、回答者の立場によってはっきり違いました。農家が最も高く、関係者がそれに続き、消費者が最も低いという結果でした。また、男性は女性より、ダチョウ生産が最も盛んな州の居住者は他の州の居住者より、肉を食べる人は菜食の人より、それぞれ知識の得点が高くなりました。一方、健康と倫理への配慮の傾向には、調べた属性による違いが見られませんでした。
研究が示すこと
この研究は、南アフリカではダチョウ飼育の実際を知る度合いが立場によって大きく異なる一方で、動物福祉への関心が広く共有されていることを示しました。著者らはこの結果から、業界にとって情報発信、透明性の向上、福祉を保証する仕組みづくりが重要だと論じています。
ただし、著者らも認めているように、回答者は西ケープ州の人が約7割を占めていました。また、福祉への関心は実際より強めに答えられた可能性があり、割高な代金を払う意思も仮定の質問で尋ねたものです。さらに、データはコロナ禍の前に集められています。この結果は、ダチョウの福祉に対する人々の認識を知るための一つの基準点として位置づけられています。
原著論文の著者・所属:Maud Bonato(Department of Biological Sciences, University of Venda, Private Bag X5050, Thohoyandou, 0950, South Africa. [email protected])、Monique Dawson(Department of Animal Sciences, University of Stellenbosch, Matieland, 7602, South Africa)、Anel Engelbrecht(Directorate Animal Sciences, Western Cape Department of Agriculture, Oudtshoorn, 6620, South Africa)、Schalk W.P. Cloete(Department of Animal Sciences, University of Stellenbosch, Matieland, 7602, South Africa)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maud Bonato, Monique Dawson, Anel Engelbrecht, et al. Perceptions of ostrich welfare and ethical practices: insights from consumers, farmers and stakeholders. Tropical Animal Health and Production 2026-10-20. DOI: 10.1007/s11250-026-05422-x. 原著ライセンス:CC BY.