著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:International Journal of Environmental Research and Public Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
砂糖入り飲料(SSB)は、炭酸飲料や甘味付きのジュース、エナジードリンク、甘いお茶やコーヒー飲料などを含み、添加糖や余分なエネルギーの大きな供給源とされています。論文は、こうした飲料を習慣的にとることが体重増加や肥満、2型糖尿病、心血管疾患などと関連づけられてきたことを背景として挙げています。世界保健機関(WHO)は健康的な食生活を促す政策の一つとして、砂糖入り飲料への課税を強く推奨しています。
課税が飲料の購入や販売の減少と関連することは、これまでの研究でかなり示されてきました。一方で、税の「設計」によって効果がどう変わるかについての知見は、まだ限られていると著者らは指摘しています。そこで研究チームは、多数の国・地域を対象に、課税の導入そのものに加えて、二つの設計上の違いが清涼飲料の販売量とどう関連するかを調べました。一つは税の仕組みの違い、もう一つは税が健康目的を明示しているかどうかです。
何をどのように調べたか
研究チームは、民間調査会社ユーロモニターの清涼飲料販売データ、世界銀行の砂糖入り飲料税データベース、世界銀行の経済指標を組み合わせました。分析の対象は、2010年から2024年までの74の国・地域です。調べた指標は、1人当たりの年間清涼飲料販売量(リットル)です。これは個人が実際に飲んだ量ではなく、市場全体の消費の目安として用いられています。ボトル入りの水は除外されています。ただし、データの分類上、果汁100%ジュースや低糖の製品の一部が含まれている可能性があると、著者らは断っています。
分析の対象は国レベルの課税に限られ、州や市などの地方税だけの地域は課税国として扱っていません。また、研究期間の初めにすでに課税していた国・地域は、課税前の推移を観察できないため除外されました。
課税の開始時期は国・地域ごとに異なります。そこで研究チームは、開始時期のずれに対応した「差の差」分析という手法を用いました。これは、課税した地域の販売量の変化を、課税していない地域の変化と比べることで、課税がなかった場合と比べた差を推定する方法です。人口、経済規模(購買力平価で見た国内総生産)、物価上昇率の違いも考慮されています。税の仕組みは三つに分類されました。製品価格に応じて課す「従価税」、量や糖分に応じて課す「従量税」、その両方を組み合わせた「混合型」です。
主な結果
課税は、1人当たり年間販売量の平均7.286リットルの減少と関連していました。これは分析対象全体の平均販売量(約69.8リットル)の約10.4%に当たります。比較対象を「まだ課税していない地域」に変えても、ほぼ同じ約7.2リットルの減少が得られました。
時間の経過を追うと、減少幅は導入した年の約2.9リットルから年々大きくなり、導入4〜7年後には1人当たり約9.7〜11.1リットルの減少と推定されました。ただし、導入の1年前の時点ですでに統計的に有意な減少が見られました。著者らは、課税の公表や議論が先行して行動に影響した可能性を挙げ、効果が現れる時期や因果関係の解釈には慎重さが必要だとしています。
健康目的を明示した税かどうかは、課税した32の国・地域で比較されました(健康目的あり23、なし9)。健康目的を明示していない税では、明確な減少は確認されませんでした。一方、健康目的を明示した税では、全体として1人当たり約6.9リットルの有意な減少が見られました。
税の仕組み別では、従価税で約9.9リットル、混合型で約10.7リットル、従量税で約3.4リットルの減少と推定されました。ただし、従量税の推定は統計的な確かさが弱いものでした。また、仕組みの間の差は統計的に有意ではありませんでした。著者らは、特定の仕組みが他より優れているとは結論できないとしています。
研究が示すこと
この研究は、砂糖入り飲料への課税が多くの国・地域で清涼飲料の販売量の減少と関連していたことを示しました。さらに、その関連が税の有無だけでなく、税を健康政策として位置づけて伝えるかどうかによっても異なりうることを示唆しています。
一方で、用いた指標は市場全体の販売量であり、個人の摂取量や添加糖の摂取、病気のリスクを直接測ったものではありません。著者らは、他の政策の影響や地域ごとの事情の違いも残りうるとして、結果を慎重に解釈するよう求めています。
原著論文の著者・所属:Rong Zheng(WHO Collaborating Center on Health Tax and Fiscal Policy, School of International Trade and Economics (SITE), University of International Business and Economics (UIBE), Beijing 100029, China)、Hussain Ali(School of International Trade and Economics (SITE), University of International Business and Economics (UIBE), No. 10, Huixin Dongjie, Chaoyang District, Beijing 100029, China)、Yuxiao Hu(School of International Trade and Economics (SITE), University of International Business and Economics (UIBE), No. 10, Huixin Dongjie, Chaoyang District, Beijing 100029, China)、Mengmeng An(School of Government, University of International Business and Economics (UIBE), No. 10, Huixin Dongjie, Chaoyang District, Beijing 100029, China; School of Law, University of International Business and Economics (UIBE), No. 10, Huixin Dongjie, Chaoyang District, Beijing 100029, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rong Zheng, Hussain Ali, Yuxiao Hu, et al. Fiscal Policy for Health: Sugar-Sweetened Beverage Tax Design and Soft Drink Consumption Across Geographies, 2010–2024. International Journal of Environmental Research and Public Health 2026-07-29. DOI: 10.3390/ijerph23080985. 原著ライセンス:CC BY.