この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
心血管疾患は世界で死亡と障害の主要な原因であり、食習慣はそのなかでも変えられる危険因子の一つとされています。世界保健機関(WHO)は、心血管疾患の予防策として、果物と野菜を1日あたり合計400グラム以上(およそ5皿分)とること、オメガ3脂肪酸の供給源として魚を定期的に食べること、単純糖類や砂糖入り飲料の摂取を控えることを推奨しています。しかし著者らは、ポーランドを含む多くの集団でこうした推奨の達成度が不十分なままであると指摘しています。
これまでの研究では、食習慣が性別や学歴、運動習慣、喫煙といった要因と結びつくことが報告されてきました。ただし著者らによると、果物・野菜、魚、砂糖入り飲料という3つの食習慣を同一の集団でまとめて調べた研究は少なく、とくに学歴などの社会人口学的要因が食習慣の種類によって同じように関連するのかは明らかではありませんでした。そこで本研究は、ポーランドの脳血管疾患予防プログラムに参加した40〜65歳の成人について、これら3つの摂取頻度の実態を把握し、関連する社会人口学的要因や生活習慣要因を特定することを目的としています。
調べ方
研究チームは、2017年から2020年にポーランドの3つの県で実施された脳血管疾患予防プログラム「Bet on Prophylaxis」のデータを用いた横断研究を行いました。横断研究とは、ある一時点の状態をまとめて調べる方法で、原因と結果の向きを確かめることはできません。解析対象となったのは、記入内容が確認できた4935人(女性2932人、男性2003人)で、平均年齢は54.2歳でした。対象は脳卒中や一過性脳虚血発作の既往がない働く年代の人々で、かかりつけ医の診療の機会に参加を呼びかける形で集められたため、集団全体から無作為に抽出した標本ではないと著者らは説明しています。
調査にはこのプログラム用に作られた質問票が使われ、年齢・性別・学歴のほか、測定による身長・体重(BMIの算出に使用)、腹囲とヒップ周囲(腹部の脂肪のつき方を示す指標である腰囲・ヒップ比の算出に使用)、血圧などが記録されました。食習慣については、果物と野菜、魚、砂糖入り飲料のそれぞれを「まったく食べない/ときどき/週1〜2回/週3〜4回/毎日」の5段階でたずねています。果物と野菜を毎日食べていると答えた人には、1日の皿数(1〜5)も追加でたずねました。解析では、年齢、性別、学歴、BMI、定期的な運動、喫煙状況、高血圧の既往を同時に入れた多変量ロジスティック回帰を用い、各要因が独立してどう関連するかをオッズ比という指標で推定しています。著者らは、この解析の狙いは予測モデルを作ることではなく、独立した関連を推定することだと述べています。
主な報告結果
果物と野菜を毎日食べていると答えた人は67.7%で、毎日食べている人の平均は1日2.6皿分でした。一方、WHOが推奨する1日5皿分に達していたのは216人、全体の4.4%にとどまりました。著者らは、毎日食べているかどうかだけで評価すると推奨の達成度を過大に見積めてしまい、頻度と量の両方を見る必要があると指摘しています。魚を週1〜2回以上食べている人は64.1%、砂糖入り飲料を週3〜4回以上飲む人は14.0%でした。
性別による違いも報告されています。果物と野菜を毎日食べる人の割合は女性73.9%、男性58.6%で、砂糖入り飲料をあまり飲まない人の割合も女性81.0%、男性67.4%と女性で高くなっていました。逆に、砂糖入り飲料を頻繁に飲む人は女性9.8%、男性20.2%でした。これに対し魚を週1〜2回以上食べる割合は女性64.2%、男性64.0%でほとんど差がありませんでした。
学歴との関連は食習慣の種類によって異なっていました。果物と野菜を毎日食べることについては、学歴が高いほど割合が上がる傾向がはっきりと確認され、女性であることと高学歴が最も強い独立した関連要因でした。砂糖入り飲料をあまり飲まないことについても、女性であること、高学歴、定期的な運動が高いオッズと関連し、高血圧の既往は低いオッズと関連していました。一方、魚については学歴による一貫した傾向はみられず、性別と学歴の組み合わせを調べる検定では、学歴による差が男性でのみ認められ、女性では明らかでないという結果が報告されています。なお魚のモデルで説明できる変動はごくわずか(Nagelkerke R²=0.017)で、著者らは、ここで調べた要因以外のものがより重要な決定要因である可能性を示唆すると述べています。
喫煙については、現在喫煙している人が3つの食習慣すべてでより望ましくない傾向を示しました。果物と野菜の毎日摂取は喫煙者62.2%に対し非喫煙者69.5%、魚の週1〜2回以上は60.3%に対し65.4%、砂糖入り飲料をあまり飲まない割合は70.7%に対し77.1%でした。また3つの食習慣どうしの相関は弱く(r=0.02〜0.13)、著者らはこれらが強くまとまって現れるわけではないと述べています。BMIは完全に調整した後ではいずれの食習慣とも独立した関連を示しませんでしたが、肥満(BMI 30以上)の人は少なくとも週1回砂糖入り飲料を飲むオッズが高い(オッズ比1.25、95%信頼区間1.09〜1.42)と報告されています。
著者らは限界も挙げています。横断研究であるため因果関係は示せないこと、食習慣が自己申告であるため思い出し方や社会的に望ましく答える傾向による誤分類が生じうること、用いた質問票はこのプログラムのために作られたもので妥当性の検証を経ていないこと、果物と野菜が1つの質問項目にまとめられていて別々に分析できなかったこと、参加者が予防プログラムの志願者であり地域的にも偏りがあるため一般の集団を十分に代表しているとは限らないことなどです。また砂糖入り飲料のモデルは当てはまりの検定で適合が良くなかったため、その推定値は関連の向きを示すものとして慎重に読むべきだとされています。
この研究が示すこと
この研究が伝えているのは、同じ集団の中でも食習慣の種類ごとに推奨の達成度や関連する要因が異なるということです。果物と野菜を「毎日」食べている人は3分の2に及ぶのに、推奨される量に達している人はごく一部という差は、頻度だけを見て食生活を評価することの落とし穴を具体的に示しています。著者らは、こうした結果が、食習慣の領域ごとに、また集団の特性ごとに狙いを定めた栄養教育や公衆衛生の取り組みが必要であることを支持すると結論づけています。
著者:Dominika Jakubowicz-Lachowska(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Marcin Bazylewicz(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Mateusz Wierciński(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Mateusz Bargielski(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Emilia Szyłak(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Katarzyna Kapica-Topczewska(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Anna Mirończuk(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Katarzyna Krystyna Snarska(Department of Clinical Medicine, Medical University of Bialystok, 15-089 Bialystok, Poland)、Monika Chorąży(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Alina Kułakowska(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)、Jan Kochanowicz(Department of Neurology, Medical University of Bialystok, 15-267 Bialystok, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dominika Jakubowicz-Lachowska, Marcin Bazylewicz, Mateusz Wierciński, et al. Fruit and Vegetable, Fish, and Sugar-Sweetened Beverage Consumption Among Adults Aged 40–65 Years: A Cross-Sectional Study of Dietary Patterns and Sociodemographic Correlates in North-Eastern Poland. Nutrients 2026-09-12. DOI: 10.3390/nu18182990. 原著ライセンス:CC BY.