この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
砂糖入り飲料は体重増加や心臓・代謝の病気と関連することが知られており、消費を抑えるために課税する国が増えています。ただし、税率、課税対象となる商品、インフレへの対応は国によって大きく異なります。課税によって購入が減ることを示す研究はありますが、家計への影響は、もともとの消費量、課税後の購買行動、税収の使い道によって変わります。
著者らは、2022年と2024年の両時点でデータがそろう国を対象に、飲料価格に占める物品税の割合の変化が大きい国ほど、飲料の買いやすさや、健康的な食事へのアクセスなど広い意味での食料事情も変化していたのかを調べました。対象には、税の割合が増えた国だけでなく、減った国やほとんど変わらなかった国も含まれます。なお、この割合は税額と小売価格の比であり、価格が動くだけでも変化します。そのため論文は、この割合の変化を法律上の税制改正そのものを示す指標とはみなしていません。
論文が強調するのは、飲料の買いやすさと、健康的な食事の買いやすさは別の問題だという点です。砂糖入り飲料が相対的に高くなっても、主食などの健康的な食品が高くなるとは限りません。逆に、飲料税が変わらなくても、食品全体の値上がりで健康的な食事が手に届きにくくなることもあります。
何をどう調べたか
研究チームは、世界保健機関(WHO)が2回にわたって集めた各国の飲料価格と税のデータを、国連食糧農業機関(FAO)の食料関連指標や世界銀行の統計と国ごとに結び付けました。2回とも物品税のデータがそろった国は124か国です。
主な分析では、代表的な砂糖入り飲料の小売価格に占める物品税の割合が2年間で何ポイント変化したかを、増減の大きさそのままの連続的な値として扱いました。この変化と、次の五つの指標の変化との関連を調べています。一つ目は、国ごとの物価の違いをならした購買力平価ベースの飲料価格です。二つ目は、飲料50リットル分の価格が1人当たり国内総生産(GDP)の何パーセントにあたるかを示す「所得負担」です。残りの三つは、健康的な食事を最も安くそろえる費用、その費用をまかなえない人の割合、中程度以上の食料不安を経験した人の割合です。
分析では、国ごとの所得水準、都市化の程度、地域、食品価格の上昇率を考慮しました。そのうえで、多数の指標を同時に検定することによる見かけ上の有意差を避ける補正や、外れ値の影響を確かめる検証も行っています。補足的に、税の割合が2ポイント以上増えた国と、ほとんど変わらなかった国を比べる分析も実施しました。著者らは、得られた結果は因果関係ではなく、条件をそろえたうえでの関連を示すものだと明記しています。
主な結果
2年間の物品税の割合の変化は全体として小さいものでした。平均は0.349ポイント増、中央値はゼロです。2ポイント以上増えた国は13か国、測定上の物品税がない状態から正の割合に移った国は7か国でした。一方、2ポイント以上下がった国も8か国ありました。この期間には、飲料価格の平均は上がったものの、所得負担の平均はほとんど変わりませんでした。健康的な食事の費用も多くの国で上がりました。著者らは、こうした全体の動きを飲料税によるものとはみなしていません。
分析の結果、物品税の割合が1ポイント増えることと所得負担の変化との関連はほぼゼロでした。推定の幅も広く、関連の向きも大きさも定まりませんでした。飲料価格との関連はプラスの推定値になりましたが、これはシエラレオネの1件の特異なデータに大きく左右されていました。この国を除くと推定値は大きく下がります。研究チームはWHOの元データを直接確認し、この値が原資料どおりに記録されていることを確かめました。ただし、値そのものが正しいかどうかは確認できていません。
健康的な食事の費用、それを買えない人の割合、食料不安の割合についても、関連ははっきりしませんでした。五つの指標すべてで、推定の幅はゼロをまたいでいます。著者らは、悪影響を示す関連がはっきり推定されなかったことは、悪影響がないことの証明にはならず、政策上重要な変化を否定することもできないと強調しています。
補足として、2024年時点の税の仕組みも分析しました。砂糖の量に応じた段階税率、インフレへの自動調整、無糖の水の非課税、税収の使途指定など六つの特徴を点数化し、所得負担との関連を調べています。しかし関連ははっきりせず、物品税のある国に絞ると関連の向きが逆になりました。そのため著者らは、この点数を政策の効果を測る確かな物差しとして扱うべきではないとしています。
この研究が示すこと
著者らは、今回の結果は砂糖入り飲料税が効果がないことも、食料安全保障への悪影響がないことも示していないと結論づけています。2年分という短い期間、税の割合の変化の小ささ、1件の特異なデータの影響などにより、各国データから言えることには限りがあります。
そのうえで論文は、飲料の買いやすさだけでなく、健康的な食事へのアクセスや実際に経験された食料不安もあわせて追跡することに意味があると述べています。そうした監視によって、より詳しく調べるべき国や状況を見つけられるからです。家計の食費や暮らしへの影響を見極めるには、世帯ごとの購入や所得のデータ、税収の使い道の記録が必要だとしています。
著者:İbrahim Olgun(Faculty of Economics and Administrative Sciences, Recep Tayyip Erdoğan University, Rize 53100, Türkiye)、Musa Gün(Faculty of Economics and Administrative Sciences, Recep Tayyip Erdoğan University, Rize 53100, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):İbrahim Olgun, Musa Gün. Sugar-Sweetened Beverage Tax Intensification, Beverage Affordability, and Food-Security Safeguards: Global Evidence from 2022–2024. Foods 2026-09-20. DOI: 10.3390/foods15183343. 原著ライセンス:CC BY.