この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Psychology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を調べようとしたのか

思春期の心の健康は、世界的に大きな公衆衛生の課題になっています。論文の冒頭で著者らは、世界保健機関のデータとして思春期の約10〜20%が何らかの精神的な問題を経験しており、その約半数が14歳より前に始まるという状況を紹介しています。中国国内についても、中学生の抑うつ症状のとりまとめ研究で約26.17%という値が報告されていることや、全国調査で心の健康に関する症状の割合が約20.9%とされていることに触れています。

こうした背景のもとで著者らが着目したのは、変えられる可能性のある二つの要因です。一つは砂糖入り飲料(SSB、砂糖などの糖類が加えられた炭酸飲料・加糖の茶飲料・エナジードリンクなど)の飲む頻度で、もう一つは「コニシティ指数(conicity index、CI)」と呼ばれる体型の指標です。CIはウエスト周囲・身長・体重を組み合わせて計算し、体重だけに頼るBMIと違って、おなか周りに脂肪がつく「中心性肥満」の度合いを捉えようとする測り方です。

著者らは、CIについてはこれまで代謝に関わる病気との関係を調べた研究が主で、心の健康との関係を直接調べた研究は非常に少ないと述べています。そこで本研究は、中国の中高生を対象に、砂糖入り飲料の摂取頻度とCIが心の健康に関する症状とそれぞれ関連するか、さらに両者が重なったときにどうなるかを検討することを目的としました。

どのように調べたか

研究は2024年3月から11月にかけて中国全国で行われた横断調査(ある一時点の状態をまとめて調べる方法)です。中国の五つの地域区分から経済水準や都市・農村の人口比を考慮して12の省を選び、都市部と農村部からそれぞれ中学・高校を無作為に抽出し、学年ごとに選んだクラスの生徒全員を調査しました。重い慢性の身体疾患がある生徒や、精神疾患の診断を受けたと自己申告した生徒などを除いた結果、12〜17歳の42,382人(男子21,156人、女子21,226人)が分析対象になりました。

砂糖入り飲料は、国際的に使われている学齢期児童の健康行動調査(HBSC)の設問をもとにした自己記入式の質問票で、過去1週間に何回飲んだかを尋ね、週2回以下・週3〜4回・週5回以上の三つに分けました。100%の果汁や無糖の飲料は含めていません。CIはウエスト周囲・身長・体重を標準的な手順で測定して算出し、年齢と性別を考慮したうえで四つのグループ(四分位、Q1が最も低くQ4が最も高い)に分けました。

心の健康に関する症状は、15項目からなる質問票(BIOPHY)で評価しました。この質問票は、情緒の問題、行動の問題、社会適応の困難という三つの側面を扱い、症状が1か月以上続いていたかどうかで点数をつけます。合計7点以上を「心の健康に関する症状がある」と判定しました。解析ではロジスティック回帰という統計手法を用い、年齢、通学の仕方、朝食の頻度、中〜高強度の身体活動などを順に調整したモデルを作りました。さらに、砂糖入り飲料の3段階とCIの4段階を組み合わせた12通りの区分について、両方が低い群を基準にした「組み合わせの効果」も検討しています。

報告された主な結果

42,382人全体で、心の健康に関する症状がみられた割合は20.9%でした。男子が21.4%、女子が20.5%で、男子がわずかに高いという結果です。情緒の問題では男女差はみられませんでしたが、行動の問題と社会適応の困難では男子の割合が高いと報告されています。

砂糖入り飲料については、週2回以下の生徒を基準にすると、週5回以上飲む生徒は心の健康に関する症状がみられる割合が高く、すべての要因を調整した全体のモデルでのオッズ比は1.66でした。オッズ比は、基準となる群と比べて症状がみられる見込みが何倍かを表す数値です。この関連は男子(1.53)でも女子(1.83)でも認められています。一方、週3〜4回という中程度の頻度では、女子では調整前は関連がみられたものの調整後は統計的にぎりぎりの水準にとどまり、男子では明確な差はみられませんでした。

CIについては、最も低いQ1を基準にすると、最も高いQ4のみが関連を示し、全体の調整後オッズ比は1.17でした。中間のQ2とQ3では明確な関連はみられていません。

両方を組み合わせた解析では、砂糖入り飲料を週5回以上飲み、かつCIが最も高いQ4に入る群で関連が最も強く、全体でオッズ比2.12と報告されています。この組み合わせでは女子で特に大きく、オッズ比は3.41でした。著者らは、砂糖入り飲料が心の健康に関する症状と結びつく度合いには男女差がはっきり出ない一方で、CIとの関連には性別による違いが目立つと述べています。

この研究から読み取れること

著者らは、中国の中高生において砂糖入り飲料の摂取頻度とコニシティ指数がそれぞれ独立に心の健康に関する症状と関連しており、両者の間には相乗的な関係があると結論づけています。そして、砂糖入り飲料の摂取が少ないこと、おなか周りの脂肪の蓄積が少ないことが、思春期の心の健康とつながっていることを示す所見だと述べ、男女差があることから、対象に合わせた働きかけを考える必要があると指摘しています。

ただし、この研究は一時点で集めたデータに基づく横断研究です。砂糖入り飲料や体型が心の症状を引き起こしたのか、心の状態がそうした生活習慣や体型につながったのかを、この設計から決めることはできません。論文が参照した先行研究のなかには、砂糖入り飲料と心の健康の間に双方向の関係がありうると示唆するものもあります。

それでも、数万人規模の全国調査で、飲み物の飲み方という日常的な行動と、ウエスト周囲から計算できる体型の指標が、どちらも中高生の心の状態と結びついて現れたという報告には意味があります。心の健康を考えるときに、身体の測定値や毎日の食習慣も合わせて目を向ける手がかりを与える研究だといえます。

著者:Linlin Li(School of Physical Education, Huanghuai University)、Yuqiang Li(College of Physical Education and Health, East China Normal University)、Huijun Yan(College of Physical Education and Health Management, College of Physical Education, Henan Finance University)、Hui Wang(College of Sports Science, Hefei Normal University)、Guangtao Zhao(College of Physical Education and Health Management, College of Physical Education, Henan Finance University)、Min Zhang(School of Physical Education, Chizhou University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Linlin Li, Yuqiang Li, Huijun Yan, et al. The association of sugar-sweetened beverage intake and conicity index with mental health symptoms among Chinese adolescents. Frontiers in Psychology 2026-10-02. DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1929362. 原著ライセンス:CC BY.