この研究は、イギリスの研究機関の研究論文です。

掲載誌:BMC Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

英国では、10代の若者が砂糖入り飲料を特に多く飲む世代の一つとされています。英国政府は子どもの肥満対策の一つとして、2016年に「清涼飲料業界税(SDIL)」を発表し、2018年4月に導入しました。この税は消費者ではなく飲料メーカーを対象とするもので、メーカーが飲料の配合を見直し、砂糖の量を減らすよう促すことを狙った、世界でも早い時期の砂糖入り飲料税です。

導入後、子どもや大人が食事から摂る砂糖の量が減ったという報告はあります。しかし著者らは、そうした数値だけでは、税の主な対象である若者が砂糖や飲料、税そのものをどう受け止めているのかは分からないと指摘しています。そこで研究チームは、10代前半の若者が砂糖、砂糖入り飲料、そしてSDILをどう考えているかを、行動の理論に基づいて理解することを目指しました。

何をどのように調べたか

研究チームが手がかりにしたのは「計画的行動理論」です。これは人の行動を説明する代表的な心理学の理論で、行動への好き嫌いや良し悪しの評価(態度)、周囲の人がどう考えていると感じるか(主観的規範)、その行動を自分がどの程度実行できると感じるか(知覚された行動のコントロール)が「やろうとする気持ち(意図)」を形づくり、それが実際の行動につながると考えます。この理論はこれまで、アンケートなどの数量的な研究で食習慣の分析に広く使われてきました。一方、実際に導入された政策について、若者の語りを質的に読み解くために使われた例は乏しかったといいます。

分析の対象は、すでに別の論文で分析・報告されていたフォーカスグループ(少人数での座談会形式の聞き取り)の記録です。研究チームは同じデータをこの理論の枠組みで改めて分析しました。参加者は、イングランド東部エセックスにある公立校2校の11〜14歳の生徒23人(女子15人、男子8人)で、2018年12月から2019年5月にかけて4つのグループで話し合いが行われました。

話し合いでは、砂糖や甘い飲み物への考え方、SDILへの意見などが話題になりました。有名な飲料を砂糖の多い順に並べるグループ作業も取り入れられています。記録の分析には、データを読み込みながら繰り返し出てくる考え方の「テーマ」を見いだす主題分析という手法が使われました。理論の各要素を出発点の分類として用いつつ、データから新たに浮かび上がる内容も拾い上げています。

主な結果

分析からは6つのテーマが見いだされました。そのうち5つは理論の要素(態度、主観的規範、知覚された行動のコントロール、意図、行動)に対応し、もう1つは理論の枠外にある「SDILがほとんど知られていない」というテーマでした。

若者の受け止め方に特に大きく関わっていたのは、「砂糖は体に悪い」という考え方と、親による制限の2つでした。どのグループでも、砂糖は虫歯や肥満、血管の詰まりにつながるといった否定的な見方が語られていました。その一方で、甘い飲み物はおいしい、元気が出るといった肯定的な声もありました。スポーツや運動の場面なら飲んでもよいという考えも共通して見られました。低糖の「ダイエット」飲料については、「化学物質」が入っているから良くないという見方が多く、親に飲ませてもらえないという話もよく出ていました。並べ替え作業では、どのグループも果物の絵が付いた人気のフルーツ飲料に砂糖が多いことに驚いていました。

親が飲み物を買わない、小遣いの使い道を確認するといった制限は、若者が「飲める機会」を感じる度合いを左右すると同時に、親の考えを知る手がかりにもなっていました。こうした語りから著者らは、理論の要素は互いに重なり合っていると捉えました。そのうえで、知覚された行動のコントロールと行動とのあいだに双方向の影響があり、意図を経ない経路があるとする修正モデルを提案しています。たとえば親や学校の制限で実際に飲まない状態が続くと、「飲めない」という感覚が強まり、それが態度や今後の意図にも影響するという考え方です。

砂糖の摂取を減らすにはどうすればよいかという問いには、どのグループも熱心に意見を出しました。配給カードのような案や、飲料の砂糖を減らして別のものに置き換える案などが挙がり、社会全体に働きかける対策は仮定の話としては受け入れられていました。ところが実際のSDILについては、関心も認知度も低く、どちらとも言えない反応が目立ちました。税の目的を「消費者が払う値段を直接上げて買わせないこと」と誤解している参加者もいました。

この研究が示すこと

著者らによれば、この研究は、実際に導入された政策であるSDILを含めて、若者の砂糖や甘い飲み物への受け止め方を計画的行動理論で質的に分析した初めての研究です。若者たちは税の存在をほとんど意識していませんでした。それでも著者らは、こうした政策は個人の「減らそう」という意図に頼らず、飲料の中身という環境の側を変えるため、意図と行動のずれという問題を迂回できると論じています。

さらに著者らは、若者が砂糖を減らす社会的な対策に前向きだったことから、現在は課税対象外の砂糖入り飲料や果汁飲料にもSDILを広げることは対象世代に受け入れられる可能性がある、と提案しています。11〜14歳の23人という限られた参加者の語りではあるものの、税の対象となる世代の目線から、政策がどのように受け止められ、どのように働きうるのかを描き出した研究といえます。

著者:Rachael McCarthy(South West Public Health Training Programme, Bristol, United Kingdom)、Catrin Jones(IMS Epidemiology, Institute of Metabolic Science, University of Cambridge, Cambridge, United Kingdom)、Martin J. White(IMS Epidemiology, Institute of Metabolic Science, University of Cambridge, Cambridge, United Kingdom)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rachael McCarthy, Catrin Jones, Martin J. White. Youth perspectives on sugar-sweetened beverages and the UK soft drinks industry levy: secondary analysis of focus group data using the theory of planned behaviour. BMC Public Health 2026-10-06. DOI: 10.1186/s12889-026-29693-z. 原著ライセンス:CC BY.