著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、イギリスです。
掲載誌:Journal of the International Society of Sports Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
声明の目的と対象
国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、体重を減らすための食事法について、学会としての公式な見解をまとめました。この論文は既存の研究を批判的に分析したもので、指導者やコーチ、トレーニングに取り組む人々が主な食事法の効果を判断するための科学的な土台を示すことを目的としています。
対象は、おおむね健康で、身体活動が活発な人やアスリートを含む成人です。必要に応じて、過体重や肥満の人を対象とした臨床研究も参照しています。一方で、体の水分を急に抜いて体重を落とす方法、GLP-1受容体作動薬などの薬物療法、肥満外科手術は扱っていません。見解は15項目にまとめられ、学会の研究委員会の承認を受けています。以下は、公開されている抄録に記載された内容に基づく紹介です。
エネルギー制限の強さと食事のとり方
著者らはまず、減量の食事法を三つの観点で大きく分類しています。どれだけエネルギー(カロリー)を減らすか、その減らし方が一定かどうか、そして炭水化物・脂質・たんぱく質という主要栄養素の配分です。これらは個人の好みや続けやすさ、目標に合わせて調整する必要があるとしています。
1日800kcal未満の超低エネルギー食や、800〜1200kcalの低エネルギー食では、短期的には体重が大きく減ります。しかし、カロリーを適度に管理する食事など、より緩やかな制限と比べると、長期的な利点はみられないと述べています。こうした強い制限では、筋肉など脂肪以外の組織(除脂肪量)が失われやすくなるおそれがあります。ただし、十分なたんぱく質の摂取と筋力トレーニングで、そのリスクを抑えられる可能性があるとしています。また、ビタミンやミネラル、食物繊維などが不足しやすい点にも注意を促しています。
断続的断食については、1日おきに断食する方法、食べる時間帯を限る方法、週2回断食する方法のいずれも、毎日同じようにカロリーを減らす方法と比べて、体重や体格の指標に差は見られないというのが全体的な証拠だとしています。ただし、体組成や代謝の健康を良くするうえでは、栄養素の質が独自の役割を果たすと付け加えています。
1日の食事回数は、1日全体で何をどれだけ食べるかに比べると、体重や体脂肪の減少に決定的な影響を与えにくいとしています。食事回数は柔軟に決めてよく、誰にでも当てはまる上限や下限は示せないといいます。ただし、身体活動が活発な人やアスリートがカロリー制限を続ける場合は、たんぱく質を多く含む食事を1日に少なくとも3回に分けてとると、除脂肪量の維持やパフォーマンスにとって最適になる可能性があるとしています。
たんぱく質、炭水化物と脂質の配分
カロリー不足が続くなかで除脂肪量の減少を抑えるには、どの食事法を選んでも、筋力トレーニングと十分なたんぱく質摂取が欠かせないと著者らは位置づけています。最も重要なのは1日の総たんぱく質量で、それを何回にどう分けるかは二次的な問題だとしています。
具体的な目安として、一般の人では体重1kgあたり1日1.2〜1.6gのたんぱく質が、体重と脂肪の減少や身体活動を支え、骨や筋肉などの筋骨格系の健康と、心臓・代謝の健康にも役立つ量として適切だとしています。筋力トレーニングと組み合わせる場合は、体重1kgあたり1日1.6〜2.2gで筋肉をつくる働きが最適化される可能性があるといいます。さらに、体脂肪が少なく筋力トレーニングを積んだ人が低カロリーの状態を続ける場合は、1.9〜3.2gという多めの摂取で除脂肪量の維持を最大化できるとしています。
炭水化物と脂質の比率については、炭水化物を大きく減らすケトン食から低脂肪食まで、減量の成果は同程度だとしています。そのため、比率は個人の好みに合わせて決めてよいとしています。ケトン食は体重と体脂肪の減少に有効ですが、炭水化物の多い食事と比べると除脂肪量も多く減る傾向があるといいます。特に短期間の試験では、体内に蓄えられた糖(グリコーゲン)や体内の水分量の変化が測定値に影響しうる点も指摘しています。
体の適応、停滞期、継続の支え
減量に対して体は、身体面、生理面、行動面で適応します。これらは、カロリー不足で乱れた体内の安定状態を元に戻そうとする働きとして、消費エネルギーを減らす方向へ向かうと著者らは説明しています。
その一つが「適応性熱産生」です。これは、安静時の消費エネルギーが、体組成の変化から予測される以上に下がる現象を指します。低カロリーの状態や体重減少に伴って起こりうるものの、必ず起こるわけではなく、体重が安定すると大きく弱まる可能性があるとしています。適応性熱産生を含む消費エネルギーの低下や、腸内細菌の多様性の低下といった代謝面の適応は、食事と運動の計画を工夫することで和らげられる場合が多いとも述べています。
体重が減らなくなる停滞期には、さまざまな対処法があるとしています。そのうえで著者らは、停滞期をそれまでの成果を維持する練習の機会ととらえる見方も示しています。最終的な目標は、達成した状態を保ち続けることだからです。
さらに、体重管理を成功させるには、複数分野の医療・健康の専門家から助言を受けつつ、周囲の支えを保つことを勧めています。家で料理する方法を学び、1日の食事をあらかじめ計画することは、食べるものを自分で管理でき、体重や体組成の管理に成功しやすくなるとしています。
この声明が示すこと
この声明が全体として示しているのは、減量に唯一の正解となる食事法はないという考え方です。断続的断食か毎日の制限か、炭水化物と脂質の比率をどうするか、1日何回食べるかといった選択では、多くの場合、方法による差は小さいとされています。一方で、十分なたんぱく質と筋力トレーニングによって除脂肪量を守ること、そして減った体重を維持し続けることが、共通して重視されています。
著者:Alan Albert Aragon(Fit Advancement, LLC)、Bill I Campbell(Exercise Science & Kinesiology Program, University of South Florida, Tampa, FL, USA)、Schoenfeld Brad J.(Department of Exercise Science and Recreation, CUNY Lehman College)、Jeffrey R. Stout(School of Kinesiology and Rehabilitation Sciences, University of Central Florida)、Kalman Douglas(Department of Nutrition, Dr. Kiran C Patel College of Osteopathic Medicine, Nova Southeastern University)、Paul Joseph Arciero(Human Nutrition and Metabolism Laboratory, Department of Health and Human Physiological Sciences, Skidmore College)、Shawn M. Arent(Department of Exercise Science, Arnold School of Public Health, University of South Carolina)、Richard B. Kreider(Exercise & Sport Nutrition Lab, Department of Kinesiology and Sports Management, Texas A&M University)、Lem W. Taylor(School of Health Professions, Mayborn College of Health Sciences, University of Mary Hardin-Baylor, Belton, TX, USA)、Laurent Bannock(Institute of Performance Nutrition, London, UK)、Robert E. C. Wildman(College of Health and Human Sciences, Kansas State University)、Chad M. Kerksick(Exercise and Performance Nutrition Laboratory, Lindenwood University)、José António(Department of Health and Human Performance, Nova Southeastern University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alan Albert Aragon, Bill I Campbell, Schoenfeld Brad J., et al. International Society of Sports Nutrition position stand: diets for body weight reduction. Journal of the International Society of Sports Nutrition 2026-10-13. DOI: 10.1080/15502783.2026.2740266. 原著ライセンス:CC BY.