著者の所属・活動拠点の国は、イタリア、ブラジルです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

私たちの食べ方は健康だけでなく、地球環境にも影響します。研究チームは、植物性食品を中心とする地中海食が栄養面で優れ、環境負荷も小さい食事のモデルとして広く認められている点に注目しました。

留学生は新しい国で暮らし始めると、食材や食習慣の違い、時間やお金の制約などから食生活が変わりやすくなります。著者らは、イタリアのパヴィア大学に在籍する留学生を対象に二つの点を調べました。一つは、到着後の食事が人の健康と地球環境の両方に配慮した食事の考え方である「プラネタリーヘルス・ダイエット」にどの程度沿っているかです。もう一つは、地中海食に基づく栄養教育プログラム「MeditEat」に参加した期間に、その食事がどう変化したかです。

何をどのように調べたか

研究は、比較対照のグループを置かない一群だけの探索的な予備試験として行われました。17人が登録し、6か月間の全評価を終えた15人が分析対象になりました。参加者はインド、イラン、グアテマラ、トルコ、ブラジル、ドイツなど11か国の出身で、年齢は21〜43歳でした。

プログラムは6か月間に月1回、計6回の個別セッションで構成され、対面3回とオンライン3回を交互に行いました。内容は、野菜・果物・全粒穀物を土台とし、エクストラバージンオリーブオイルを主な油とする地中海食ピラミッドの紹介から始まりました。その後、豆類やナッツ、動物性たんぱく質や甘いものの控え方、食品表示の読み方、身体活動、季節性や生物多様性といった持続可能性の話題へと進みました。

食事の評価には、ふだん何をどのくらいの頻度で食べているかを尋ねる110項目の質問票を使い、開始時、3か月後、6か月後の3回実施しました。出身国の料理は材料に分解して近い食品項目に当てはめ、食品群ごとに1日の摂取カロリーに占める割合を算出しました。これを基に、プラネタリーヘルス・ダイエットへの沿い方を点数化する指標「PHDI」を計算しました。PHDIは、豆類やナッツのように十分とることが望ましい食品、赤身肉や添加糖のように控えることが望ましい食品などの項目から成ります。本研究では動物性脂肪の項目を除いた修正版を使い、満点は140点でした。

主な結果

開始時の参加者は、出身国の食事指針は比較的よく知っていると答えた一方、イタリアの食事指針への理解は低いと自己評価していました。来伊後に食事が変わった理由としては、時間や学業スケジュールの制約、現地で手に入る食品の違いが多く挙げられました。

PHDIの合計点の平均は、開始時の75.4点から3か月後に82.8点へ統計的に意味のある上昇を示し、6か月後も82.9点とほぼ同じ水準を保ちました。個々の項目で統計的に意味のある変化がみられたのは植物油だけで、その得点の平均は開始時の2.1点から3か月後には4.3点と約2倍になり、6か月後は3.7点でした。著者らは、この変化がオリーブオイルの利用を勧めた助言と対応していると述べています。

ほかに、ナッツや豆類の得点の上昇、赤身肉や添加糖を控える方向への変化も見られましたが、いずれも統計的に意味のある差には達しませんでした。参加を最後まで続けた15人は6回のセッションすべてに出席しており、著者らは、個別形式と柔軟な日程調整が参加の継続を支えたと報告しています。

この研究が示すこと

著者らは、地中海食に基づく個別の栄養教育への参加が、留学生の食事を持続可能な食事パターンに近づける初期的な傾向と関連していたと結論づけています。ただし、参加者は15人と少なく、比較対照のグループもありません。個人差も大きく、健康状態や環境負荷そのものは測定していません。そのため論文は、今回の結果を教育の効果を確かめたものではなく、仮説を生み出すための予備的な知見と位置づけています。

この研究は、新しい食文化の中で暮らす留学生にとって、現地の食材の選び方や故郷の料理の作り替え方を一緒に考える支援が、食生活を見直すきっかけになりうることを示しています。

原著論文の著者・所属:Lenycia de Cassya Lopes Neri(Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, Human Nutrition and Eating Disorder Research Center, University of Pavia; Laboratory of Food Education and Sport Nutrition, Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, University of Pavia)、Kalpana Shivanandappa(Department of Earth and Environmental Sciences, University of Pavia)、Simona Fiorini(Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, Human Nutrition and Eating Disorder Research Center, University of Pavia; Laboratory of Food Education and Sport Nutrition, Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, University of Pavia)、Dirce Marchioni(Department of Nutrition School of Public Health, University of São Paulo, São Paulo, Brazil)、Mariangela Rondanelli(Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, Human Nutrition and Eating Disorder Research Center, University of Pavia, Pavia, Italy)、Cinzia Ferraris(Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, Human Nutrition and Eating Disorder Research Center, University of Pavia; Laboratory of Food Education and Sport Nutrition, Department of Public Health, Experimental and Forensic Medicine, University of Pavia)、Daniela Martini(Department of Food, Environmental and Nutritional Sciences (DeFENS), Università degli Studi di Milano, Milan, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lenycia de Cassya Lopes Neri, Kalpana Shivanandappa, Simona Fiorini, et al. Promoting alignment with Mediterranean and planetary health diet principles among international students: an exploratory pilot study of the MeditEat project. Frontiers in Nutrition 2026-10-23. DOI: 10.3389/fnut.2026.1946581. 原著ライセンス:CC BY.