この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Plant Science Today
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的にした研究か
米はインドネシアの多くの人々にとって主食であり、安定した供給と価格は食料安全保障を支える重要な要素とされています。著者らは、稲作の成果を高めるには、種子や肥料といった生産資材をどう選び、いつ、どれだけ使うかという営農の管理全体――すなわち「アグリビジネス」としての取り組み――が鍵になると考えました。
この研究チームが報告するところでは、これまでの研究の多くは稲作の技術的効率や生産性に焦点を当ててきた一方、アグリビジネスの実践状況、資源配分の効率、収益性を一つの分析の枠組みでまとめて扱った例は限られていました。そこで著者らは、中部ジャワ州グロボガン県を対象に、生産資材の使われ方、生産量を左右する要因、価格から見た資材投入の効率、そして稲作の収益性を調べることを目的としたと述べています。
どのように調べたか
調査は、グロボガン県のウィロサリ郡とゴドン郡の計4つの村で行われました。両郡は、アグリビジネスの実践がなお中程度にとどまり、生産資材の使い方も十分に効率的とはいえないという課題を抱えていることから、意図的に選ばれたと説明されています。各村から20人ずつ、単純無作為抽出で合計80人の稲作農家に聞き取り調査を行っています。
分析の柱は三つです。第一に、生産資材の使い方を「6つの適正(適時・適量・適種・適質・適品・適価)」という観点から点数化し、実践の程度を評価しました。第二に、重回帰分析という統計手法を使い、作付面積・種子・尿素肥料・過リン酸石灰(TSP)肥料・農薬・労働力・アグリビジネスの実践度という7つの要素が、米の生産量にどう関わっているかを調べています。第三に、各資材を1単位増やしたときに生まれる価値が、その資材を買う費用に見合っているかを比べて、資源配分の効率を判定しました。あわせて、収入から費用を差し引いた所得と、費用に対する所得の割合である収益性を算出しています。
報告された主な結果
回答した農家の平均年齢は49.5歳で、96.25%が生産年齢層にあたりました。稲作の経験年数は平均22.4年、経営面積は平均0.77ヘクタールで、著者らはこれを小規模農家と位置づけています。
生産資材の使い方は、6つの適正の観点で見ると全体として中程度から良好の範囲にあり、適切に実践できていた農家は53.33%と報告されています。この水準のもとで、米の生産性は1ヘクタールあたり75キンタル(7.5トン)に達し、これは同県の2025年の生産性である1ヘクタールあたり6174キログラムを上回る値だと著者らは述べています。
回帰分析では、作付面積、種子、尿素肥料、TSP肥料、農薬、労働力、そしてアグリビジネスの実践度のすべてが、生産量に対して統計的に意味のある正の関係を示しました。モデルは生産量のばらつきの96.8%を説明したと報告されています。ここで示されているのはあくまで統計的な関連であり、残りの3.2%はモデルに含まれていない要因によるものだと著者らは断っています。
一方、価格から見た資源配分の効率については、いずれの生産資材も判定の基準となる値を上回っており、まだ効率的な配分には至っていないという結果でした。著者らはこれを、資材価格が高く農家が資金の制約を抱えていることによるものと説明しています。ただし尿素とTSPの使用量自体は、1ヘクタールあたり250〜300キログラムという標準の範囲内に収まっていたとしています。
費用の内訳では変動費が94.73%を占め、なかでも労働費が最も大きな割合でした。著者らは、農業労働力の不足が農村部の賃金上昇につながっていると論じています。所得は作付期あたり1517万2142ルピア、収益性は67.97%と算出され、この地域の稲作は採算の取れる営みとして続いていると報告されました。
この研究が示すもの
著者らの報告からは、小規模な経営であっても、生産資材を適切に扱う営農管理の積み重ねが地域平均を上回る生産性と確かな収益に結びついている様子が読み取れます。同時に、資材をどれだけ使うかという配分の面には、資材価格の高さと資金の制約という壁が残っていることも示されました。生産の現場で何がうまくいき、どこに課題が残るのかを一つの枠組みの中で描き出した点に、この研究の意味があるといえます。
著者:Titik Ekowati(Department of Agriculture, Faculty of Animal and Agricultural Sciences Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Central Java, Indonesia)、Mukson(Department of Agriculture, Faculty of Animal and Agricultural Sciences Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Central Java, Indonesia)、Muthia Auralia(Department of Agriculture, Faculty of Animal and Agricultural Sciences Universitas Diponegoro, Semarang 50275, Central Java, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Titik Ekowati, Mukson, Muthia Auralia. Implementation of an agribusiness system to support rice farming performance in Grobogan, Indonesia. Plant Science Today 2026-09-17. DOI: 10.14719/pst.14351. 原著ライセンス:CC BY.