著者の所属・活動拠点の国は、ガーナです。
掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
乳児は生後6か月頃から、母乳を続けながら母乳以外の食べ物を少しずつ取り入れていきます。この時期の食事は「補完食」と呼ばれ、子どもの成長や発達を左右する大切な段階とされています。論文によると、ガーナでは5歳未満の子どもの約18%が年齢に比べて身長が低い「発育阻害」、約7%が身長に比べて体重が少ない「消耗症」、約12%が年齢に比べて体重が少ない「低体重」の状態にあると国の調査で報告されています。その背景の一部には、補完食の与え方が十分でないことがあると考えられています。
ガーナ中部州の沿岸にある漁業の町エルミナでは、とうもろこしのかゆなど地元で手作りする伝統的な補完食が、祖母や年長の女性から世代を超えて受け継がれてきました。しかし、著者によれば、この地域でこうした伝統的な補完食を具体的に調べた研究は知られていませんでした。そこで本研究は、エルミナの母親たちがどのような食べ物を使い、どう調理し、何に影響されて選び、その習慣が今後も続けられるものかを明らかにすることを目指しました。
どのように調べたか
調査の対象は、生後6〜24か月の子どもを育て、伝統的な補完食を与えている母親です。無作為に選ばれた44人に質問票で回答してもらい、さらに学歴や子どもの数、与え方の違いを考慮して選んだ10人には、聞き取り調査と、実際の調理や食事の様子の観察も行いました。数値データは割合として集計し、聞き取りや観察の内容は繰り返し現れるテーマごとに整理して、両者を照らし合わせています。
なお著者は、地域の対象者数から計算すると本来は133人程度の回答者が望ましかったものの、参加できる人の都合などから44人にとどまったことを限界として明記しています。
主な結果
最もよく使われていたのは「ココ」と呼ばれるとうもろこしのかゆで、回答者の68%が挙げました。続いて、ミレット(雑穀の一種)のかゆが52%、ウィーニミックス(Weanimix)が45%で、ほかに落花生のスープとやわらかいフフ、つぶしたヤムイモやプランテン(料理用バナナ)、米のかゆなども使われていました。調理はかゆ状に煮る方法が中心でした。食べ物の固さは、60%の母親が自分の経験をもとに決めており、保健医療従事者に相談していたのは10%でした。全員が毎回作りたてを与えていると答え、68%は食べ残しを保存せずに捨てていました。観察でも、手洗いや煮沸した水、清潔な器具の使用など、調理時の衛生状態は全体として良好だったと報告されています。
補完食を始めた時期では、世界保健機関(WHO)の推奨どおり生後6か月以降に始めた母親は50%でした。残りの半数は早く始めており、23%は生後3か月より前、27%は3〜5か月の間でした。著者は、早すぎる開始が依然として課題であると指摘しています。
補完食の選び方に影響する要因としては、費用の手ごろさ(78%)、文化的な伝統(72%)、祖母をはじめとする家族の影響(65%)、地元の食材の手に入りやすさ(60%)、母親自身の知識(58%)が多く挙げられました。保健医療従事者の助言を挙げたのは23%にとどまりました。
また89%の母親が、この習慣は今後も続けられると考えており、その理由として食材が一年中手に入ること、安いこと、作りやすいこと、地域で知識が受け継がれていることを挙げました。全員が、補完食の知識を地域の人々と共有していると答えています。聞き取りでは、母親たちが祖母や年長の女性から作り方を学び、この習慣に誇りと自信を持っている様子が語られました。
一方で、栄養面では課題も示されました。エネルギーを補う油を加えている母親は7%にとどまり、穀物のかゆは工夫して栄養を足さないとエネルギーやたんぱく質が薄くなりがちだと著者は述べています。さらに70%の母親が、食べさせた後に子どもに下痢気味の便や便秘などの反応が見られたと報告しており、著者はこの点について臨床的な検討が必要だとしています。
この研究が示すこと
著者らは、エルミナの伝統的な補完食は文化に深く根づき、広く実践され、母親たちの多くが続けられると感じている一方、開始時期の早さや食品の種類の少なさ、栄養を足す工夫の少なさなどの点で、WHOの基準との間に隔たりがあると結論づけています。ただし、この研究では実際の栄養価や子どもの成長は測定しておらず、栄養が足りているかどうかについての判断は母親たちの認識に基づくものだと著者自身が断っています。
回答者の96%が伝統的な補完食を公的な保健事業に取り入れることを支持していたこともあり、著者は、伝統的な知識を置き換えるのではなく、それを土台にし、祖母など家族の影響力ある人々も巻き込んだ地域の栄養教育を提言しています。地域に受け継がれてきた食の知恵と、栄養面の推奨とをどう結びつけるかを考えるうえで、地域の実情を具体的に記録した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Yorke, Phyllis(Akenten Appiah-Menka University of Skills Training and Entrepreneurial Development)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yorke, Phyllis. Indigenous Complementary Feeding Practices Among Mothers in Elmina, Ghana. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-09-01. DOI: 10.5281/zenodo.22216903. 原著ライセンス:CC BY.