著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Springer Link (Chiba Institute of Technology)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
伝統の甘味に、栄養面の工夫を加える
シール・クルマは、細いパスタ状の麺(バーミセリ)をギー(澄ましバター)で炒め、牛乳と砂糖で煮込んで作る南アジアの伝統的なデザートです。インドやパキスタンなどで、とくにイスラム教の祝祭イード・アル=フィトルの時期に広く食べられています。研究チームは、このデザートが一般に飽和脂肪を多く含む一方、食物繊維やオメガ3脂肪酸が少ないことに着目しました。
そこで著者らが注目したのがチアシードです。チアシードは、オメガ3脂肪酸の一種であるα-リノレン酸(ALA)と、水を含むとゼリー状になる水溶性の食物繊維を多く含む種子として知られています。研究の目的は、チアシードを加えてオメガ3脂肪酸を強化したシール・クルマを作り、その栄養成分、食感、そして味や見た目の好ましさを評価することでした。著者らは、チアシードを適度な量にとどめれば、伝統的な風味を損なわずにオメガ3脂肪酸と食物繊維を増やせると考えました。著者らによれば、シール・クルマへのチアシード添加を調べた研究はこれまで見当たらなかったといいます。
添加量を変えた4種類を作り比べる
研究チームは、牛乳1リットルあたりのチアシード量を0グラム(対照)、5グラム、10グラム、15グラムとした4種類のシール・クルマを作りました。白いチアシードをあらかじめ温かい牛乳に30分浸してゲル状にしておき、加熱の最後の5分間に加えています。
できあがった試料について、水分・たんぱく質・脂肪などの基本成分、食物繊維の量、脂肪に含まれる脂肪酸の内訳を分析しました。さらに、専用の機器で試料を押しつぶして硬さや付着性(べたつき)などの食感を数値で測定しました。味や見た目の評価は、シール・クルマになじみのある30人の評価者が、外観・色・味・食感・総合的な好ましさを「非常に嫌い」から「非常に好き」までの9段階で採点する方法で行われました。
10グラムの添加で栄養が増え、好ましさは対照と同程度
論文によると、チアシードを加えるほどα-リノレン酸が増えました。対照ではα-リノレン酸が検出されませんでしたが、全脂肪酸に占める割合は10グラム添加で11.9%、15グラム添加で18.2%に達しました。脂肪酸のうちオメガ6とオメガ3の比率は、対照の5.2から、10グラム添加で1.6、15グラム添加で1.3へと下がりました。製品100グラムあたりの食物繊維は、対照の0.9グラムから、10グラム添加で3.8グラム、15グラム添加で5.2グラムに増えたと報告されています。
食感の測定では、チアシードが多いほど硬さと付着性が増しました。著者らは、チアシードの粘り成分が水を抱え込み、ゲル状の構造を作るためと説明しています。
評価者による採点では、10グラム添加の試料は味・食感・総合的な好ましさのいずれでも対照と統計的な差がなく、食感の点数はわずかに上回りました。一方、外観と色の点数は対照より低くなりました。15グラム添加では、ゲル化が強すぎて固くなったことや種子の粒が目立つことから、すべての項目で点数が大きく下がりました。これらの結果から、研究チームは牛乳1リットルあたり10グラムの添加を最適な量と結論づけています。
伝統の味を保ちながら栄養を高める道筋
この研究は、事前に水分を含ませた白いチアシードを適量加えることで、伝統的な牛乳デザートの味わいをおおむね保ったまま、α-リノレン酸と食物繊維を増やせる可能性を示しました。同時に、入れすぎると食感や見た目が損なわれることも示され、添加量の見極めが鍵になることが分かります。なお著者ら自身も、牛乳とギーを使う以上、この製品は依然として飽和脂肪の多い食品であると述べています。
原著論文の著者・所属:Ranjan B. Yedatkar(Department of Dairy Science, Chhtrapati Shivajiraje Mahavidyalaya)、Vijay Kele(Department of Dairy Technology, Parul Institute of Technology, Parul University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ranjan B. Yedatkar, Vijay Kele. Development and quality evaluation of omega-3 enriched milk-based dessert using chia seeds (. Springer Link (Chiba Institute of Technology) 2026-08-21. DOI: 10.1051/bioconf/202624900018. 原著ライセンス:CC BY.