著者の所属・活動拠点の国は、ドイツ、ガーナ、ノルウェーです。
掲載誌:Food Safety and Risk
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
魚を長く保存できれば、食料が不足しがちな時期にもタンパク源を確保しやすくなります。特にアフリカの一部地域では、魚を燻製や天日干しにして乾燥させ、長期間保存してから市場に出す伝統的な方法が広く行われています。しかし、こうした伝統的な加工・保存方法で、実際にどれくらい微生物学的な安全性が保たれているのか、そしてカビ毒(マイコトキシン)がどの程度発生するのかについては、これまであまり詳しく調べられてきませんでした。
今回紹介する研究は、ガーナで水揚げされるヨーロッパカタクチイワシ(Engraulis encrasicolus)を対象に、伝統的な加工・保存方法における食品安全性を調べたものです。
研究でわかったこと
研究チームは、ガーナの3つの異なる地域の魚加工業者に協力してもらい、2種類の燻製技術(チョーコー式オーブンとアホトール式オーブン)と、2種類の天日干し技術(地面での乾燥と、高台のラックを使った乾燥)でカタクチイワシを加工しました。加工後の魚は、紙を敷いたかごに入れる伝統的な方法で保存されました。
加工直後、そして保存3か月後、6か月後、9か月後のサンプルを採取し、総生菌数、カビの数、大腸菌群、クロストリジウム属菌といった複数の微生物学的指標と、マイコトキシンの含有量が調べられました。
その結果、燻製処理をした魚は、天日干しした魚と比べて、総生菌数・カビ・大腸菌群・クロストリジウム属菌のいずれも少ない傾向が見られたと報告されています。また、加工直後から保存後まで、いずれのサンプルの菌数もガーナの国内規制基準を下回っており、微生物学的な安全性の観点からは食用に適していると評価されました。
マイコトキシンについては、アフラトキシンB1はどのサンプルからも検出されませんでした。一方で、オクラトキシンAは、高台のラックで天日干しされたカタクチイワシから検出され、保存期間が長くなるにつれてその量が増加する傾向が見られたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究では、今回試された加工方法・保存環境のいずれにおいても、市場で流通させられる品質のカタクチイワシを作ることができたと結論づけられています。ただし、一部の天日干しサンプルでオクラトキシンAが検出され保存中に増加したことについては、人への健康リスクをどう評価すべきか、さらなる研究が必要だと論文中で指摘されています。
この記事で紹介した内容は一つの研究に基づくものであり、ガーナ全体や他地域の伝統的な魚加工・保存法すべてに当てはまるかどうかは、今回の要旨だけでは判断できません。また、オクラトキシンAが検出されたことが実際の健康影響につながるかどうかについても、この研究の時点では結論が出されていません。
まとめ
今回の研究は、ガーナの伝統的な燻製・天日干し・保存方法によるカタクチイワシが、微生物学的には国内基準を満たす品質であったことを示しています。一方で、天日干し(特に高台のラックを使った方法)ではオクラトキシンAというカビ毒が保存中に増加する傾向も見られており、今後さらなるリスク評価が必要とされています。伝統的な食料保存技術と食品安全性のバランスを考えるうえで、興味深い知見を提供する研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ガーナにおける伝統的貯蔵9ヶ月間の天日干しおよび燻製ヨーロッパカタクチイワシの微生物学的食品安全性(フードセーフティ・アンド・リスク・2026年07月)
著者:Laura Wessels(Department Biological Safety, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Theophilus Annan(Council for Scientific and Industrial Research, Food Research Institute, Accra, Ghana)、Amy Atter(Council for Scientific and Industrial Research, Food Research Institute, Accra, Ghana)、Christoph Gottschalk(Department Reference Centre Food and Feed Analysis, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Marian Kjellevold(Institute of Marine Research, Department of Seafood, Nutrition and Environmental State, Bergen, Norway)、Felix Reich(Department Biological Safety, German Federal Institute for Risk Assessment, Berlin, Germany)、Johannes Pucher(Department German Centre for the Protection of Laboratory Animals and Experimental Toxicology, German Federal Institute for Risk Assessment, Max-Dohrn-Str.8-10, Berlin, 10589, Germany)