著者の所属・活動拠点の国は、チェコです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
飼料と遺伝子の違いから臭い成分を調べる
研究チームは、去勢していない雄豚を対象に、飼料へのキクイモの添加と、CYP2E1という遺伝子の型の違いが、脂肪やふんに含まれる臭い成分にどう関わるかを調べました。雄豚の肉に生じる特有の不快臭は、去勢が行われる主な理由の一つであり、飼料や遺伝的な特徴によって臭い成分を減らせるかが研究されています。
今回注目したスカトールとインドールは、腸内でつくられ、肝臓で代謝される臭い成分です。CYP2E1は、スカトールの代謝に関わる酵素をつくる遺伝子です。著者らは、背中の脂肪とふんの成分に加え、肝臓でこの遺伝子がどの程度働いているかも調べました。
出荷前の14日間、キクイモを添加
研究には、去勢していない交雑種の雄豚25頭を用いました。13頭には、と畜前の14日間、乾燥キクイモを8.2%添加した飼料を与え、残る12頭には添加しない飼料を与えました。両群には、調査対象としたCYP2E1の遺伝子の型であるAA、AG、GGの豚を、それぞれほぼ同じ構成で含めました。
研究チームは、添加開始前、添加期間中、終了時の計3回ふんを採取し、スカトールとインドールを測定しました。と畜後には背中の脂肪中の両成分と、肝臓のCYP2E1のmRNA量を調べました。mRNAは遺伝子の情報を酵素などのたんぱく質づくりへ伝える物質で、その量は遺伝子の働き具合をみる指標になります。
脂肪中のスカトールは低下、ふんでは遺伝子の型と関連
著者らの報告では、キクイモを添加した群は、添加しなかった群よりも背中の脂肪中のスカトール濃度が統計的に有意に低く、肝臓のCYP2E1のmRNA量は有意に多くなっていました。一方、脂肪中のインドールには差がありませんでした。ふん中のスカトールは添加群で低下したものの、スカトール、インドールともに群間の差は統計的に有意ではありませんでした。
遺伝子の型で比較すると、ふん中のスカトール濃度はAA型で最も低く、GG型で最も高く、型による違いは統計的に有意でした。脂肪中のスカトールにも同じ傾向がありましたが、有意な差は確認されませんでした。また、遺伝子の型による肝臓のmRNA量やインドール濃度の有意な違いも認められませんでした。
この研究は、キクイモの添加による脂肪中のスカトール低下と、肝臓の代謝に関わる遺伝子の働きの変化を報告しています。同時に、ふん中のスカトールには遺伝子の型が関係することも示しました。ただし、脂肪とふんのスカトール濃度の関連は統計的に有意ではなく、ふんの測定で脂肪への蓄積を推定できるとは確認されていません。25頭で行った予備的な研究として、臭い成分を考えるうえでは、飼料と個体の遺伝的な違いを分けて捉える必要性を伝える結果です。
原著論文の著者・所属:Kateřina Zadinová(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Antonín Stratil(Laboratory of Molecular Ecology Institute of Animal Physiology and Genetics, Academy of Sciences of the Czech Republic Liběchov Czech Republic)、Jaroslav Čítek(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Monika Okrouhlá(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Jan Calta(Department of Genetics and Breeding, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Ivan Bahelka(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Kateřina Urbancová(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Michal Šprysl(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)、Roman Stupka(Department of Animal Science, Faculty of Agrobiology, Food and Natural Resources Czech University of Life Sciences Prague Prague Czech Republic)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kateřina Zadinová, Antonín Stratil, Jaroslav Čítek, et al. Effects of CYP2E1 Polymorphism and Dietary Supplementation With Jerusalem Artichoke on Skatole and Indole Levels in the Back Fat and Feces of Boars, and Liver mRNA Expression. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72272. 原著ライセンス:CC BY.