著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Journal of Fungi
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
葉に感染するとき、菌の遺伝子はどう働くのか
トウモロコシの灰斑病は、葉に病斑を生じ、収量や穀粒の品質を低下させる病気です。研究チームは、その原因となる近縁の菌、Cercospora zeae-maydisとCercospora zeinaについて、葉への感染が進む間にどのような遺伝子が働くのか、共通点と違いを調べました。
著者らは、中国・吉林省の発病したトウモロコシから得た各種1菌株を用い、トウモロコシの葉に接種しました。接種30分後を基準に、1日後、3日後、6日後の葉を採取し、菌に由来するRNAを解析しました。RNAの量を調べることで、各時点でどの遺伝子がどの程度働いているかを捉えています。
症状の進み方と遺伝子の働きに違い
研究チームの観察では、接種1日後までは両菌株とも目に見える症状はなく、3日後に初期症状が現れました。6日後には、C. zeae-maydisの菌株で葉の組織が広く壊死し、C. zeinaの菌株より病変の範囲が大きくなりました。
遺伝子の解析では、両菌株で、糖や脂質の代謝、タンパク質の分解などに関わると推定される遺伝子の働きが接種後に高まっていました。また、植物の細胞壁を分解する酵素や、植物の防御反応に働きかける分泌タンパク質「エフェクター」に関連する候補遺伝子にも変化が見られました。これらの一部は、C. zeae-maydisの菌株で、より早く、またはより強く働いていました。
著者らは、選んだ候補遺伝子を別の測定法であるRT-qPCRでも調べました。その結果は、RNA解析で捉えた時間的な変化とおおむね一致し、複数の候補でC. zeae-maydisの菌株の方が強く働くという結果を支持しました。
共通の仕組みと、働くタイミングの違い
この研究は、調べた2菌株が葉に定着する際に共通する遺伝子群を働かせる一方、その働き始める時期や強さには違いがあることを示しました。細胞壁の分解や植物との相互作用に関わる候補遺伝子の活発な働きは、症状の速い進行と重なっていましたが、それが症状の違いを引き起こしたと証明したわけではありません。
比較したのは各種1菌株であり、同じ接種後日数でも感染の進行段階が同じとは限りません。その範囲で、著者らの結果は、似た病気を起こす菌でも、感染に関わる遺伝子の使い方に時間的な違いがあることを伝えています。
原著論文の著者・所属:Zhaoreng Li(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Ranran Zhang(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Xiaoshan Tan(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Lifang Guo(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Jili Deng(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Shengjie Gong(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Luchen Li(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Chengcheng Li(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Ying Hu(Engineering Research Center of Natural Enemies, Institute of Biological Control, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)、Zhao Peng(College of Plant Protection, Jilin Agricultural University, Changchun 130118, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zhaoreng Li, Ranran Zhang, Xiaoshan Tan, et al. Time-Course Comparative Transcriptomics Between Isolates of Cercospora zeae-maydis and Cercospora zeina During Maize Infection. Journal of Fungi 2026-09-01. DOI: 10.3390/jof12090650. 原著ライセンス:CC BY.