著者の所属・活動拠点の国は、インド、アメリカです。

掲載誌:Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

サルモネラは、汚染された食品を通じて食中毒を起こす代表的な細菌です。腸チフスを起こすタイプとは別の「非チフス性サルモネラ」は、世界各地で食中毒の集団発生に関わってきました。中でもサルモネラ・ティフィムリウムは広く知られた血清型(細菌の表面の性質による型分け)です。サルモネラ・ウェルテフレーデンは、東南アジアなどで魚介類や水辺の環境との関わりが報告されている血清型です。

食品の中でサルモネラが生き延びるかどうかは、温度や栄養、水分などの条件に左右されると考えられています。そこで研究チームは、この二つの血清型が食品の種類と保存温度によって生残や増殖、病原性に関わる遺伝子の働き方をどう変えるかを調べました。研究チームは、二つの血清型の間で違いが見られるという仮説を立てていました。

何をどのように調べたか

研究チームは、インド・マンガロールの市場で購入した4種類の食品を使いました。インドサバ、エビ、骨なしの鶏肉、緑豆のスプラウトです。紫外線で表面の細菌を除き、サルモネラが検出されない試料だけを実験に用いました。その上で、ティフィムリウムの標準株と、魚介類から分離されたウェルテフレーデン株を、それぞれ別々に食品へ付着させました。

サルモネラを付着させた食品は、37℃、室温(約27℃)、冷蔵の4℃、冷凍の-20℃で保存しました。そして、付着させた当日から3日目まで毎日調べました。論文によると、37℃と室温は比較のための条件で、食品保存を想定したものではありません。

調べたのは主に次の二点です。一つ目は菌の数で、食品の表面からぬぐい取った試料を培養して数えました。二つ目は遺伝子の働き具合(発現量)で、リアルタイムPCRという方法で測りました。対象の遺伝子は、細胞への侵入に関わるinvA、腸管毒素に関わるstn、ストレスへの対応に関わるrpoE・rpoS・ompRです。発現量は、サルモネラを付着させていない食品の結果を基準にして比較されました。

主な結果

論文によると、どの温度条件でもサルモネラは死滅しませんでした。二つの血清型はいずれも、3日間にわたって4種類すべての食品で生き残りました。鶏肉とスプラウトでは、両方の血清型ですべての温度条件で菌数が増えました。ただし鶏肉では、低温での菌数の変化はわずかでした。魚とエビでは、ティフィムリウムはすべての温度で菌数が増えました。一方、ウェルテフレーデンは低い保存温度で菌数が減る傾向を示しました。スプラウトでは、-20℃のほうが4℃よりも菌の増え方が速いという、研究チームにとっても意外な結果が得られました。

遺伝子の働きは、食品の種類、温度、血清型によってさまざまに変化しました。研究チームは、細胞への侵入に関わるinvAが4℃で目立って高まったと報告しています。結論では、室温に近い温度に加えて低温、特に4℃でも病原性遺伝子の発現が誘導されたとまとめています。また、遺伝子の働き方には血清型ごとの違いが見られたと述べています。ただし結論では、魚やエビとの結びつきについて、ウェルテフレーデンとティフィムリウムの間に有意な差は見られなかったとしています。

研究が示すこと

この研究から示されたのは、冷蔵や冷凍で保存しても、少なくとも3日間はサルモネラが死なずに残り得ることです。条件によっては、病原性に関わる遺伝子が働く場合もありました。研究チームはこの結果をもとに、低温保存だけではサルモネラのリスクを確実には取り除けないと指摘しています。特に魚介類やスプラウトについて、保存や加工の条件を見直す必要があるとしています。

一方で研究チームは、この研究にはいくつかの限界があることも認めています。観察期間が3日間と短いこと、食品由来の物質が遺伝子の測定に影響した可能性があること、食品ごとのpH(酸性・アルカリ性の度合い)を測定・調整していないことなどです。こうした条件のもとで得られた結果として、食品の種類と保存温度がサルモネラのふるまいを左右し得ることを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Vankadari Aditya(Nitte University Centre for Science Education and Research)、Pallavi Guttal(Nitte University Centre for Science Education and Research)、Akshatha Kotian(Nitte University Centre for Science Education and Research)、Shabrainath Srikumar(Auburn University)、Vijaya Kumar Deekshit(Nitte University Centre for Science Education and Research)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vankadari Aditya, Pallavi Guttal, Akshatha Kotian, et al. ADAPTATION OF SALMONELLA WELTEVREDEN AND SALMONELLA TYPHIMURIUM TO DIFFERENT FOOD MATRICES AND TEMPERATURE CONDITIONS. Journal of Microbiology Biotechnology and Food Sciences 2026-08-05. DOI: 10.55251/jmbfs.12627. 原著ライセンス:CC BY.