著者の所属・活動拠点の国は、チリです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

病気へのかかりやすさに関わる遺伝子を狙う

研究チームは、カンキツの重要病害である黄龍病(HLB)への対策につなげるため、スイートオレンジの遺伝子CsDMR6を標的とするゲノム編集と、植物体の再生に必要な培養条件の改良に取り組みました。

DMR6は植物の免疫を抑える働きに関わる遺伝子です。カンキツではHLB感染時にCsDMR6の働きが高まることが報告されており、この遺伝子を働かなくすることで病気へのかかりやすさを減らせる可能性があります。ただし、カンキツの免疫における詳しい役割は、まだ十分に確かめられていません。

培養条件を整え、2か所を狙ってDNAを削除

研究では、品種「バレンシア」と3種類の交雑系統を用い、培養した組織から芽を伸ばす条件などを調べました。培地に植物ホルモンのジベレリンを1リットル当たり1ミリグラム加えると、芽が短く詰まった状態が改善し、茎の節と節の間が伸びました。一方、反応には系統による違いもあり、培養条件を系統に合わせて調整する重要性も示されました。

ゲノム編集では、DNAを切る酵素Cas9を標的へ導くガイドRNAを2種類使い、CsDMR6のタンパク質をつくる領域の大部分を挟んで削除する設計にしました。編集の仕組みを組織内で一時的に働かせる実験で、著者らは約5,800塩基対にわたる大きな欠失と、切断後につながった部分を分子レベルで確認したと報告しています。また、導入に使う細菌の濃度や組織と一緒に培養する期間を変えると、編集の結果にも違いが見られました。

確認されたのは遺伝子削除と再生に向けた基盤

今回の主要な成果は、スイートオレンジでCsDMR6の大きな領域を削除できることを示し、編集した組織から植物体を得るための培養条件を改良した点です。ただし、完全に再生した安定な編集植物は得られておらず、HLBにかかりにくくなったことを実証した研究ではありません。

この研究は、病気へのかかりやすさに関わる候補遺伝子を改変する技術と、植物体の再生を支える技術を組み合わせた成果として位置づけられます。

原著論文の著者・所属:Sandra Sopalda(Master’s Program in Agricultural Sciences, Faculty of Agricultural Sciences, University of Chile, Santiago 8820808, Chile)、Ricardo Vergara(Biotechnology Laboratory, Institute of Agricultural Research–La Platina, Santiago 8831314, Chile)、Marisol Muñoz(Biotechnology Laboratory, Institute of Agricultural Research–La Platina, Santiago 8831314, Chile)、Carlos Aguirre(Biotechnology Laboratory, Institute of Agricultural Research–La Platina, Santiago 8831314, Chile)、Carlos Muñoz(Plant Breeding Laboratory, Faculty of Agricultural Sciences, University of Chile, Santiago 8820808, Chile)、Humberto Prieto(Biotechnology Laboratory, Institute of Agricultural Research–La Platina, Santiago 8831314, Chile)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sandra Sopalda, Ricardo Vergara, Marisol Muñoz, et al. Dual-gRNA CRISPR/Cas9 Deletion of CsDMR6 in Sweet Orange Supported by Improved In Vitro Regeneration. Plants 2026-08-31. DOI: 10.3390/plants15172664. 原著ライセンス:CC BY.