著者の所属・活動拠点の国は、イギリスです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

甘いジュースやブドウ糖を飲んだ後、血糖値がどれだけ、どのくらいの速さで上がるかは、実は誰でも同じというわけではありません。この食後の血糖値の変化は「食後血糖応答(PPGR)」と呼ばれ、将来の心血管疾患や代謝異常のリスクと関わりがあると考えられています。ロンドンの研究グループは、日常的にどのような栄養素をとっているかが、この食後血糖応答とどう関連するのかを調べました。加えて、白人、黒人(アフリカ系・カリブ系)、南アジア系という異なる民族的背景を持つ人々の間で、栄養素の摂取量や血糖応答に違いがあるのかどうかにも着目しています。

どのように調べたのか

研究の対象となったのは、健康な成人86人です。内訳は白人系35人、黒人(アフリカ系・カリブ系)17人、南アジア系34人でした。参加者はまず4日間の食事記録(推定量による食事日誌)をつけ、日頃どのような栄養素をどれくらい摂取しているかを把握しました。その上で、一晩絶食した状態で、標準化したブドウ糖飲料とオレンジジュースをそれぞれ別の機会に飲んでもらい、飲む前(空腹時)から2時間後まで30分おきに指先から採血して血糖値を測定しています。血糖応答の指標としては、2時間分の血糖値の変化を積算した「曲線下面積(AUC)」と、測定期間中に観察された血糖値の最高値(ピーク値)の両方が使われました。

栄養素摂取量とグルコース・オレンジジュースへの血糖応答、それぞれの結果

まず日頃の栄養素摂取量を比べると、白人系の参加者は、総エネルギー摂取量、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンE、葉酸などで、黒人系や南アジア系の参加者よりも高い値を示していました。ただし、これは単純に食べる量が多いことの影響も考えられるため、総エネルギー摂取量の違いを補正して比べ直すと、有意な差として残ったのは食物繊維、マグネシウム、葉酸の摂取量だけでした。

血糖応答については、南アジア系の参加者が、ブドウ糖飲料とオレンジジュースのいずれを飲んだ場合でも、白人系や黒人系の参加者と比べて有意に高いAUCとピーク値を示したことが報告されています。

さらに、栄養素摂取量と血糖応答との関連を統計的に調べたところ、補正を行わない分析では、食物繊維、脂質由来のエネルギー割合(脂肪エネルギー比率)、いくつかの微量栄養素が、少なくとも一つの血糖応答指標と関連していました。年齢、体脂肪率、民族、総エネルギー摂取量の影響を差し引いた上で改めて分析すると、食物繊維、マグネシウム、ビタミンB1、葉酸の摂取量は、オレンジジュースを飲んだ後のピーク血糖値と逆の関係(摂取量が多いほどピーク値が低い傾向)にあった一方、脂肪エネルギー比率は、オレンジジュースを飲んだ後のAUCと正の関係(比率が高いほどAUCも高い傾向)にあることが示されました。

この研究をどう読むか

この研究は横断的な観察研究であり、あくまで栄養素摂取量と食後血糖応答の間に統計的な関連が見られたことを示すものです。著者らも、こうした食事内容の違いが食後血糖応答の民族間の差にどの程度寄与しているのかについては、さらなる検証が必要だと述べています。栄養素の摂取量が血糖応答に直接影響を与えると断定できるものではなく、因果関係を明らかにするものではない点に注意が必要です。また、対象者数は86人と決して大規模ではなく、探索的な位置づけの解析であることも踏まえて読む必要があります。なお、この論文の内容や著者所属に、日本の研究機関や日本の食品・食習慣に関する言及は含まれていません。

まとめ

今回の研究では、ロンドンに暮らす白人系、黒人系、南アジア系の成人を対象に、日頃の栄養素摂取量とブドウ糖・オレンジジュースに対する食後血糖応答との関連が探索されました。食物繊維やマグネシウム、葉酸などの摂取量が食後の血糖ピーク値と関連する可能性、脂肪エネルギー比率がオレンジジュース摂取後の血糖応答と関連する可能性が示唆されていますが、これは一つの研究であり結論が確定したわけではありません。今後、より大規模な研究によって、食事内容と血糖応答、そして民族による違いとの関係がさらに検証されることが期待されます。

原著論文の著者・所属:Honglin Dong(The School of Health and Medical Sciences, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、Sophie Turner(The School of Health and Medical Sciences, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、A. F. M. Saiful Islam(The School of Health and Medical Sciences, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、Christian Reynolds(The School of Health and Medical Sciences, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、Christian Reynolds(Centre for Food Policy, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、Swrajit Sarkar(The School of Health and Medical Sciences, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)、Swrajit Sarkar(Centre for Food Policy, City St George’s, University of London, London, United Kingdom)

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Honglin Dong, Sophie Turner, A. F. M. Saiful Islam, et al. Habitual nutrient intakes and postprandial glycaemic responses to glucose and orange juice among ethnically diverse adults in London: an exploratory cross-sectional analysis. フロンティアーズ・イン・ニュートリション (2026). DOI: 10.3389/fnut.2026.1884719.