著者の所属・活動拠点の国は、オーストリアです。
掲載誌:Food Chemistry X
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
酸化しやすい油の弱点に着目
この研究が対象としたのは、コールドプレス(圧搾法の一種)で搾ったブラッククミン油です。著者らによると、この油は多価不飽和脂肪酸(分子内に二重結合を複数もち、酸素と反応しやすい脂肪酸)を多く含むため、酸化による品質劣化が起こりやすいとされています。また、酸価(油の分解で生じた遊離脂肪酸の量を示す値)や過酸化物価(酸化の初期段階で生じる過酸化物の量を示す値)が高いことも知られています。
これまでの研究では、搾る前に種子を焙煎すると酸価が下がり、酸化誘導時間(油が急激に酸化し始めるまでの時間で、長いほど酸化しにくいことを示す)が延びると報告されてきました。それでも、多価不飽和脂肪酸の多いこの油は酸化しやすいままでした。そこで研究チームは、種子の焙煎と、油を搾った後に残る搾りかすを用いる「グリーン抽出」とを組み合わせることで、油の安定性に課題に取り組めるかを調べました。
未焙煎の搾りかすを使った抽出で変わったこと
抄録によると、未焙煎の種子の搾りかすを用いたグリーン抽出を行うと、油に含まれるカロテノイドが33%、クロロフィルが58%増えました。著者らは、搾りかすに含まれる油に溶けやすい成分が油へ移ったことを示すものとしています。
この方法では油の抗酸化能も高まり、酸化の初期に生じる物質も減りました。過酸化物は58%、共役ジエン(脂肪酸が酸化される過程で生じる構造)は10%低下したと報告されています。一方で酸価は上昇しており、著者らはこれを酵素の働きによるものと考えられるとしています。
焙煎との組み合わせによる結果
種子の焙煎については、酸価が82%低下し、ブラッククミンに含まれる成分であるチモキノンの含量が増えたと報告されています。
さらに、焙煎とグリーン抽出を組み合わせた場合には、条件を最適化していない焙煎種子由来の油と比べて、酸化誘導時間が有意に長くなりました。
研究が示すこと
研究チームは、種子の焙煎とグリーン抽出を組み合わせることに相乗的な可能性があると述べています。搾りかすを有効に活用しながら、酸化しやすいというブラッククミン油の課題に取り組む手がかりを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Michael Zeugswetter(Institute of Physiological Chemistry, Faculty of Chemistry, University of Vienna, 1090 Vienna, Austria; Vienna Doctoral School in Chemistry (DoSChem), University of Vienna, Währinger Str. 42, 1090 Vienna, Austria)、Tobias Pointner(Institute of Physiological Chemistry, Faculty of Chemistry, University of Vienna, 1090 Vienna, Austria; Vienna Doctoral School in Chemistry (DoSChem), University of Vienna, Währinger Str. 42, 1090 Vienna, Austria)、Lisa Simettinger(Institute of Physiological Chemistry, Faculty of Chemistry, University of Vienna, 1090 Vienna, Austria)、Marc Pignitter(Institute of Physiological Chemistry, Faculty of Chemistry, University of Vienna, 1090 Vienna, Austria)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Michael Zeugswetter, Tobias Pointner, Lisa Simettinger, et al. Synergistic effect of seed roasting and green extraction on oxidative stability in black cumin oil. Food Chemistry X 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104671. 原著ライセンス:CC BY.