著者の所属・活動拠点の国は、ポーランド、クロアチアです。
掲載誌:Food and Bioproducts Processing
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、オーツ麦(エンバク)の焙煎を、個別の変化の寄せ集めとしてではなく、成分の変化、油の取り出しやすさ、油の酸化しにくさが互いに関わり合う一つの「連動したシステム」として捉えようとしました。抄録によると、焙煎がオーツ麦の組成、油の抽出量、そして取り出した油の酸化安定性をどう変えるかを調べることが、この研究の狙いです。
何をどのように調べたか
著者らは、3品種のオーツ麦を160℃で30分間焙煎しました。さらに「Bingo」という品種については、130℃、160℃、190℃の三つの温度で焙煎し、温度による違いを比べました。
焙煎したオーツ麦からは、二つの方法で油を取り出しています。一つは超臨界二酸化炭素抽出で、高い圧力と温度のもとで液体と気体の中間的な性質を持つ状態にした二酸化炭素を溶媒として使う方法です(この研究では300バール、50℃)。抄録では、この方法で得た油を「選択的」な抽出による油として扱っています。もう一つは、溶媒を繰り返し循環させて油を抽出する、従来からのソックスレー抽出です。
油の酸化しにくさは、「酸化誘導時間」という指標で評価されました。これは油が酸化し始めるまでにかかる時間を測るもので、長いほど酸化しにくいことを意味します。加えて、赤外線の吸収の仕方から物質の特徴を読み取るFTIR(フーリエ変換赤外分光法)のデータを統計的に解析し、焙煎の状態や水分・糖・たんぱく質の量を推定できるかも検討しました。
主な結果
焙煎によって、オーツ麦の水分は70%減少し、水に溶ける糖類は2.2〜2.6倍に増えました。一方、見かけ上の粗たんぱく質の値は品種によって変化しており、著者らは、窒素が今回測定していない別の生成物へ移った可能性を反映しているかもしれないと述べています。
油の抽出量は、130℃では約20%減りましたが、160℃までに回復し、190℃にしても抽出量の面で意味のある上積みは見られませんでした。
酸化誘導時間は、試したどの条件でも、焙煎していない対照と比べて短くなることはありませんでした。190℃では、ソックスレー抽出で得た油の酸化誘導時間が10.7分延びたのに対し、超臨界二酸化炭素で得た油では3.8分の延長にとどまりました。研究チームは、回収した油の酸化安定性が抽出方法に左右されることを示すものだとしています。また、焙煎時間を変えた以前の研究と合わせると、焙煎の「強さ」を決める温度と時間は、互いに置き換えられない別々の軸として働くと結論づけています。
FTIRの解析では、焙煎状態を四つのグループに分ける判別モデルが、モデル作成に使ったデータの範囲内ではスペクトルを各グループに割り当てられました。ただし著者らは、各グループの試料が一つずつしかなく、独立したデータでの検証も行っていないため、これは作成用データ内だけの結果にとどまると明記しています。水分と糖の推定モデルは、単純に平均値で予測する場合より改善しましたが、その主な理由は焙煎前と焙煎後を区別できたことにありました。たんぱく質の推定モデルは試料単位で平均値による予測を上回らず、採用されませんでした。
研究から見えること
この研究では、焙煎によってオーツ麦の水分や糖などの組成が変わり、油の抽出量は焙煎温度によって異なりました。さらに、回収した油の酸化しにくさの変わり方は、焙煎条件だけでなく油の抽出方法によっても違っていました。著者らは、160℃・30分という条件について、試した範囲の中での中間的な実験室での処理であり、工業的な最適条件として実証されたものではないと位置づけています。焙煎の温度と時間、そして油の取り出し方を、結果に関わる別々の要素として区別して見る必要があることを伝える研究といえます。
原著論文の著者・所属:Bharani Kumar Palani(Department of Chemistry, Institute of Food Sciences, University of Life Sciences; Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Joanna Bryś(Department of Chemistry, Institute of Food Sciences, University of Life Sciences; Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)、Marko Obranović(Department of Food Technology and Engineering, Faculty of Food Technology and Biotechnology, University of Zagreb, Pierottijeva 6, HR-10000 Zagreb, Croatia)、Piotr Koczoń(Department of Chemistry, Institute of Food Sciences, University of Life Sciences; Nowoursynowska St. 159c, 02-787 Warsaw, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Bharani Kumar Palani, Joanna Bryś, Marko Obranović, et al. Oat roasting as a coupled system: Composition, supercritical-CO₂ oil extraction, oxidative stability, and FTIR chemometrics. Food and Bioproducts Processing 2026-10-02. DOI: 10.1016/j.fbp.2026.09.019. 原著ライセンス:CC BY.