著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Biocatalysis and Agricultural Biotechnology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

リンゴは収穫後の品質低下や損失が起こりやすい作物です。栽培期間中に発生する黒星病(病原菌ベンチュリア・イナエクアリス)は、収穫後の果実品質にも影響することがあります。一方で、化学合成の殺菌剤による防除には、食品の安全性への懸念が伴います。

研究チームは、エッセンシャルオイル(植物の精油)を封入したナノカプセルと、バチルス属の細菌を使った生物由来の殺菌剤(バイオ殺菌剤)が、リンゴ品種「ガラ」の収穫後品質にどう影響するかを調べました。あわせて、果実に残る殺菌剤の量も測定しました。

何を調べたか

ナノカプセルは、トウモロコシ由来のたんぱく質であるゼインを材料にしたもので、2種類のエッセンシャルオイル製剤(NANO-EOOとNANO-EOE)が用意されました。抄録によると、平均粒子径はそれぞれ約193ナノメートルと約210ナノメートルでした。粒子の大きさはそろっており、粒子同士が集まりにくい安定した状態を示す値も得られたと報告されています。

畑での試験では、2種類のナノカプセル、バチルス・アミロリクエファシエンスの2製剤(BAM1、BAM2)、バチルス・サブチリス(BSU)、そして化学合成殺菌剤による対照区を比べました。6回の散布の後、果実の重さや大きさ、果肉の硬さ、デンプン含量、皮の色、糖度、酸度、ポリフェノール類(フェノール性化合物)の量、抗酸化活性を調べました。殺菌剤の残留は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)という、微量の化学物質を分けて検出する方法で分析しました。

主な結果

果実の重さと直径には、処理による統計的な差はみられませんでした。平均値はNANO-EOOが最も高かったと報告されています。糖度と酸度にも処理間の差はありませんでした。

NANO-EOEでは果肉が硬く、デンプンが少ない結果でした。リンゴは熟すにつれてデンプンが糖に変わるため、著者らはこの結果を、熟度がより進んでいたことを示すものと解釈しています。皮の色は処理によって異なり、NANO-EOOでは黄色みが強くなりました。

ポリフェノール類の量と抗酸化活性は、BSUで低く、BAM1とBAM2で高い値でした。特にBAM1では、ポリフェノール類が1グラムあたり約0.171ミリグラム、抗酸化活性が約75%と報告されています。

残留分析では、殺菌剤ジフェノコナゾール(検出限界の5ppb未満)とマンコゼブはいずれも検出されませんでした。

研究が示すこと

著者らは、ナノカプセル化したエッセンシャルオイルやバチルス属細菌の製剤が、リンゴの品質を保ちながら食品の安全性を確保でき、化学合成殺菌剤に代わる選択肢になりうると結論づけています。製剤によって熟度や皮の色、抗酸化に関わる成分に違いが出たことも、この研究で示された点です。

原著論文の著者・所属:Cristina Rosa Rosar(Program in Environment and Health, University of Santa Catarina Plateau (UNIPLAC), 88509-900, Lages, SC, Brazil)、Diana Carolina Lima Freitas(Program in Environment and Health, University of Santa Catarina Plateau (UNIPLAC), 88509-900, Lages, SC, Brazil)、Michael Ramos Nunes(Federal Institute of Santa Catarina (IFSC), Campus Lages, 88506-400, Lages, SC, Brazil)、Cleonice Gonçalves da Rosa(Program in Environment and Health , University of Santa Catarina Plateau (UNIPLAC) , 88509- 900 , Lages , SC , Brazil)、Leonardo Araujo(Agricultural Research and Rural Extension of Santa Catarina (EPAGRI), São Joaquim, SC, 88600-000, Brazil)、Lenita Agostinetto(Program in Environment and Health, University of Santa Catarina Plateau (UNIPLAC), 88509-900, Lages, SC, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cristina Rosa Rosar, Diana Carolina Lima Freitas, Michael Ramos Nunes, et al. Postharvest quality and fungicide residue quantification (LC-MS) in ‘Gala’ apples treated with zein-based nanocapsules containing essential oils and Bacillus spp. based biofungicides. Biocatalysis and Agricultural Biotechnology 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.bcab.2026.104273. 原著ライセンス:CC BY.