著者の所属・活動拠点の国は、イランです。
掲載誌:Chemistry - Methods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
柑橘類の果皮には、ヘスペリジンとナリンギンという天然の化合物が含まれています。研究チームは、この果皮から2つの化合物を同時に取り出し、その量を測る迅速で感度の高い分析法の開発を目指しました。著者らは、果皮を農業・食品産業の廃棄物と位置づけ、この研究がその有効活用につながるとしています。
著者らは、天然化合物の分析で用いられる手間のかかるクロマトグラフィー(成分を分離して測る技術)に代わる、簡便で低コストな方法を示すことをねらいとしています。なお、この紹介は論文の抄録に記載された内容に基づいています。
どのような方法を組み合わせたか
方法の柱は2つあります。1つ目は「固相抽出」です。試料の液体を固体の材料(吸着剤)に通して目的の成分を吸着させ、その後に別の液体(溶離液)で洗い出す手法です。研究チームは吸着剤として、ZIF-8と呼ばれる材料を用いました。論文は、ZIF-8を専用の吸着剤として固相抽出に用いたのはこれが初めてだと報告しています。合成したZIF-8は、赤外分光、X線回折、電子顕微鏡観察によって調べられました。
2つ目は、取り出した成分の量を測る「一次微分紫外可視分光法」です。物質が吸収する光の強さを波長ごとに測り、得られた吸収曲線の変化の度合い(微分)を用いて定量する方法です。
抽出の条件は、「応答曲面法」という統計的な手法で最適化されました。複数の条件を組み合わせて実験し、その結果から効率のよい条件の組み合わせを探るやり方です。
主な結果
最適な条件として、試料と溶離液のpHはともに7.0、試料の量は1.13ミリリットルとされました。成分ごとの条件も報告されています。ナリンギンの抽出が最も高くなったのは、吸着剤47.50ミリグラムと溶離液の純メタノール1.63ミリリットルを用いたときでした。ヘスペリジンでは、吸着剤82.49ミリグラムと溶離液2.68ミリリットルが必要でした。
この方法では、1ミリリットルあたり2〜50マイクログラムの濃度範囲で、濃度と測定値の間に直線的な関係が得られました。検出できる最小の濃度(検出限界)は1ミリリットルあたり約0.7マイクログラムと低く、著者らは感度に優れると報告しています。
実際の柑橘果皮の試料を使った検証も行われ、分析によって成分をどれだけ取り戻せたかを示す回収率は88.0〜94.0%でした。
研究の意味
著者らは、この方法が簡便で低コストな分析の仕組みであり、天然化合物の品質管理において、手間のかかるクロマトグラフィーに代わる選択肢になると結論づけています。柑橘果皮に含まれる2つの成分を、比較的簡単な手順でまとめて測る方法を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Akram Sadat Nabavi(Department of Analytical Chemistry Faculty of Chemistry University of Kashan Kashan I. R. Iran)、Sayed Mehdi Ghoreishi(Department of Analytical Chemistry Faculty of Chemistry University of Kashan Kashan I. R. Iran)、Fateme Tajabadi(Medicinal Plants Research Center Institute of Medicinal Plants ACECR Karaj I. R. Iran)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Akram Sadat Nabavi, Sayed Mehdi Ghoreishi, Fateme Tajabadi. ZIF‐8‐Based Solid‐Phase Extraction Coupled With Derivative UV‐Vis Spectrophotometry for Rapid Simultaneous Determination of Hesperidin and Naringin in Citrus Peels. Chemistry - Methods 2026-09-19. DOI: 10.1002/cmtd.70161. 原著ライセンス:CC BY.